15-2・異世界あるある(ハーレム)
「アンさんは、何故こんな所に?」
「ピクニックの途中でモンスターに襲われたんです」
「・・・ピクニック?」
宿場町は、セイの町やペイイスの村と比べると狭い。だから、町の外に行かなきゃ遊べないってこと?
「ねぇねぇ、尊人くん。なんか変な“あるある”発生してない?」
真田さんが不満そうな表情のまま話しかけてきた。
「・・・あるある?」
「うん。異世界あるある」
異世界あるある①
唐突に、モンスターに襲われる女の子に遭遇して、助けた途端に好かれる。高貴な女の子のパターンが多い。
出会うのが前提のシーンなので、「何故、高貴な女の子が危険な場所に無防備で彷徨いているのか?」と「何故、一目惚れをされるのか?」の説明は雑。
「尊人くんの性格を知りもしないうちに信頼して擦り寄ってくるなんて、
アンさんって、どんだけ頭とお尻が軽い女なんだろ」
「それ・・・僕がバカにされてる?アンさんがバカにされてる?」
「しらな~い」
真田さん、機嫌悪い。これは、さっさとアンさんを宿場町に送り届けて、帝都に進路を戻すべきだ。
「きゃぁぁっっ!誰か助けてっ!!」
背後から悲鳴が聞こえて、帝都方面から青いドレスの女の子が逃げてきた。ゴブリンに追いかけられている。
「げっ!」
「また!?」
先生の剣と革の盾を装備して突進!女の子とゴブリンの間に割って入って、シールドアタックでゴブリンを弾き飛ばしてからトドメを刺した!
「助けていただき、ありがとうございます」
助けた女の子が小走りで寄ってきた。僕と同じくらいの歳かな?
「私の名は、この先の宿場町に住むドゥエ・イタリと申します。
1人では不安なので、町まで付き添ってください」
「まぁ・・・どのみち行く予定なので・・・」
「ありがとうございます。お礼に、晩餐に招待させてください」
「・・・・・・・・・・・・・・」
困惑して真田さんの方を見たら、ムスッとしている。立て続けに女の子に出会うのも「あるある」なんだろうか?真田さんに聞きたいけど、怖くて聞けない。
異世界あるある②
まだ大した偉業も成し遂げていないのに、複数の可愛い女の子が寄ってきてハーレム化をする。純粋なる男の欲望(?)が目的なので、何故、そんなにモテるのかは不明・・・というか、その世界にはロクな男がいない、もしくは女の子達が物好きとしか解釈のしようがない。
「きゃぁぁっっ!」 「誰か助けてっ!!」
「え゛っ!」×2
帝都方面から黄色いドレスの女の子とピンク色のドレスの女の子が逃げてきた。ゴブリン2人に追いかけられている。アンさんとドゥエさんを助けたのに、他の女の子を無視するってわけにはいかない。ちょっと苦戦したけど、ゴブリンを倒して2人を救う。
「私の名は、この先の宿場町に住むサラサ・ラビアと申します」
「私の名は、この先の宿場町に住むフィーア・ドーツと申します」
「ああ・・・どうも」
さっきまではムスッとしていた真田さんが、呆れ顔になって寄ってきた。
「なんかバクってね?」
「バグる?」
異世界あるある③
主人公のスペックがバグっている。
「・・・その『バグる』とは違う気がする」
・
・
・
・・・で、
「きゃぁぁっっ!」 「誰かっ!」 「助けてっ!!」
「・・・・・・・・・・・」×2
その後、緑のドレスの女の子と黒いドレスの女の子と白いドレスの女の子がゴブリンに追われていたので、何かもう無視したい気分なんだけど助ける。
「私の名は、クィン・ラーテンと申します」
「この先の宿場町に住むユーク・コリカンです」
「助けてもらってありがとうございました。セッチ・ポルガルです」
最初に助けた赤い服の人が「アンさん」って名前なのは覚えているけど、唐突に増えすぎて全員の名前は覚えられそうにない。
「ああ・・・そうですか。
とりあえず、町まで送ります」
宿場町に引き返す道中、7人の令嬢全員が僕を囲んでおり、真田さんは完全に無視されている。
「シッカリしてよね、尊人くんっ!
サッサと帝都に行かなきゃなんだよっ!
なんで、突然、7人も頭の悪そうなお嬢様が湧いて出るのっ!?」
「・・・ぼ、僕に言われても困る」
真田さん、メッチャ怒っているんだけど、今の状況を「僕の所為」にされても困ってしまう。令嬢達は、隙あらば僕の腕にしがみついて胸を押し当ててくる。
「尊人くんっ!ベタベタしてると歩くのが遅くなるから離れてっ!!」
「・・・はいっ!」
令嬢達がアプローチをしてくる度に、真田さんが僕を注意をして睨み付ける。胸の接触は嬉しいんだけど、真田さんが怖いので、僕は令嬢達に「離れて下さい」と言って遠ざけた。
「あらあら、モテない殿方の僻みかしら?」
「ミコト様の従者如きが何をほざいているの?」
「悔しかったら、ミコト様のように優しくなされては?」
「あ・・・あの・・・真田さんは・・・」
異世界あるある④
ハーレム中の女の子達は、主人公以外の男を冷遇する。作者の「たくさんの可愛い女子にモテたい」という願望が表現されているシーンなので、主人公以外の男が雑に扱われる理由は「作者の都合」としか説明できない。
「その『あるある』はあてはまらないってっ!
真田さんは女子だってばっ!」
ちゃんと歩けば10分程度で宿場町に戻れただろうけど、ずっと令嬢達にベタベタされ続けたので、30分もかかってしまう。ちなみに、真田さんは、最初の3分くらいは一緒に歩いてくれたけど、途中(男扱いされたくらい)からは露骨に早足になって、僕達を置いて先に行ってしまった。
・
・
・




