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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
キングクラウン 〜戦いに恋し、姉妹を愛す〜
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第38話:売名行為

 魔術師、待機室。

 そこには魔術師予選A〜Lブロックを突破した12人の姿があった。

 それぞれが試合前の緊張を噛み締め、全身全霊を尽くそうと各自が精神統一していた。

 濡羽もまた、彼我見が日本の坐禅を元に作り上げた魔力と魔力を生み出す心臓を整える精神統一を行なっていた。


「濡羽! 私も予選突破したよ」


 しかし、それは濡羽を前から抱きしめ、その柔らかさを伝える者によって切れた。


「お前の実力なら余裕だろ。まぁ、俺には勝てないけどな」


「そうだけど……それは私を守るのは濡羽って決まっているからだよ。一生、面倒見てね」


「やだね。お前を守るのは骨が折れる、てか早く離れろ」


 俺の胸に当たる二つの柔らかい物が鬱陶しくて、精神統一出来ない。


「ルナさんの方が良かった。でも、私の方が胸は大きいのよ」


「そうなのかって、何言ってんだよ」


「だって、私がEカップでルナさんはディ……」


「ちょっと何言ってるの!」


「イタッ」


 ミアの発言を止めたのは、ルナだった。

 頭を叩かれたミアは頭を軽く抑えながら俺から離れ、ルナに抗議した。


「ちょっと、もっと馬鹿になったらどうするの!」


「マイナスはどこまで行ってもマイナスでしょ」


「違うよ。濡羽もそう思うでしょ?」


「いいえ、濡羽さんはこっち側です。そうですよね?」


 俺はその光景に見惚れた。

 ずっと、この三人仲良く歩んでいきたいな。

 そのためには強くならなくては、何者にもこの光景を汚さないために誰よりも強くならなくては……


「そうだな」


「そうだなって、どっちに言ってるのよ」


「そうですよ」


「悪い、試合だ」


 濡羽はそう言い残し、控室を後にした。

 その背中を敵意に込もった視線で追う二人の魔術師が居た。


***


 キングクラウンの試合は開催式と閉会式を行う大競技場と少し離れた場所にある二つの闘技場で三試合同時に行われる。

 そして最も人が集まる大競技場の試合会場に俺は立っていた。


「半刻前に優勝予告宣言を行った魔術師、黒曜濡羽が試合会場に立つ! この男が我々にこれから喜劇を見せるのか、それとも伝説を見せるのか! それはこの第一試合に懸かっている」


「魔術師風情が大口叩くな!」


「廃れの象徴が神聖な試合会場に立つな!」


「勝ってくれ、濡羽」


 魔法使いと魔術師の罵詈雑言が飛び交う中に、俺を応援する観客の声は少ないがあった。

 これは嬉しい誤算だった。

 魔法使いと魔術師に蔑まれる事は想定内でそれが全てだと思っていたが、居るのだ。

 この現状を憂う俺のような者が、そして俺に願っている魔術師の地位向上といがみあう両者を繋ぐ橋を。

 しかし、声援がここまで力をくれるなんて知らなかったな。

 俺は相手を見る。


「対するは、逆鱗家の龍と称される魔術師、逆鱗赫怒。その怒れる龍の爪牙は黒き太陽を切り裂き、喰らうことが出来るのか?」


 炎色の髪を怒髪天を衝くという感じの髪型にした傲慢さが滲み出る表情と体格をした男だった。


「それではキングクラウン。一回戦第一試合、黒曜濡羽 対 逆鱗赫怒の試合を始めるぜ、てめーら。それでは互いの健闘を祈って——ッッ、ファイッッ」


 俺は冷静に構え、赫怒の出方を伺う。

 逆鱗家の魔術師は感情、特に怒りの感情を用いた固有魔術を扱う。

 感情系統を含む魔術の利点はそれぞれの感情が特殊な効力を持ち、魔力をあまり消費することなく魔術を行使することが出来る。

 不利な点はと言うと——


「濡羽。テメー、本気でキングクラウンを侮辱してるだろ」


 俺は黙って聞く。


「これから大事な試合が控えているっての待機室で、女とイチャイチャしやがって神聖な試合を唾棄する行為だ。でも、お前みたいな貧乏神に群がる女のくせに良いツラと体してやがる、お前をぶちのめした後でありがたく食ってやる」


「お前も侮辱してるだろ」


「あぁ!」


「試合はもう始まっているんだ。早く掛かってこいよ、それとも遅×野郎には無理な相談か?」


「ッッ——この怒りでテメーをぶち殺す」


 赫怒はその額に怒りマークを浮かばせる。


 感情系統魔術の不利点、それはその感情を出していないと魔術を行使出来ない点だが感情系統を扱う魔術師の多くは各々が独特な方法でその感情を瞬間的に発露させる術を持ち、感情が高まるほど強くなり冷めるほど弱くなる。

 だから、今の俺のように煽るのは利敵行為なんだけど、こうした方がこいつ自身に自分がした発言を後悔させる事が出来る。


「憤怒魔術……『憤怒』!!」


 赫怒の体を赤い炎のようなオーラが覆う。

 そして、その拳にオーラが集まる。


「死にやがれ——『憤撃』!!!!」


 俺に対して拳が振るわれた瞬間、俺は叔父との会話を思い出していた。

 彼我見は俺と同じく魔法使いの在り方と権力を嫌悪しており、俺にこう命じた。

 濡羽。たた勝つだけじゃダメだ。

 この魔術師なら出来るかもしれないと思わせなくてはいけない。

 そう思わせるのには二つの方法がある。

 一つ目は魔法使い相手に勝つこと、でもキングクラウンは魔術師選手の方が多いから主に使うのは二つ目の方法だ。

 二つ目の方法は——


「黒曜秘伝——黒影(こくえい)


「ハッ?」


 赫怒は俺の残像を殴った。

 本物の俺は赫怒の背後に出現し、地面に両足を着け、溜める。

 魔力が拳に収束し、極限まで高まった黒い高密度の魔力を攻撃の瞬間に放つ。


「純黒」


 瞬間、俺の魔力が赫怒の体を貫き発散した。


「ぐふぉうぇぇ」


 二つ目の方法、それは相手を圧倒的な暴力で瞬殺すること。


「だ……第一試合……勝者、黒曜濡羽」


 実況の言葉に第一試合は幕を閉じた。

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