謎のダンジョン②
藤原くんは「下らねー」、近藤くんは「面倒クセー」って理由で不参加。
僕は革の鎧と先生の剣と鉄の盾を、吉見くん&鷲尾くんは革の胸当てと各自の武器を装備して、帝都の東の端にある謎のダンジョンに訪れて・・・到着直後に後悔をした。
「・・・うわぁ~」
洞窟に入口が3個有り、人が立ち入れないように手前で区画されている。それだけなら「危険だから人が入らないようにしているんだな」で済むんだけど、区画の中央が開いて、人が立っており、「入場ゲート」と表示された看板がある。
「これ・・・謎のダンジョンと言う名のテーマパーク?」
「えっ?尊人くん、他に何だと思ってたの?」
「・・・正真正銘のダンジョン」
僕は「ダンジョン攻略なんてメンドイ」と考えていたので「拍子抜けをした」程度で済んだけど、吉見くんと鷲尾くんは露骨にガッカリしている。
「モンスターを倒しながら最深部まで行って、何らかの恩恵を受けたり・・・」
「そうそう!ダンジョンに眠る宝箱を開けて凄いアイテムを獲得したり・・・」
「えっ?まるっきりゲーム感覚?」
吉見くんと鷲尾くん、ガチでダンジョン攻略を期待してたっぽい。2人の様子を見た土方さんが、呆れた表情をして大きなため息をついた。
「あのさぁ・・・
突然、未開の洞窟が出現するなんて、どうやればそんな発想になるの?」
「ゲームとかアニメであるじゃん」
「現実世界で謎のダンジョンが出現したら無理があるけど、
ここは異世界だから、あっても不思議じゃないと思って・・・」
「異世界でもありえないでしょ。
仮に、モンスターの巣窟みたいな危険な場所が町中にあれば、
民間人が近付けるわけないよね」
「まぁ・・・そうだけど」
「宝箱が準備されているってことは、あきらかに人の手が加えられてるでしょ?
既に『未開』じゃないじゃん」
「・・・う、うん」
「『最深部まで行って恩恵』に関しては意味不明すぎる。
そんな曖昧で凄いものを誰が用意したの?神様?
私達は神様の手の平で転がされてるってこと?
神様が、ダンジョンを出現させて、皆に挑ませるためにご褒美を用意して、
それを見て楽しんでるってこと?」
「・・・そうなっちゃうね」
「ダンジョンに挑む人達は、努力じゃなくて神様依存で力を得たいってこと?」
「危険な洞窟に挑むんだから努力してるよ」
「『危険な洞窟に挑む』為の戦闘能力だって、日常的に鍛えた力じゃなくて、
『急に非日常的な力に覚醒した』的な都合の良い力でしょ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「そもそもさ、生活圏にいきなりダンジョンが出現するってのは、
自分は一切何も変化させる意志が無いまま、
環境だけが都合良く変わるってことでしょ?
なんか、その考え、キモくね?」
「『神様の手違いで死んで異世界に行く』みたく現実逃避よりはマシでしょ」
「だよな。死因すら他人の所為にして現実逃避をするなんてセコすぎるもんな」
「大して変わんないよ。
わけのわからないダンジョンで日常が変化してる時点で現実逃避でしょ。
源くんや鷲尾くんならともかく、吉見くんもそ~ゆ~セコい考えだったんだ?」
鷲尾くんだけでなく、頭脳明晰な吉見くんまで、土方さんに論破されまくってぐうの音も出ない。・・・てかちょっと待って欲しい。「ダンジョン攻略なんてメンドイ」と思っている僕をその路線に入れないでほしい。
「なんで武器や防具をフル装備してんのかと思ったけどさ、
・・・ガチのダンジョンだと思ってたんだ?」
そこは僕も反論できない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
道理で女子達は軽装備(無装備)なわけだ。お屋敷を出る前に言ってほしかった。
「ひとみん、それくらいにしときな。男子、泣きそうだよ」
「男の子は子供心を忘れられないんだよ」
見かねた真田さんと沼田さんが制してくれる。結果、このイベントに参加をしなかった藤原くんと近藤くんが正解だったらしい。
「・・・で、どうする?」
「せっかくここまで来たんだから行ってみようよ」
「まぁ・・・そうだね」
土方さんに心をヘシ折られた吉見くんと鷲尾くんはもの凄くテンションが低いんだけど、みんなで「謎のダンジョン」って名称のテーマパークで遊ぶことにした。もちろん、洞窟内で間違ってダンジョン内の係員さんを殺害しちゃうと拙いので、入口の係員さんに武器を預けてからね。
