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24-2・安藤さんへの疑問

「ねぇ、安藤さん?」


 街道に出て、馬が広がって移動できるようになったところで、振り返って土方さんの後に乗ってる安藤さんに声を掛ける。


「安藤さんが帝都に来た目的ってさぁ・・・」

「あ?聞こえねー!大きい声で喋ってくれ!」

「安藤さんが帝都に・・・いてぇ!」


 馬が歩く振動で舌を噛んでしまった。自転車でも縦列で走ってる時はあんまり会話をしないのに、馬でやるのは無謀だった。


「そんなに不思議か?」


 声が届かない安藤さんの代わりに、僕を馬に乗せてくれている藤原くんが対応をしてくれた。


「うん、不思議だよ。

 なんか理由があるから西都市セイ行きを急いでるんでしょ?」

「ああ、もちろんだ」


 僕がブラークさんを探していた頃、安藤さんは真田さんに連れられて藤原屋敷に行って、仲間達と再会した。


「最初は再会を懐かしんでいたんだ。

 だが、ちょっと様子がおかしかったから問い詰めたんだ。

 アイツ、最初は誤魔化そうとしていたけど、やがて観念をして説明をした」


 安藤さんが帝都に来た目的は、ゴククア公暗殺が成功するか確認すること。未遂に終わって暗殺者が返り討ちになれば、見分役が報せなければならない。


「そっか・・・やっぱりそうだったんだね。

 でも、安藤さんが実行犯じゃなくて、チョット安心したよ」

「愛美(安藤)にそんな度胸はねーよ」

「そうなの?」


 安藤さんは、藤原くんや近藤くんと同レベルの「度胸がある人」だと思っていた。


「それで、安藤さんを西都市セイ圏内に逃がすために護衛してんの?」

「いや、それは違う。俺達は愛美をセイに返す気は無い。

 愛美は、暗殺の見分を理由にして、徳川チートから逃げてきたんだ。

 織田達がセイに連れられてきた同日に“見分役”の立候補をしてな」


 今の西都市セイは、表向きのトップ(代理)はホーマン夫人や令嬢だけど、裏では智人トモが仕切っている。主のホーマン公が亡くなって以降、トモを抑えられる人がいなくなり、かなり増長をしているらしい。それで、嫌気が差した安藤さんは、帝都の藤原くん達を頼ってきたのだ。


「オマエはどう思う?マズいと思わねーか?」

「なにが?」

チートのところには、織田や寺坂がいるんだぞ」


 櫻花おーちゃん達が危険ってこと?智人トモが、捕虜のおーちゃん達を、見せしめの処刑にするとか?トモはちょっと面倒臭いところはあるけど、残酷なヤツではない。おーちゃん達の命が危険なんてありえない。


「呑気な奴だな。オマエは、早璃以下のお子ちゃまか?

 危険なのは“命”だけじゃない。

 現実世界に戻っても消せない傷が付けられるかもしんねーんだ」

「どういうこと?」

「わかんねーのかよ?まぁ、いい。

 細々と説明したところで『俺達が間に合うかどうか?』は変わらないからな。

 オマエはオトモダチが下らねー勘違いをしないように祈っておけ」

「・・・うん」

「チートの増長を聞いて、真っ先に織田達の救出を騒ぎ出したのは早璃だ。

 俺も同意見だし、オマエ以外の全員が納得をした。

 それが『突発的な西都市セイ行き』の理由だ」


 柴田くんや綿本さんの時と同じだ。みんな、智人トモを「信用できない嫌な奴」として扱っている。藤原くんのことは「信頼できる人」と見直したけど、そこだけは受け入れがたい。


「・・・ねぇ、藤原くん。

 トモって、そんなに悪い奴じゃ・・・」

「俺はチートを信用していない」

「藤原くんみたく注目を集める人から見れば、

 僕やトモなんて信用できなくて、バカにしてるのは解るけどさ・・・

 それと悪人かどうかは別の話というか・・・

 強い人は弱い人のことを・・・」

「バーカ。どうにもなんねーのはアイツだけ。弱いのはアイツだけ。

 オマエとチートは全くの別もんだ」


 智人トモも藤原くんのことは嫌っていた。僕は以前は「恐い人」と思っていたけど、接点を持った今では「ちょっと恐いけど良い人」と思っている。2人の間には何かがあったのだろうか?


「適当に誤魔化しても、オマエは納得しねーんだろうな。

 晩飯の時にでも説明してやるよ」

「・・・うん、お願いします」


 やはり何かがあったらしい。あとで教えてくれると言うのだから、今は追及をやめる。興味はあるけど、聞くのが少し恐い。



 西宿場町ミドオチスに到着をしたのは日が暮れてからだった。帝都出発が昼過ぎだったから当然と言えば当然だろう。馬には、かなり頑張ってもらった。


「あぁっ!ミコト様っ!私に会いに来て下さったんですね!」 

「げっ!」


 町に入った途端に、赤ドレスの令嬢が寄って来た。アンさんだ。


「この様なところで会うなんて、私達は何度でも巡り会う運命なのです」


 常に町中や町の外を彷徨いていて、通過するたびに巡り会うんだから「運命」ではないだろう。


「あら、ミコト様!」 「おいで下さったのですね」 

「晩餐に招待させて下さい」 「今宵は私の部屋へ」 

「周りの殿方は御家来ですか?」 「お供の女性達は妾ですか?」


 今までどこにいたのか解らないっけど、青ドレス&黄ドレス&桃ドレス&緑のドレス&黒いドレス&白いドレスの御令嬢が寄って来た。ドゥエさんとかクィンさんとか、多分、ちゃんと名前が会ったと思うけど、アンさん以外の名前は覚えていない。

 ・・・てゆーか、藤原くん達が僕の家来扱いされていることと、女の子達が僕の妾扱いされてることと、僕が町の女の子に手を出しまくる不潔な奴として見られていることの、どれから訂正すれば良いんだろう?


「この可愛い子達、みんな源君の恋人なの?」

「源にモテ期が来たのか?」


 吉見くんと鷲尾くんは思いっ切り勘違いをしている。


「源くん、サイテー。

 こんないい加減な世界で女の子に言い寄られて、鼻の下を伸ばしてるの?」

「モテないなら、現実世界でモテるように努力しなよ」

「現実じゃモテないから、この世界のバカ女を相手にして調子に乗ってんだろ?」


 沼田さんと土方さんからは「汚物を見るような目」で見られ、安藤さんには冷笑される。


「源、据え膳食わぬは男の恥だ!」


 近藤くんのワケの解らないアドバイスを聞く気はない。


「その気が無いならハッキリしろよな」


 藤原くんからは真っ当な文句を付けられる。どうやら、僕が真っ先にしなきゃならなかったのは「不潔な奴として見られていること」の訂正だったらしい。


「アンタ等うるさい!寄ってくるなっ!ってゆーか死ねっっ!」 


 見かねた・・・と言うか、7令嬢のことが大っ嫌いな真田さんが追い散らしてくれた。

 この町に来るたびに、7令嬢と絡むイベントが発生するのだろうか?もう二度と来たくない。




 火事の現場で尊人達に会った時に「ここにいるのを知らなかった」口ぶりだったのに、後の説明では「藤原組に合流する為に来た」と言っており辻褄が合わない。これはミスではなく、安藤の言葉を意図的に矛盾させている。

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