25-1・セイの平原
西都市まで、あと1時間くらいの場所。馬を駆って緩やかな斜面を上っていたら、進行方向で閃光や火柱が上がるのが見えた。
「尊人くんっ!今の火って!」
「うんっ!多分、トモの特殊能力っ!」
智人がモンスターと交戦中と思いたいけど、これまでの経緯を考えと対戦相手はほぼ間違いなくブラークさんだろう。
真田さん(後に沼田さん)が馬の速度を上げて先頭に出る。
「おい!先行すんなっ!」
藤原くん(後に僕)が馬の速度を上げて追い付き、その後を、馬のペースを上げた土方さん(後に安藤さん)と鷲尾くん(後に吉見くん)と近藤くんが付いてくる。
視線の先で、たびたび炎や雷が飛び交って、気持ちばかりが逸る。
「戦いが続いてるってことは、まだ2人とも無事ってことだろうけど・・・」
智人とブラークさんは、どちらも超越レベルの強さだ。だからこそ、「どちらも無事」で決着が付くとは思えない。
緩やかな斜面を上がりきったら、眼下の平原に白い集団が200人くらい集まっている。その向こうで、智人とブラークさんが、50mくらい距離を開けて戦っていた。更にその100mくらい先には馬車が駐めてあり、幾つもテントが並んでいる。
ブラークさん(もしくは黒騎士団)の襲撃を予測して、待ち伏せていたのだろうか?
「やっぱり2人が戦っていたっ!」
智人が上空に出現させて飛ばす無数の剣を、ブラークさんは剣から発した気流で弾き、すり抜けた数本は直に剣で叩き落とす!ブラークさんが剣から炎の刃を発するけど、智人は氷の刃を出現させてぶつけて相殺をする。
「すごい・・・互角の勝負をしてる」
「いや・・・そうとも言い切れんぞ」
藤原くんが意味深な発言をする。
「銀髪ニイチャン(ブラーク)は剣士だ。
接近戦が得意レンジだろうに、距離が空きすぎている」
「どういうこと?」
「アイツ(ブラーク)の技量でも、徳川に近付けないってことだ!」
ブラークさんは智人の攻撃をしのぐのが精一杯で接近できず、トモはブラークさんの攻撃を全て相殺している。互角に見えるけどトモが有利。藤原くんはそう言っている。
「徳川の野郎・・・あんなに強いのかよ?」
智人の特殊能力が「何でもあり」なのは事前に説明をしている。だけど、藤原くんの想像を超えていたようだ。
「チートは銀髪ニイチャンに押しつけて、織田達との合流を考えたくなるが・・・
そんな情けねーことは言ってらんねーな」
「どうするつもり?」
「加勢すんだ!イケ好かない奴だが、チートよりはマシ!
キャパの狭いチートを付け上がらせたら、面倒臭いことになるぞ!」
「先ずは、約束通り、トモと話をさせてもらうよ」
「チートを止めることができたらな!」
藤原くんが、真田さん&沼田さん、土方さん&安藤さん、鷲尾くん&吉見くん、近藤くんに、手で「突っ込め」と合図を送り、馬の速度を加速させてトモとブラークさんの戦場に突入しようとした。しかし、白騎士達が立ち塞がって一斉に構えた。
「僕達を妨害するつもり?」
「あの人数が武装をして“楽しいピクニック”なんてありえねーからな。
銀髪ニイチャンの加勢をさせたくねーってことだろう」
「これじゃ、あの人達を倒さなきゃ、トモに接触できないっ!」
「やるしかねーか!」
藤原くんが「止まれ」の合図をして、馬を一斉に停める。
「沼田っ!俺と近藤と土方と鷲尾、それから源と早璃!
6人をフォローできるか!?」
「うんっ!なんとかなりそう!・・・富醒・ヒール!」
藤原くんが指定した6人の体が輝いて、沼田さんの特殊能力の干渉下に入った。これで、即死以外なら1回は全快が可能になった。
「大丈夫なの?縫愛?」
「6人全員の回復をしちゃうと、私が動けなくなりそうだけどね」
沼田さんのヒールは、使用回数が限られており、沼田さんの体力が万全の状態でも6回が限界。今日は、1回分を既に僕が使っており、沼田さんはここまでの移動時間を経て、辛うじて6回使用が可能な体力を回復させていた。
「沼田と愛美(安藤)と吉見は離れてろ」
非戦闘員の安藤さんと吉見くんまでヒールでフォローする余力は無い。指示をされた3人が、その場に留まる為に馬から下りる。
僕も非戦闘員だけどヒールの干渉を受けたのは、白騎士の集団を抜けて、智人に接触をしなければならないからだ。
「いいかオマエ等!無理はするな!
ヒールを1回受けた時点で、戦場から離れろ!」
藤原くんらしくない慎重な指示。それくらい「この戦場はヤバい」ってことだ。
「沼田の余力を考えると、4人を回復した時点で全員撤退だ!」
馬上の真田さん、近藤くん、土方さん、鷲尾くんが頷く。
「尊人は、戦いに参加したら真っ先に脱落するだろうから、
白騎士との戦いは避けて、チートとの接触だけを考えろ!
その道は、俺達が作ってやる!」
藤原くんの態度は勇ましく、言葉はありがたい。だけど、裏を返せば、たった4人で200人の白騎士と戦うってことだ。智人やブラークさんみたく突出はしていないけど、騎士団だって充分に強いはず。藤原くんは皆に「無理はするな」と言ったけど、この突撃自体が無理としか思えない。
智人と話したい。櫻花ちゃんに会いたい。だけど、その為に誰かが犠牲になるのは嫌だ。
「迷うな、尊人!」
背で僕の緊張を感じ取った藤原くんに指摘される。
「勘違いをすんなよ。
俺と近藤は、チートにデカい面をされたくない。
土方と鷲尾は、織田に会いたい。
オマエは、ダチの暴走を止めたい。
みんな、オマエの為じゃなくて、自分のために戦うんだ。
オマエが気にしてやるのは、『自分のため』以外で戦う早璃だけで良い」
「・・・うん」
藤原くんが頭上に上げた手を前に突き出す合図をして、たった5騎の藤原軍が、200人の白騎士団に突撃をする!




