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23-1・戦災のノスへ

 ブラークさんは自前の馬に、藤原くんは以前に青騎士団から略奪した5頭のうちの1頭に颯爽と飛び乗る。僕は馬に乗れない。 


「尊人くん、乗って!」


 真田さんも馬に跨がっていた。


「乗れたの?」

「前にシリーガルさん達に乗馬体験に連れてってもらったし、

 尊人くんがふーみんと特訓してる間、あたしは騎乗特訓をしてたからね」


 女の子の後ろに乗るのは格好悪いし、真田さんがちゃんと馬を操れるのかチョット不安。ブラークさんか藤原くんの馬に乗せてほしい。だけど重量による馬への負担を考慮すると、軽量級の僕と真田さんが同じ馬に乗るのが正解だ。


「よろしくお願いします」

「んっふっふ!任せて!」


 真田さんの馬に乗せてもらう。僕の足の付け根が、それぞれの服越しに真田さんのお尻と密着して、余計なことを考えそうになる。ホントなら前に乗ってる真田さんを胸で抱えるようにして、僕が手綱を握るのが正解なんだろうけど、僕は馬を操れない。北都市ノスから帰ってきたら、今度こそ、馬に乗る特訓をしよう。


 仲間達に見送られて、ノス視察に出発をする。

 


 北宿場ミドセプテで一泊をして、朝日が出る前に出発。昼前にはノスの町に到着をした。南門(入場した門)付近にある馬屋に馬を預けて休ませ、別の馬3頭を借りる。

 町は、前に寄った時のような華やかな雰囲気は無い。民達は一様に安息の生活をしているが、治安維持のために、歩兵やオブシディア騎士団が頻繁に巡回をしている。


「しばし待機をしていろ。勝手に動き廻るなよ」


 ブラークさんは、僕達に待機指示をして、巡回中の同僚の元へ。しばらく会話をしてから戻ってきた。


「西側の視察に行く。付いてこい」


 小さな民家が並んだ西門付近は、2万㎡くらいが焼け跡になっていた。言うまでもなく“ただの火事”ではない。戦火に焼かれたのだ。密着部(できる限り密着しないように頑張ってるけど)から、前に乗っている真田さんの緊張が伝わる。


「メチャクチャだね」

「うん」

「住んでた人達、可哀想」

「うん」


 一時的に避難をしていた住人達が、ある者は黙々と後片付けをして、ある者は呆然と立ち尽くしている。声を掛けてあげたいけど、なんて言えば良いのか解らない。初めて肉眼で見る戦争の跡だ。パルー騎士団が去って2日が経過したらしいけど、辺り一面はまだ焦げ臭い。


「尊人くん、あれ見て」


 町の中と外を隔てる高い壁のあちこちが崩れ、焦げている。


「どうやって壊したんだろ?この世界にミサイルなんて無いよね?」

「きっと魔法で壊したんだね」


 その光景を眺めながら、智人トモとセイの町の塔に昇ったことを思い出していた。

 この世界には、鉄筋や鉄骨やコンクリートは無い。大きい建物は所々に魔力精製をされた建材を配置して維持されている。だから、強い魔法をぶつけて構造物を維持する魔力を掻き消せば崩れる。

 智人トモは「俺が攻撃すれば倒せるかも」と言っていた。


「トモがやった?・・・まさかね」


 首を何度も横に振って“嫌な想像”を脳内から追い出す。

 

「状況は解った。次に行くぞ」


 ブラークさんは最低限の言葉だけを発して、黙々と馬を歩かせる。故郷の惨状を見て言葉を失っているのだろう。

 西地区にあるオブシディア騎士団の詰め所に到着して馬から下りる。建物内は野戦病院のようになっていた。40日くらい前までは平和しか知らなかった僕は、生々しすぎて直視ができない。


「しばらく待っていろ」


 ブラークさんが白髭の騎士に寄って行って、丁寧に礼をしてから会話をする。オブシディア騎士団の団長らしい。


「おうかっち・・・いるかな?」

「・・・うん」


 真田さんに言われるまでもなく、この町に到着してからずっと櫻花おーちゃんを探していた。だけど、どこにもいない。詰め所に女性っぽい人はいない。美しき弓使い=オウカがおーちゃんとは別人と思いたい。


「あの・・・ちょっといいですか?」


 真田さんが、近くにいた騎士さんに声をかける。


「騎士様の中には女の人もいるんですか?」

「ああ・・・数人が戦いに参加をしていた」

「どこにいますか?」

「解らない」


 聞きたくなかった情報だ。嫌な想像ばかりしてしまう。


「目を背けるな。早璃に無理をさせるな。オマエがシッカリしろ」


 俯いていたら、見かねた藤原くんに叱責をされる。


「・・・うん」


 解っているんだけど、「破壊者が智人トモかもしれない」と想像して、「戦いに参加した『数人』の中に櫻花おーちゃんがいたかもしれない」と考え、気持ちを前に向けることができない。


「詳細はだいたい解った。可能な範囲で説明しよう」


 ブラークさんが戻ってきた。「場所を変える」と言って馬に乗って案内をしてくれる。到着をしたのは、町の中央から近いブラークさんの家だった。「ブラークさんはお金持ち」と勝手に思っていたけど、藤原くんが略奪した帝都の屋敷よりも小さい。

屋敷に入って、ブラークさんはテーブルに備え付けの椅子に、僕達3人は簡素なベンチタイプの椅子に腰を降ろす。

 ブラークさんの表情は暗い。聞く前から嫌な予感しかしない。


「オマエ達が知りたい結論から言おう。

 オウカと言う名のアーチャーと、共にいた2人の秘境者は、

 セイの軍隊を率いた似非英雄に連れ去られた」

「・・・・・・え?」


 エセ英雄って西の英雄チート(智人)のこと?智人トモ櫻花おーちゃん達を連れて行った?

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