第11話:魔術師は合理的
七家と呼ばれる家系がある。
始まりの魔女=始祖の直系であり始祖がご存命の頃から名を馳せる一族。
魔法使い4家、魔術師3家で構成され、一家を除き一族の特徴を色で表現される。
黒曜家は黒、障害全てを飲み込む底無しの貪欲。
フェメノン・ルージュ家は赤、全ての頂点にして最強の王。
そして黄を表すフェメノン・ジョーヌ家は……
「ここは?」
俺の問いに、ルナは大きく威圧するように答える。
「貴方に発言権はない。私が質問したことだけ答えろ!」
「へいへい」
周りを見ながら適当に答える。
「まず貴方は何故、風紀委員に抵抗した?」
「卒業が懸かっているんだ。何でもするさ」
今はいつだ。
気絶してまだ相当な時間は経っていないと見ていいだろう。
「そう、次の質問よ。貴方はまだ出されていない勅令の内容を何故知っていた?」
「それはミア……君らに捕まった女子生徒が生徒会役員を誘惑して聞き出した」
「そうか、その誘惑されて情報漏洩した生徒会役員は誰か分かるか?」
やばい。
絶対に怒っている。
「知りません。ミアなら知っていると思います」
「分かった。その件はこっちの問題ですね」
あー、絶対に漏らした役員、粛清されるな。
「最後の質問です。貴方が生徒行方不明事件の犯人ですか?」
「いいえ、俺はやっていません」
「そうか、分かりました。貴方を解放しましょう」
随分、簡単に引くな。
「良いんですか?」
「ああ、貴方に容疑が掛かっているって言ったのはこの逮捕に正当性があると生徒たちに示すためだけですから、それに君ももう分かっていると思いますが、この逮捕は魔件局の捜査官からの要請です。向こうのマジックミラー越しに貴方の事を見ていますよ」
やっぱり、捜査官の仕業か。
でも、何でここに居る? 俺たちを逮捕したのは先に教会に行くためだと思ったんだが、まだあの情報は捜査官たちに降りてない。
「そうですか。一つ、質問良いですか?」
「良いけど、何ですか?」
「何故、魔法が好き? なんて聞いてきたんですか?」
「少し君の髪色を見て過去を思い出したんです。ただ、それだけですので」
その時、何故かルナの一房だけ赤い髪が昔の少女に似ていると感じた。
「そうですか」
俺はその後、言葉通り解放された。
講義棟内の生徒会室前廊下で他の者の解放を10分ほど待っているとミア、織可、タクオも解放された。
「大丈夫だったか?」
「ええ、大丈夫よ」
「質問も少なかったしね」
「拙者も同じく」
「いや〜〜、君ら優秀だからこうでもしないと足を止めてくれないだろう」
尋問室の隣の部屋から記者に扮していた男性と女性が出てくる。
「初めまして、オジサンはシュッツ・ラウル・ディネだ」
「ワイはクリス・カルチャス……で、そこのタクオの姉やぞ。タクオ、また太ったんか? 草生えるんだけどw」
「姉上も変わらずのまな板で拙者、安心したでござる」
「あぁ!」
「落ち着けって、クリス。捜査官の職務倫理を思い出せ」
「はぁ、落ち着け」
探るか、俺たちを逮捕するように指示した理由を。
「流石、魔件局だ。無実の人間を逮捕するように指示するとは」
「濡羽くん、オジサンもこんな手段を取りたく無かったんだけど、君らはオジサンたちが思っていたよりも優秀でガキだったからね」
ガキだと……
「危険な事をするのはオジサン、賛成だ。人ってのは危険から学び生きる生き物だからね。でも、この事件は大人の領分、ガキが手出しする事じゃねぇって言ってんだよ」
そう、シュッツはクリスを連れ俺たちの横を通って廊下の奥に向かった。
「彼、ひねくれてるだろ。危険な目に遭って欲しくないって真っ直ぐ言えば良いのにな」
生徒会室から出てきた生徒会長がそう加えた。
「知らない人は居ないと思うが生徒会長のライター・フェメノン・ジョーヌだ。よろしく」
魔王と並ぶ、貴公の魔法使いの称号である『光明』を受け継ぐ事を約束された黄色の魔法使い、七家の一つ、フェメノン・ジョーヌの新星。全てを治める天の統治者。
「さて、突然だが黒曜濡羽。生徒会に入らないか?」
急な勧誘に当人以外が驚く中、俺はすぐに口を開く。
「嫌だね」
「何故だい? 生徒会に入れば、追加の単位だって貰えるから君にとっては良い話じゃないか」
「そこにミアは入っているか?」
ライターは答えなかった。
入れない、それは分かりきった答えだった。
ミアの家系、ファタール家の印象は穢れ醜い娼婦の家系。
生徒からの印象を第一にする生徒会という組織上、俺のように噂だけの印象と違い、生まれながらに教えられる常識になるほどファタールは嫌われ蔑まれている。
「生徒会は学院生徒の代表で、学院側に唯一意見を言える立場だ。そこにファタールの人間が入ればどうなるか目に見えている」
俺にとってミアはミアだが、世間にとってミアはファタールの人間なのだ。
「確かに彼女が入る事は今は無理だろう。でも、君が入ってくれれば変わる」
「どういう意味だ?」
「生徒会は生徒の代表だが、生徒会長である僕の力もいや、今の生徒会に代表と言えるほどの力はない。始まりの魔女が生きていた時代と違い今は、魔法使いは血統主義、魔術師は実力主義という二つの獣が張遼跋扈している。だから、この事件の早急な解決と休校を訴えたが、勅令と魔件局による秘密裏の解決となってしまった」
ライターは黄金色の髪を掻きながら続ける。
「君も分かっているだろう、この学院は生徒の安全より元老院と境会の顔を見て、教育や修行の方が大事なんだ。だから僕はこの学院の在り方をリセットしたいと思っているんだ。一度リセットし生徒の意見を聞き、主義に左右されることのない安全に通える学院を作りたい。
その野望の実演には、黒曜家の力いや黒曜濡羽。君の力が必要だ。僕と共に革命を成し遂げるか? 僕の革命を邪魔するか? 今一度、君の考えを教えてくれ」
「あなたが学院嫌いの生徒会長と呼ばれる意味がやっと分かったよ。あなたの考えと行動には賛同し応援しますが、当事者にはなりたくない。革命は確かに良いものだが、絶対に血が流れしまい、その対象が俺の身近な人になるなら俺はあなたの革命を止める」
俺は覚悟を持ってそう宣言する。
ライターは次期光明だ。
元老院にも境会にも様々な人物にコネクションを持っているからこの発言が原因で不幸な目に遭うかもしれないがその時はその時でライターを殴れば良い。
「ハハハ、やっぱり君は面白いね」
ライターは突然、顔を近づける。
「朱に喧嘩を売り、黄を敵に回すような発言をするのに、魔法が好きなんてつくづく君は魔術師に向かない」
魔術師とは常に合理的でなければならない。
これは一人の有名な魔術師の残した言葉で、俺のように傲慢に振る舞うのは魔法使いのすることだ。
「ああ、俺は魔術が嫌いなんでね」
「そうか。少し君のことが分かったような気がするよ」
「その程度で理解できるほど俺は単純じゃねぇよ」
俺はそうライターに別れを告げ、俺たちは講義棟を出る。




