第14話:混乱の教会
教会内部に四つの勢力が生まれた。
勅令のために潜入中の俺たち、シュッツとクリス、魔女への鉄槌加盟者、魔女への鉄槌の異端審問官ら。
シュッツら捜査官とニコラウら異端審問官らがぶつかるのは必然だが、圧倒的な数を誇る魔女への鉄槌加盟者たち彼らがどう動くかで彼らの中に潜入中の俺たちの動きも変わる。
「そんな物騒な事、ここで言わないで下さいよ」
ニコラウは飄々とした感じでシュッツらに接する。
「お前らがしていた事ははっきり見させて貰ったし、録画もしている。逮捕されるの今か、後かどっちが良い」
「いえいえ、我々が捕まることなんてあり得ませんよ。私たちはあなた方、魔件局に裁けない犯罪者たちを裁いている神のお使いなのですよ」
「そうかい、なら神の許しがあれば人を一方的に痛ぶっても良いと?」
「良いでしょう? 彼らは凶悪な犯罪者で罪を犯している、それに魔法使いだ」
その言葉に魔法使いなら無実であっても殺して良いという気迫を感じた。
「考えは合わなそうだな」
シュッツらが前に出る。
「そうですね」
異端審問官らも前に出る。
「観客の皆様、今日の異端裁判はここでお開きです。どうぞ、無事にお帰りください」
観衆らの中からシュッツの前に異端審問官らが姿を現す。
やっぱり、観衆たちの中にも居たか。
あまり目立つ行為をしてなくて良かった。
「クリス、その物陰に隠れてろ。オジサン一人というか戦えないお前は邪魔だ」
シュッツが更に前に出る。
「はいはい、後は任せたわw相棒」
クリスが躊躇することなく隅の物陰に隠れる。
「ベルナール、コンラート。お願いします」
ニコラウは側に立つ二人の異端審問官が武装し、前に出る。
ベルナールはアーミングソードを、コンラートはモーニングスターをそれぞれ構えた。
構えから相当な練度を感じるので近接も活ける魔術師と見て間違いないだろう。
「オジサン相手に二人、些か過剰じゃないか?」
「あなたの事は知っていますよ。山羊の魔術師」
「おや、その異名を知ってるのか」
異名持ち!
シュッツ捜査官は一級魔術師なのか。
異名とは境会が一級魔術師に与える証である。
「会話もこの辺りにして、やろうか」
シュッツの言葉に反応して先に動いたのはベルナールだった。
片手で握ったそれをシュッツの首目掛けて振るった。
「『伏線回収』」
しかし、振るう直前に転がっていたビンで足を挫き、ベルナールは倒れた。
その際に手放した剣が床で跳ね、ベルナールの手首を切り裂いた。
「っ——!」
隙だらけのベルナールをシュッツは無言で殴り飛ばす。
ベルナールは地面に大の字に倒れ、気絶する。
観衆たちはその一瞬の出来事に口を開ける。
「ニコラウと言ったか、お前も動かないと全員俺が倒すぞ」
シュッツは自信満々にそう言い放つ。
観衆らは巻き込まれたくないと一斉に教会から逃げ出す。
俺たちは観衆に巻き込まれる形で教会の外に流されていくが、俺はシメたと観衆たちの波に逆らうように奥の部屋に向かう。
観衆たちに紛れ込んでいた異端審問官はもう居ないし、ここから行けば観衆が壁になって見えない。
仲間に何も言わず行ったため、一人だと思っていたが俺の服の裾を掴んでいたミアが付いて来ていた。
ここで後戻りも出来ず、俺とミアは奥の部屋に入った。
「何でついて来た」
「アンタが、さっき言った事守らずに一人で危険な所に行こうとしてたから」
ミアの言葉に俺は何も反論出来なかった。
「すまない」
「良いのよ、染みついた習慣はそう治らないわ。ここ、何の部屋なのかしら。後、なんか臭い」
確かに何とも言えない匂いがした。
肉の焼ける匂いと鉄の匂いが混じったような匂い。
奥に行くほど、その匂いは強まっていき俺はその匂いの正体に気付いた。
これは血と人体の焼ける匂いだ。
目の前を見ると、そこにはまだ使ったばかりなのか血だらけの拷問器具が無数に置かれていた。
俺とミアはルキウスや今までの被告人が何をされていたのかを想像し、絶句する。
被告人は異端審問官に捕えられた時から裁判が始まるまで拷問されているのだろう。
ルキウスに拷問の傷が見当たらないのは異端審問官の中に回復系統の魔術師が居て拷問の度に回復しているからだろう。
酷い事だが、大戦時は普通に行われていた所業だと経験者である叔父さんが言っていたな。
拷問器具の中に机が一つあった。
俺は引き出しを開けると中には一冊の報告書が入っていた。
「何かあった?」
俺は報告書を開き、ミアに見せる。
所々、血が固まって見えない箇所がある。
・〜〜〜〜作戦計画書
〜〜〜〜〜〜を学院を含めた学院街に描き、誘拐した学院生徒から奪った〜〜を持って〜〜〜の遡流術式を発動し過去の大戦で使われた〜〜〜の威力を再現する。
・手順
五十人分の〜〜を集める。
〜〜の起点を下記の場所に置く。
文章の下には、学院を含めた学院街の地図に無数の点が書かれていた。
何をしようとしてるかは分からないが遡流術式は過去を現在に再現する大規模儀式魔術の一つだ。
そんな物を発動して起こすことなど災害に匹敵する事だろう。
報告書を懐にしまおうとした瞬間、背後から肩に手を置かれる。
「ここで何をしているのかな?」
俺とミアの背後に立つその男は狂気的な笑みを浮かべながらそう囁いた。
大規模儀式魔術…儀式魔術とは儀式を手順通りに行わなければ発動できない魔術の事で、大規模儀式魔術は魔法の領域に片足突っ込んだ儀式魔術の総称で、総じて手間が掛かる。




