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智人-11・織田

「チート様!町から火が上がりました!」

「バカどもめ!民に罪は無い!町を焼くのはやめさせろ!」


 血祭りに上げるのは軍人だけで良い。民を苦しめる趣味は無い。だが、結果的には炎が秘境者を動揺させて動きを鈍らせた。

 しばらくの交戦の後、我が精鋭に拘束をされた寺坂照代と蓮井怜香先生が、俺の目の前に連れてこられた。


「安心してくれ。危害を加える気は無い。俺が君達を保護してやる。

 ただし・・・」


 寺坂と蓮井先生にも価値はあるが、本命を捕らえなければ意味が無い。


「あと1人に投降してもらう為に、人質のフリをしてくれ」


 寺坂の後ろ手を取って引っ立てるようにして、織田がいる櫓の前に立つ。


「そこまでだ、織田櫻花!」

「徳川くんっ!」

「寺坂達と共に俺の保護下に来い!

 俺は、君等を野蛮な戦いに駆り立てるようなことはしない!

 既に保護をしている安藤と共に、モーソーワールドを優雅に楽しむんだ!」

「軍事侵攻をしてきた張本人が、よくそんな見え透いたことをっ!」

「それは北都市ノス側が仕掛けてきたからだ!

 だが、友である君達には傷ついてほしくない!

 君が投降をするなら、兵を退くことを約束しよう」


 彼女達は戦いが好きで戦場にいるわけではない。黒騎士団に義理があるわけでもない。既に仲間は俺の手元にいて、お膳立ては整っている。

 あとは戦いを放棄する理由をくれてやれば済む話だ。


「・・・わかった。降伏する」


 俺は“報復の為の遠征”という都合の良い大義を利用して、真の目的を達成した。

 その後、焼けた一角からの民の避難を理由にして、全軍を壁外に退却させる。翌日には帝皇からの調停の使者が来たので受け入れた。尤も、もう俺には戦う気は無く、都合の良い撤退理由を思案していたので、好都合だった。



 2日を経て西都市セイに凱旋をする。織田達は、町での俺の人気ぶりに驚いている様子だった。


「さぁ、お姫様達、ここが今日から君等の家だ」

「すごくね?」

「すごすぎ」

「徳川くん、いつの間に、こんなに偉くなったの?」

「はははっ、偉くなんてなってないさ。俺は俺のままだよ」


 彼女達は、ホーマン邸の規模にも度肝を抜かれた様子だった。


「姫君達は、美味い食事と暖かい部屋で疲れを癒やしてもらいたい」


 豪華な晩餐で持て成し、それぞれに部屋を与えてやる。ホーマン公亡き今、この屋敷の主はボウイン婦人だが、実際には俺が仕切っている。ホーマン家の遺族達は、俺無しでは権威を維持できない。

 


 タイミングを見計らって、織田に与えた部屋の扉をノックする。


「遅くにすまない。ちょっと良いかな?」

「どうしたの?徳川くん」


 室内には入れてくれたが、俺は彼女からは信用されていないらしい。露骨に警戒をされたので、扉に寄りかかって「ここからは一歩も動かない」とアピールする。


「この部屋さ、数日前までは尊人ミコが使っていたんだ」


 この部屋はホーマン公爵と婦人の部屋よりは狭いが、シリーガルとバクニー、そして俺の部屋と同等の広さがある。他の連中に宛がった部屋は、この半分以下の広さしか無い。尊人ミコが町の女の子を連れ込んで騒いでも周りに迷惑がかからないように、特別な部屋をくれてやった。しかし、彼は俺の優しさを無駄にした。


「えっ?尊人がここにいたの?今はどこに?」

「真田に騙されたみたいでさ、自活するって言って出て行った。バカな奴だよ」


 本当にバカな奴だ。俺は「織田櫻花は必ず連れてくる」と言った。そして公約を果たした。君があのまま俺の元にいたなら、織田はくれてやるつもりだった。だが、尊人ミコはいない。


 バクニーとシリーガルは、強い俺に一目惚れをした。町娘達は俺のベッドに誘えば、喜んで付いてくる。リアルワールドでは俺を散々小バカにした安藤愛美は、今では俺無しでは生きていけない。俺はモテる。どんな女も俺にひれ伏す。俺にはその力が有る。

 リアルワールドという面白みの無い世界は、俺が才能を開花する価値の無い世界だった。だが、モーソーワールドは違う。俺の才能が存分に活き、俺が望む物は何でも手に入れられる。


尊人ミコ・・・この場にいない君が悪いんだ。

 恨むなら自分の選択ミスを恨め」


 目の前にいるのは学園のアイドルだ。興味が湧かないわけがない。「親友が一途に想い続けた子」という背徳が、鼓動を高鳴らせる。

 背凭れにしている扉に手を回して、内鍵をかける。


「・・・徳川くん?」


 織田櫻花は、俺の目を見て、俺の魂胆に気付いたようだ。構えて後退りをしようとする。しかし、脱力気味に家具に凭れ掛かった。


「体はリラックスしているようだな」


 数日前まで緊張状態が続いた織田達には、夕食時に緊張が解れるハーブティーを振る舞った。予定通り、だいぶ効いているようだ。


「なんのつもり?」 

「怖がらなくても良い。怖がる必要は無い。

 俺は英雄だからな。色を好むってやつだ」


 俺は、彼女の心を掴む自信がある。安藤も最初は抵抗をしていたが、「遠藤と加藤には圧勝した」と説明してやったら温和しく身を委ねるようになった。


「俺の要求を受け入れ続ければ、永遠に贅沢をさせてやる」


 この広い部屋は、騒いでも周りに迷惑がかからない特別な部屋。この屋敷に、俺に意見をできる者などいない。


 俺から離れた尊人ミコが悪い。

 異世界では、助けてあげるだけでモテる。良く解らないけど初対面で一目惚れされる。常識で考えれば、そんな簡単に好意を持たれたら怖い。だけど、智人は「俺は簡単にモテる」という条件を受け入れてしまい、「リアルでも簡単に思い通りになる」と誤認識をしてしまった。

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