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23-4・僕の選択

「え?尊人くんはそれでいいの?」

「うん」

「なに考えてんの?」

「僕なりに色々と・・・ね」


 朝一で僕の結論を発表する。真田さんは驚き、土方さんは呆れ顔だ。


智人トモのところには行きたいけどさ、

 それよりも効率良く仲間を集める方が優先だからね。

 吉見くんが言ったように智人トモの保護下なら安全だろうし、

 近藤くんが言ったようにトモを逆撫でするのはマズいだろうからね」


 現時点でハッキリしているのは、西都市セイには智人トモ櫻花おーちゃんを含めて5人、南宿場ミドメリデには由井さんがいること。北都市ノスと他の宿場町には誰もいないこと。南都市サウザンには菅原さんと前田さん、東都市アーズマには隣のクラスの和田さんと渡辺くんがいる可能性が高いこと。計10人。

 藤原組は計8人なので、全部集まると18人。そのうち、智人トモと由井さんは明確に「残りたい」の意思表示をしている。

 10人の脱落は確認しているので、残った転移者は最多で41人。確実に過半数(21人)を取る為には、あと3~5人くらいは「帰りたい」を集めてから、判明している転移者と接触するべき。


「なるほど、一理あるな」


 藤原くんが納得をして「オープン」と叫ぶと、藤原くんの目の前に多数決状況が「帰還派8(藤原組):残留派1(由井さん)」が表示される。僕の多数決状況「帰還派8(藤原組):残留派2(智人と由井さん)」。僕と真田さんが接触済みの安藤さんや、藤原くん達が接触済み(交戦済み)の脇坂くん&我田さんは意思を聞いていないので数に含まれない。


「藤原くんが言ったように『結論を急がない』が僕の意見。

 西都市セイ東都市アーズマに行くより先に、

 まだ確認をしていない村の確認をしておきたいよね」


 北東村ペイイスを離れてから30日以上経過している。北西村ウェスホクには寄ったけど素泊まりしただけ。南東村トンナン南西村ミナーシャは未到達。


「この4村を確認すれば、3~5人くらいは集められそうだよね。

 そっちを優先させない?」

「尊人くんがそうしたいなら、あたしは賛成!」


 真田さんが慎重派に寝返った。昨日の「櫻花おーちゃんに会いに行く」を主張していた時みたく「無理をしてる表情」ではなくなった。

 これで「おーちゃんへの接触が優先」を希望するのは土方さんと鷲尾くんだけ。リーダーの意見を聞く前に、藤原組の多数派な「慎重路線」に決まった。


「源くんがそんな薄情とは思わなかった」

「きっと今頃は、綺麗なドレスでおめかしして、

 トモや安藤さんと一緒に美味しい朝食を食べてるよ」


 土方さんからメッチャ冷たい目で睨まれたので、眼を逸らしつつ笑って誤魔化す。櫻花おーちゃんを見捨ててるわけじゃないんだけど罪悪感はある。だけど、「おーちゃんへの接触が優先」を選んでも、無理をさせている真田さんに対する罪悪感が生じるように思える。どっちにしても罪悪感があるなら、もう、自分の判断を信じて割り切るしかない。


「どうする?4つの村を2人一組になって手分けする?」


 帝都~各都市とは違って、村までの直通街道には宿場町が無い。3日をかけて宿場町と都市を経由して無理なく90㎞の移動をするか、1日で50㎞を移動するかの二択になる。


「片道に3日もかけてられないから、直通強行だな」

「安全を考慮するなら4人一組で2つの村の確認を2セットだろう」


 今から出発をしても到着は夜遅くになってしまう。だから、明日の日の出前に発つことが決まる。


「どの村に行こう?」

北都市ノスから近い北東村ペイイス北西村ウェスホク

 治安が悪化してる可能性がありそうだから、

 先ずは南東村トンナン南西村ミナーシャにしない?」


 行き先が決まり、藤原くんが前回と同じ組み分けの指示をする。また土方さんと同じ班だ。道中で嫌味を言われそう。「私の馬に乗せてあげるよ」と言われたら要警戒だな。


「えっ?また、尊人くんとふーみんが同じ班で、あたしは別の班なの?

 尊人くんに嫌がらせするつもりでしょ!?」


 いつも通りに真田さんが文句を言う。


「しねーよ!前にも言っただろ。この組合せはバランスが良いんだ」

「心配ありがと。僕達なら大丈夫だよ」

「私も心配しなくて良いと思うよ。なんか最近、源君と藤原君、仲良いよね」


 沼田さんのフォローを聞いた僕と藤原くんは、顔を見合わせて照れてしまった。仲が良いかどうかは解らないけど、信頼感が生まれつつある自覚がある。


「えぇっ!そうなの?尊人くんとふーみん、仲良しになったの?いつの間に?」 

「そりゃ・・・まぁ・・・前に比べれば・・・」

「20日近く共同生活をしているんだから、少しくらいは・・・な」


 今日は昨日の強行の疲れを取りつつ、明日の強行に備えてゆっくりと過ごすつもりだった。

 ・・・だけど。


「ん?なんだなんだ?」


 屋敷の外が騒がしい。僕等は、ただごとでは無い空気を感じて屋敷から飛び出し、町の中央方向の空を見上げた。大きな煙が上がっている。


「この煙・・・火事だよね?」

「ねぇ、尊人くん。この方向って・・・」


 ホーマン公の暗殺から始まった嫌なことは、「まだ終わっていない」という予感がする。 


「ブラークさんの泊まってた宿の方だ!

 チョット、行ってくる!」

「あたしも行くっ!」


 僕と真田さんは、火事の現場に向かって駆け出す。


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