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23-2・争いの詳細

 西都市セイの連隊(2500人、騎士大隊含む)が侵攻をしてきたのは事実だった。セイの軍隊の侵攻が早すぎた。帝都でのゴククア公爵(ノスの領主)の暗殺が失敗をした時点で、出陣準備が整っているとしか思えない早さだった。


「その為に帝都に滞在するゴククア公爵は満足な指示を出せず、

 我がノスの軍隊は対応が後手に回ってしまった」


 北都市ノス軍は町から5㎞くらい離れた街道(平原)に歩兵連隊(2000人)と騎士団の中隊(100人)を配置したけど、セイ軍を率いるチートが壊滅させる。

 その後、西壁を挟んだ攻防戦が開始された。ノス兵は壁門を守る配置をしていたのだが、頑丈なはずの壁が簡単に破られるという想定外が発生して、セイ軍に内部侵攻をされた。


「壁内に入られれば敗北は確定なんだろ?

 しかし、町は制圧をされていない。どういうことだ?」

「解らん。だが、セイの軍隊の目的がノスの町の制圧以外にあったとしか思えん」


 誰もが「勢いに乗るセイ軍は、そのまま都市の中枢を目指す」と思っていた。それが戦いの定石だ。しかし、パルー騎士団はノスの町の制圧ではなく、オブシディア騎士団との衝突を優先させる。指揮官チートは、それまでのような圧倒的な破壊力は行使せず、まるでオブシディア騎士団を物色するように戦況を眺めていた。

 セイ軍が、町の一角を焼く。オブシディア騎士団に所属する3人の秘境者(転移者)のうちの2人がパルー騎士団に捕らえられた。そのタイミングで指揮官チートが、残りの1人=弓使いに投降を呼び掛けた。


「それで、おうかっちは降参して捕まったってこと?」

「その『おうかっち』とやらが、オウカと言う名のアーチャーならば・・・な」

櫻花おーちゃんは智人トモと一緒にいるんだね?」


 ブラークさんやノスの人達には申し訳ないけど、僕は少し安心をした。櫻花おーちゃんは生きていて、智人トモに保護をされた。安藤さんが安息を求めてトモのところに残ったように、おーちゃんの安全もトモが保証してくれる。

 それに、ブラークさんとトモが衝突しなくて良かった。強すぎる2人が戦ったら、2人ともただでは済まないだろう。


「帝皇からの講和の使者が到着した時点で、ノスの軍隊は侵略を中止していた。

 そして、『待っていた』と言わんばかりに講和を受け入れて撤退をしたらしい」

「都市の侵略ではなく、織田達の獲得が目的だったようにしか思えんな」


 ノスの町は制圧されなかった。西側の一角が焼かれただけで済み、市民の犠牲は少なかった。だが、多くの兵を失い、且つ、秘境者を奪われ、大幅に戦力が低下をして報復をする余力は無い。


「アンタ等がセイの偉いさん(ホーマン公爵)を暗殺したのが発端だろう?

 アンタがコイツ等(源達)を隠れ蓑にして冒険者のフリをして手配したんだろ?

 自業自得じゃねーのか?」


 さすがは藤原くんってところだろうか?ブラークさんに遠慮のない正論をぶつけつつ、僕が聞きたかったけど聞けなかったことも質問する。


「ミコトとサリを利用したことは謝罪する。

 だが、オマエ等に迷惑がかからぬように手配をした」


 やっぱり“あの時”が今の事態に繋がってしまったんだ。「頼れる格好良い人」以外のブラークさんを知ってしまって、僕は言葉を失う。


「そのわりには、俺等の仲間がシッカリと巻き込まれてんじゃねーか!」

「ホーマン公は帝皇の転覆を画策していた。

 転移者チートを得てから、増長をする一方だった」

「だからって、暗殺は乱暴すぎんだろ!」

「内通があった」

「はぁ?」


 本来ならば、要人の移動など公にはならない。公爵達は自分達を守る為に、直前まで秘匿を徹底する。だから道中での暗殺準備などできるわけがない。しかし、ゴククア公爵に情報が入り、ブラークさんに暗殺者の手配を指示した。

 ブラークさんは冒険者に成りすまして、冒険者ギルドで西の宿場町付近の依頼を受けて、単身で向かうつもりだった。そこで、僕等に会ったのでパーティーを組む。「素人冒険者の兄貴分」という立場は、素性を隠すには丁度良かった。

 そして、情報通りにホーマン公爵がセイの町へと向かう。この時点で、ブラークさんが請け負った暗殺は、成功がほぼ約束されていた。 


「オマエ等に話したのは謝罪のため。

 だが、他言は無用だ。

 ゴククア公がホーマン公の暗殺を命じたことなど、決して公にしてはならない」


 ブラークさんなりに僕等を大切に扱ってくれているのは解る。だけど、ショックが大きすぎて言葉が出ない。


「尊人くん、割り切ろうよ。

 あたし達がやるべきことは決まっているんじゃない?」


 真田さんが僕の手を握って不安と不満を和らげてくれる。


「うん・・・そうだね」

「イチャ付くな、盛りの付いた中坊共!」


 藤原くんが呆れ顔でからかう。


「中坊じゃねーし!」

「え?『イチャ付く』は訂正しないの?」

 

 やっとお腹から声が出た。

 真田さんの言う通りだ。戦争は悪いことだし、巻き込まれた人達は気の毒だ。でも、僕等が「戦争は悪いことです」と声を上げた程度で戦争が止まるくらいなら勃発していない。この世界の政権中枢の方針なんて、僕等には雲の上の出来事だ。「ブラークさんは任務なんだから仕方がない」「この世界のことは僕達には関係無い」と割り切った方が良い。


「セイに行けば、転移者が5人いるってことだよね。

 トモのところに行こう!」


 急いで帝都に戻って仲間達に現状を報告して、方針会議の後に西都市セイに行く。それが僕等のやるべきことだ。 


「俺は、もうしばらくは状況確認をせなばならん。

 帰路は同行できなくてすまない」

「いえいえ、連れてきてもらえただけでもありがたいです」


 気が付くと、日が暮れ始めていた。気は焦るが今からの出発は難しいので、ブラークさんの家に泊めてもらって、明日の朝一でノスの町を発つことにする。



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