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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
キングクラウン 〜戦いに恋し、姉妹を愛す〜
33/65

第32話:破った罰

忘れてました。すいません。

 そこは薄暗い部屋で俺たちは大きな円卓の上に倒れていた。


「いたた、ここに教授ら……が」


 周りを見渡して気付く。

 ルナもミアも起き上がり気付いた。

 俺たちが居る円卓の席に教授らは座っていた。


「えっーと、すいません」


 俺は雰囲気から謝り、俺たちは円卓から降りた。

 教授である九人の魔女は始まりの魔女の高弟が一人、『造物の魔女』の弟子で、総称して九人の魔女、エニアドと呼ぶ。


「学生がこの場に何の用だ」


「魔法陣を使ったのか」


 ルナが前に出る。

 その瞳に挑戦の光が宿る。


「ルージュの者か……でも、貴様は混じり物だろう。そんな穢れた髪をよくも……」


 ルナの瞳が鋭くなり、魔力が発露する。


「言葉を慎め。ここで戦う気か」


 低い声で全てを制す。


「ああ……また血の話。永遠に終わらない輪だわね」


 小言で一人の魔女が笑う。


「やめなさい。ここは戦場ではありません」


 穏やかでありながら絶対的に黒髪の女性が制す。


「——理由を聞かせて。濡羽、ルナ、ミア……何故、円卓へ来たのですか」


 俺は一歩、前に出る。


「……勅令の報酬の件と遺産使用についてです。俺は生徒行方不明事件の真相を解き明かし、犯人が行おうとしていたテロを止め、首謀者を殺しました。それで報酬の単位が無いなんておかしいじゃないですか」


 円卓の空気が再び揺らぐ。


「……言葉にできる勇気はあるらしいな」


「貴様、教授らの決定を覆そうとでも——」


「静かに」


 殺気の込もった怒声を黒髪の女性が手を挙げ諭す。


「濡羽。貴方の行動は確かに“達成”だった。だが同時に、学院街を半壊させ、学院に深い傷を残した。その結果、報酬——単位の授与は見遅れたのです」


 魔女らは一瞬、口を閉ざすが黒髪の美女が次の瞬間には喋り出した。


「それでは、時間の対価として貴方に何かしら請求しますね」


 うん? 対価として請求?


「何のことです?」


「時は金なりと言うでしょう。我々は“魔女”ですよ、時間は有限でありその一分一秒に価値がありそれをどのように使うかは私たちが決めること。しかし、今は貴方に説明するという私の意思に反して時間が消費されている。

 この説明を含めて私が、いや私たちが消費した時間は3分34秒掛ける9なので1926秒、一秒が一万円とすると、1926万円払って貰います」


「払えるか!」


「+13万」


「あ、ヤバいな。ミア、金持っているか?」


「持っている訳ないでしょ」


「ルナは?」


「持っていますが1000万を超える金額となると……」


 詰んでない?

 魔女らの事だ、ここで払えないとなると何をされるか分からない。


「払えないようでしたら、別の請求手段にしましょうか」


 黒髪の美女が指を鳴らすと、光の当たらない闇からその人物が姿を現した。

 それは見覚えのある知人だった。


「何故、アイシス先生がここに?」


「彼女が別の請求手段を提供するそうなので」


「え?」


「濡羽君、あの時の約束を果たす時よ」


 え、最初に原因を解明したんじゃ。


「おかしくないですか? 確かに俺が最初に原因を突き止めましたよ」


「確かにそうだけど、真実では無かったのよ。真実は魔件局がその後、突き止めたから貴方は約束を破ったのよ」


 真実ってあの事件はエング主導……いや、エングには明らかに協力者または背後の人間が居た。

 そいつらの情報含めて真実か。

 黒髪の美女が告げる。


「黒曜濡羽、貴方に命じます。魔女(ウィッチ)()競技会(グレートフェス)の高等競技『キングクラウン』に出場しなさい」


「は?」


 魔女の競技会、それは始まりの魔女が己が弟子を決めるために開いた競技会で、この学院ではそれを伝統として受け継ぎ二年周期で、学生の技術向上と披露を兼ねた学院の祭典として開催している。

 様々な競技が行われると同時に、始まりの魔女が開いた最初の競技会のように有数の魔術師、魔法使いや組織が弟子や構成員のスカウト目的でやって来たり、将来有望な魔術師、魔法使いの活躍を見ようと世界中から多くの観客が訪れる。


「魔女の競技会に出ろという命令なら良いが、何でキングクラウンなんだ?」


 魔女の競技会で生まれる利益は学院引いては、九人の魔女に入る。

 そして俺は、良い意味と悪い意味で名前が有名なので魔女の競技会に出ればある程度の集客効果は見込め、先ほどの金額程度以上の利益があるだろう。

 だから、魔女の競技会に出ろなら分かるが特定の競技に指定される理由は分からない。


「そうよ、濡羽は液体がないと魔術が使えないのよ」


「そうです。濡羽には無理です」


「この通り、無理です」


「黒曜濡羽君。その行為は貴方の生家である黒曜家の誓約を貶しめていると分かって言っているんですか?」


 確かに、そう言われては何も言えない。

 魔術にて魔法を打ち倒すという誓約に則るならキングクラウンは最適な競技と言えるし、俺にとっても最適だ。

 キングクラウンは、簡単に言えば学院最強を決める競技だ。

 高学年の学院生徒全員から複数の魔術師ブロックと魔法使いブロックに分けた予選を突破した16名が本戦であるトーナメント戦で命を賭けた戦いをし、見事優勝した者には王冠と共に学院最強を名実と共に名乗ることを許されるし、単位も貰える。

 キングクラウンの試合は武器を含め、あらゆる物の持ち込みが厳禁でそのルールは始まりの魔女が開いた魔女の競技会から変わっていない。

 それは、戦いに必要なのは高めてきた魔法、魔術のみという信念ゆえだ。

 その信念とルールだから、俺は液体を持ち込めず戦うことは不可能だ。


「分かっています。なので、貴方に一つだけハンデというか権利を与えましょう」


「試合中、15分間だけ無限インクの使用を許可します」


「え?」


 あの学院が、あの教授らが俺に特別待遇。

 少しだけ嬉しかった。


「我々は貴方の力は、アレを用いてこそと先の事件から判断しました」


「ありがとうございます、それなら戦えます」


「一つ勘違いをしているようですね?」


 勘違い? 何を。


「貴方は戦うのではなく勝つんですよ。権利には義務が付き物で、今回の権利において発生する貴方の義務はキングクラウンで優勝することです」


「はぁ!」


「勿論、義務なので今より、貴方の前提は戦うことではなく勝つことになりました」


 これは図られたな。

 黒曜の無能と言われている俺がキングクラウンで優勝すれば、莫大な利益が生まれそれを得ると同時に彼らは目撃することが出来る黒曜がその誓約に従い、魔法を、魔法使いを打ち倒す瞬間とキングクラウンで史上初めて優勝する魔術師の姿を。


「それでは、お帰りください。強くなって下さいね」


 有無を言わさず、俺らは元の場所にアイシスと共に戻された。

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