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3つある各ダンジョンは、2人以下の入場制限があり、且つ、1組目が入場してから次の組が入場するまでは、数分程度の待ち時間が発生する。そんなわけで、僕と真田さん、吉見くんと沼田さん、土方さんと鷲尾くんのペアになって、3つのダンジョンを同時に攻略する。
内部は薄暗くて、洞窟っぽい模様の薄い板で仕切られていて、布で作ったモンスターがぶら下がっていたり、明るいところで見たら絶対にクオリティーが低いモンスターの首が転がったりしている。これはアレだ。「異世界版オバケ屋敷」だ。
「がおぉぉぉぉっっっ!!」
モンスターの着ぐるみを着た人が物陰から飛び出して吼える。
「わっ!」 「きゃっ!」
ちょっとビックリした。基本的に、コレ系は苦手。だけど、本気で「謎のダンジョン」を攻略するテンションだったので、恐怖のハードルが低すぎて直ぐに気持ちを落ち着けられる。
「ひやぁぁぁっっっっっ!!」
「きゃぁぁぁっっっっっ!!」
薄壁の向こうから、甲高い男女の悲鳴が聞こえる。この声は吉見くんと沼田さんだろうか?良かった。モンスターと接する機会が少ない非戦闘要員の彼等は、この「異世界版オバケ屋敷」を存分に楽しんでいるようだ。
「出口かな?」
行き止まりになって、薄明かりが漏れた暗幕で仕切られた一画があったので入ってみた。
「・・・うわぁ」
「クオリティー低っ!」
トロールっぽい全長2mくらいのハリボテが鎮座していて、20mくらい手前に線が引いてあり、あちこちに布を丸めて作った赤いボールが幾つも転がっている。
「ぐっはっはっはっは!
ここから先は通さん!
通りたくば、その線からこちら側にはみ出さないようにして、
逃げ回る俺様にファイヤーボールを10回ぶつけるのじゃぁ~~~!」
トロールの中の人が反復横跳びをしながら何をすれば良いか丁寧に教えてくれた。
「ファイヤーボールって赤い玉のことかな?」
「多分ね。魔法の火の玉をぶつけたら、中の人が死んじゃうからね」
ファイヤーボール、想像以上に軽くて、モロに空気抵抗を受けてしまって、なかなか当たらない。
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最初に「謎のダンジョン」を攻略したのは土方さん&鷲尾くんペア。土方さんが10発10中でラスボスのハリボテオーガを倒したらしい。次いで僕&真田さんペアが脱出して、吉見くん&沼田さんペアが、だいぶ遅れてクリアをした。
こうして、僕等の「謎のダンジョン」攻略イベントは終了する。あんまり面白くないテーマパークだったけど、僕等は大切な教訓を学んだ。
それは
自らが変革のためにアクティブに動くのではなく、「唐突に出現するダンジョン」という環境側の変化待ちだの、「ワザとらしく配置された宝箱に凄いアイテムが入っている」や「最深部まで行けば素晴らしい恩恵を受けられる」だの・・・
全てが他人任せの都合の良い妄想は、土方さんのようなイケてる女子からはドン引きされる。
・・・ということ。
尊人と早璃は魔法の練習をしているけど、どう頑張っても、智人の火力や、異世界の住人の魔法技術には適わない。沼田や土方みたく「練習しても無駄」って思考や、藤原や近藤みたく「魔法には見向きもせずに得意分野を伸ばす」ってスタンスの方が大多数だと思う。だけど尊人達は練習をしている。早璃の場合は劣るなりに特殊能力と併用することで一定の長所にできるから。尊人の場合は「何もできないままでいいや」って考え方が嫌いだから。出来ないなりに積み重ねて少しずつ出来るようになるのが尊人のスタンス。人によっては、「アイツ、また無駄なことやってる。バカなんじゃね」と、自分は頑張っていないくせに不器用な者を嘲笑う。言葉で「努力をしています」とか「頑張ったつもり」と言うのは他者へのアピールであり、ただの承認欲求。尊人は「下手の横好き」だけど「好きこそ物の上手なれ」なので、余計なアピールはしない。その為に「アピール下手な陰キャ」に見られている。だけど、早璃はそんな「不器用だけど努力を当たり前にしている尊人」を「現実主義で自分の土台をキチンと作っている」と評価して好いている。
尊人は一度注意されたことが直ぐには改善できずに同じ注意をされたり、少し条件が変わると応用できない面がある。読む人次第ではイライラするんだろうけど、真っ向勝負の中で藻掻いている人ならば、ある程度は理解できると思う。




