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黒泥の魔術師  作者: 11時11分
生徒行方不明事件 〜魔法に恋し、親友を愛す〜
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第2話:有力の無能術師

「テメェが、黒曜濡羽だな?」


 俺は大柄の男子生徒から顔を背けず肯定する。


「ああ、そうだけど何のようだ」


「前々から気に入らなかったんだよ。有力の無能術師(アビリウス)の分際で準七家の人間と関わり、それと……」


 大柄の男性はミアに下卑た視線を向ける。

 俺はその言動と視線で気付く。

 当てつけだな。

 こいつはミアを汚し穢したいと思っているクズの一人だろうな。

 で、色んな理由をつけているがミアの近くに居る俺に逆恨みしているのだろ。


「良い蔑称だよな。有力の無能術師、固有魔術を持っているが真面に扱えないテメェにぴったりな名だ」


「やめなさい。濡羽を馬鹿にするなら先に私が相手になるわ」


 ミアは杖を抜き、構える。


「おやおや、ミアはこいつを庇うのか?」


 ミアも気付いているな。

 こいつの下卑た視線には、ミアの一族への蔑みと願いがある。


「ミア、俺の物になれ。君も卒業出来ずに悩んでいるんだろ、俺の父は魔術教育会に顔が聞いてね。俺の物になるなら便宜をはかってあげても良いよ」


 クソ野郎だな。

 いつもの俺なら面倒事を嫌って無視していたが、こいつはミアを馬鹿にするという俺の逆鱗に触れた。

 俺は懐から手袋を取り出し、投げつける。


「決闘だ」


 決闘、古くから存在する文化で魔法使い、魔術師たちが名誉の獲得・回復、紛争の解決、恨みを晴らすためなどの理由で当事者が双方同意の上で行われる。

 学院ではこの決闘が権利として認められており、同意の判断は投げらた側が手袋を拾うことだ。

 大柄の生徒は躊躇なく手袋を拾った。

 俺と大柄の生徒は決闘のために用意された広場に移動し、互いに距離を取る。


「舐めるなよ、有力の無能術師。俺が勝ったら、ミアを貰う」


 ミアは誰のものではないが、負ける気はしないので応じる。


「お前こそ、黒曜の名を知らないとは言わせない。俺が勝ったら、ミアに対する発言を取り消し、俺の視界に入るな」


 決闘立会人を務めることになった織可が間に立つ。


「双方、始祖の名に恥じぬ戦いをお見せしたまえ……開始!」


 立会人が去ると同時に大柄の生徒は杖を構え、俺は拳を構える。

 俺が拳を構えるのを確認すると大柄の生徒はほくそ笑んだ。


「ハハ、俺の勝ちは確定みたいだな」


 魔術も魔法も魔術と魔法以外で防ぐ手段はない。

 そして魔術師が杖を構えないという事は、勝負を捨てたようなものだ。


「『猛りよ、顕現し。我が敵を撃て! 火球』」


 一般的な四属性魔術の火球が詠唱の終わりと同時に無数に展開された魔術陣から顕現し、俺に向かって飛ぶ。

 魔術を避ける事は可能だが、放出された魔術のスピードは最低でも風並みの速さには到達する。

 一般的な魔術師ならまず、躱すことは不可能だ。


「だが、俺は黒曜。そこらの貧弱な魔術師と一緒にするな」


 全身に魔力を流し強化された動体視力で火球を見、同じく強化された身体能力で回避する。

 そのまま腰を屈め地面を蹴り、一気に距離を詰める。

 拳の射程内に大柄の生徒を捉えると同時に、彼の腹に向かって拳を打つ。


「か、はぁあ!」


 濡羽の生家、黒曜家。

 魔法・魔術界でも特異な一族で魔術で魔法を下すことを使命とし、そのために魔力を活用した戦闘技術を磨く戦闘狂いの一族。


「どうした、一撃でダウンか?」


 男子生徒は泡を吹いて気絶しており、これは勝負がついたと言えるだろう。


「俺の勝ちだ。ミアに対する発言を撤回して貰おうか?」


「「す、すみませんでした」」


 大柄の男子生徒の取り巻き二人が彼を肩に担ぎ、その場を足早に去った。


「この戦いが入学初期だったら。単位奪えていたのに」


 学院内での決闘では勝利で得られる権利以外に敗者から単位100を奪えるというルールがあったが、単位の足りない俺とミアが決闘を吹っかけまくて単位を奪いまくったため廃止された。

 俺は時間を確認する。


「もう少しで講義が始まる。ミア、織可行くぞ」


 何か、忘れているような気がするがそのうち思い出すだろう。


「本当に容赦ないわね。アンタの本気パンチを食らったら、ああなるわよ」


「そうだ。怒ったからってあれはやりすぎだ」


 ミアと織可が窘める。


「友人を馬鹿にされたんだ。本当は半殺しにしてやりたかったよ」


「本気?」


「冗談だよ。やる訳ないだろ」


「いや、去年の学園祭で密かにミアの同人誌が売られているって知って販売元のクラスを壊滅させたのは誰だ?」


 そんな事もあったな。

 でも、アレは同人誌の内容が青年誌過ぎたから怒って良いだろう。


「あれは、ミアも一緒にやったしノーカンだろ」


「そうよ。あれは流石にいけなかったわ」


「はは、僕の友達は暴力以外に解決手段を知らないのかな?」


 織可は難儀そうな顔をする。


「いや、知ってる」


「知ってるわよ」


「知ってる人間のする事じゃないんだよ」


 俺たちは談笑しながら講義棟に向かった。

四属性魔術:魔術師なら誰でも扱える魔力操作と変換の応用術。魔力を放出し火、水、風、土に変換し、操作するだけで固有魔術を会得していない魔術師の基本技。

杖:魔術師、魔法使い共通する補助道具。熟練の使い手でも扱うものは居るが近接戦闘を行う者はほとんと扱わない。昔は、杖剣と呼ばれる杖としたの役割を持ったエストックがあったが普段使いが出来ないことから今では扱う者は少ない。

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