第37話:キングクラウン、開始
「皆さんが待ちに待った。第一大会から続く伝統的な競技の開始です」
実況の言葉が終わると、円形会場の中心に鎮座していた競技場を黒い結界が包み込む。
「伝説では、最初のキングクラウンで優秀な成績を残した6名の奇跡、母愛、異聞、造物、飛来、崩壊は始まりの魔女の高弟と至った。その始まりからか、この競技で優秀な成績を残した選手らは魔法・魔術世界を震撼させる存在となっていった」
競技場の結界が晴れる。
競技場は闘技場へと変わっており、中心には並ぶように黒い外套で顔を隠した5名の人物が居た。
「ここに学院最強を決める戦い。キングクラウンの開始を知らせます!!」
一斉に人物らは外套を空へと放り投げた。
その5人は慣例通りなら魔法使い予選A〜Dブロックの優勝者と教授が選定した強力な魔術師らで行われた予選Aブロックの優勝者だ。
ピエロが実況席でマイクを取り、柵に足を乗せながら笑い声のような高い声で始めた。
「キングクラウンの実況はこの俺、魔術師一幸せな道化、ハッピー・パラディがやってやんぞ。てめーら、存分に喜べ! そして解説は自称、最強の魔術師である黒曜彼我見だ」
一斉に観客らは実況席の方を向いた。
確かにピエロの横に黒髪の男性が座っていた。
「おいおい、黒の死神が解説って……」
「いや、マジでどうやって連れて来たんだ。面倒嫌いで有名なあの男を」
「騒ついてるとこ悪いけど、選手紹介へと移らせてもらうぜ!」
会場全体が何かしらの術によって闇夜に包まれる。
その闇夜の中を一箇所だけ照らす光とそこに立つ人物が。
「魔法使いの世に燦然と輝く、四つの称号がある!」
「人々を導きし光の伝道者、光明。人々を支えし知恵の革命者、賢者。人々を照らす星の守護者、精霊。そして人々が畏れし戦の殺戮者、魔王」
「そして今大会に歴史上最も強いとされる98代目、魔王の参戦だ!!」
「魔法使い予選Aブロック突破者、シェリー・フェメノン・ルージュ!!」
魔法使いは歓声を挙げ、魔術師は苦虫を潰したような顔になっていた。
俺はシェリーの姿を見る。
星光のような銀髪と少女らしい淡麗さから妖精のようにも思える美少女だ。
流石、美人なルナの妹だけはある。
ハッピーはいつの間にか実況席から選手の近くに移動していた。
「シェリーさん、意気込みは?」
「魔王として叩きのめすだけよ!」
「おお、これは凄い自信だ! この自信は生まれつきのものか? 魔王としての自覚から来るものか?」
シェリーを照らすライトが落ち、違う場所を照らす。
「その全ての要素で抱かれたい男性魔法使いランキング年間王者にして、七家の魔法使いにも匹敵する実力を併せ持つ男。眉目秀麗、容姿端麗、一騎当千、新進気鋭の魔法使い」
「魔法使い予選Bブロック突破者、キューピー・ラバー!!」
美しい金色の長い髪を弄るイケメンがそこに立っていた。
魔法使い、魔術師問わず女性から悲鳴が上がる。
「キャーー、こっち見てー!!」
「絶対に勝ってー!」
「キューピー、意気込みは?」
「俺が大好きな皆んな、君らに頂点の景色を見せてあげるよ」
「キャーー、見せてー!!」
「さて、悲鳴が騒がしい中、次に移りますか」
またライトが切り替わる。
「造形。それは魔法・魔術美の出発点にして終着点! 彼の家はそんな造形を極め、造形だけを行なってきた稀代の造形一族! 彼はそんな一族の中で造形にも戦闘にも天才的なセンスを見せる天才!」
「魔法使い予選Cブロック突破者、カール・クラフト!!」
水晶のような青と白の混じった色をした髪の人物がそこに立っていた。
「カール! 俺ら造形魔法使いの強さを見せつけてくれ!」
「信頼されているね、カール。意気込みをどうぞ」
「美しい景色の中で倒してやる」
「おお、勝気の込もった意識込みだ。次の選手!」
またライトが切り替わる。
「魔王の一族に生まれし、守りの魔法使い! ありとあらゆる魔法・魔術は彼女の前では存在出来ない! 朱の生み出した防御の天才、魔王の姉!」
「魔法使い予選Dブロック突破者、ルナ・フェメノン・ルージュ!!」
俺はルナを見る。
やっぱり、妹より姉の方が美人だな。
「意気込みを」
「聞いてる、シェリー! 貴方は確かに魔王になった。でも姉である私に勝てるとは思わないことね」
「おっと、ここで妹のシェリーに宣戦布告だ!! 会場も朱の魔法使い同士の戦いを想像し興奮が収まりませんが、最後の選手紹介に移らせてもらいます」
スポットライトが当たる。
「光を闇で落とすと始祖に誓いし、黒き太陽。太陽は遂に生み出した、光を闇で染める黒を!」
「魔術師予選Aブロック突破者、黒曜濡羽!!」
先ほどを超えるざわめきが生まれる。
「黒曜濡羽だと! 彼は確か、廃れの象徴である禁忌を犯した魔術師では?」
「そうだ、それなのに魔術師予選Aブロックを突破しただと」
「あの彼我見なら甥のために仕込みやら不正を行うのでは?」
「いや、それは無い。だって彼は正道の強者、努力と才能だけを練り上げた者だ。そんな彼が甥を正道から外すだろうか?」
「確かに……」
俺は注目の的ながらも冷静に、意気込みを考えていた。
どうしよう、意気込みなんて、無いぞ。
「それでは黒曜濡羽選手、意気込みを」
「実況さん、今までのキングクラウンで魔術師は優勝したことがありませんよね?」
「いや、無いっすね」
「じゃ、俺が初めて魔術師で優勝して見せますよ」
「おっと、濡羽選手。優勝の予告宣言だ!!」
ここにキングクラウンが始まった。




