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22-1・おーちゃんの噂

 もっと早くに櫻花おーちゃんと合流できていたら、僕はどうなっていたんだろ?おーちゃんに格好良いところを見せたくて、今よりも頑張れてるのかな?それとも、弟分扱いをされて後にくっついているだけかな?「同じ高校に行ければもっと頑張れる」「同じクラスになったら頑張れる」と何度も妄想した。でも、「実際に頑張ったか?」と考えるとできていない。ドンドンと差が付けられてる気がして、寂しい気分になった。アニメやゲームみたく「平凡な僕を一途に好いてくれる可愛い幼馴染み」なんて期待を何度もして、「そんな都合の良い妄想なんて現実になるわけがない」と何度も否定をした。



  沼田さんが経緯を説明する。

 真田さん達の班は、北宿場ミドセプテで情報収集をする過程で、北都市ノスオブシディア騎士団に「美しき弓使い」が居ると聞いた。その名はオウカ。


「ただの偶然や偽名かもしれないでしょ。

 だから、私や吉見君は、あくまでも『情報の1つ』と考えていたの。でもね」


 オウカの名を聞いた途端に、真田さんが露骨に動揺をして「ノスに行く」と言い出した。だけど、今回の遠征の目的は情報を持ち帰ること。ノスまで足を伸ばして黒騎士団と接触するリスクは避けたい。ノスで顔が割れているかもしれない真田さんを行かせるわけにはいかない。


「みんなが反対するのに早璃ちゃんは全然聞く耳を持ってくれなくて、

 『1人で行くからみんなは先に帰れ』って言い出して・・・」


 櫻花おーちゃんは弓道部に所属していて、それなりの実績を上げている。転移者の特殊能力(富醒)は、基本的には伸ばしやすい得意分野が与えられている。だから、オウカと言う名で「弓使い」なら、おーちゃんの可能性は高い。


「クラスメイトなら誰だって会いたいよ。

 おうかっちだけが特別ってわけじゃなくてね。

 だから、なんで早璃ちゃんがおうかっちにばっかり拘るのか解らなくて・・・

 理由を聞いても教えてくれなくて・・・」


 仕方無く、近藤くんと吉見くんが危険の無い範囲で偵察に行くことになった。真田さんは、その条件で完全な納得はできないなりに、一定の落ち着きは取り戻した。だけど今度は「早くみんなに伝えなきゃ」と沼田さんを置き去りにするくらいの早足で帝都への帰路を急いだ。


「帰ってきてから黙りっぱなしで・・・

 みんなと会った途端に泣き出して・・・

 藤原くんや源くんは、なんか心当たりある?」


 心当たりってわけじゃないけど、僕が考えていたのは「真田さんは、僕が好きな子を知ってる?」ってことだった。

 泣いている真田さんを元気にしてあげたい。でも、なんて言えば泣き止んでくれるのか解らない。


「チョットややこしいことになってるね。

 でもさ、焦っちゃ拙いんじゃない?近藤君と吉見君が戻るのを待とうよ」


 土方さんも察したみたい。櫻花おーちゃんと仲が良い土方さんが冷静に対応したことで、僕も少し落ち着いた。


「うん。中途半端な情報でオブシディア騎士団と接触するのはやめた方が良いね」


 櫻花おーちゃんに会いたい。今すぐにでも帝都を飛び出して、北都市ノスに行きたい。でも、それは絶対に違うって解る。

 あの時、真田さんが現実世界から持ち込んだ物を売らなければ、僕等はノスの町から慌てて逃亡をする必要はなくて、おーちゃんに会えた可能性があったのかな?でも、それは真田さんの所為ではない。


「ノスから追われたのは、同調と便乗をしてしまった僕の責任だよ。

 あの時は怖い思いをさせちゃってゴメンね」

「・・・うん」


 ようやく真田さんが涙を拭ってくれた。


「黒騎士団には、ちょっとツテがあるから、なんか知ってるか聞いてみるよ」


 ブラークさんなら何かを知っている可能性がある。だけど、沼田さんが肘で真田さんを突いて、「他にも話すことあるでしょ」と催促をした。


「ねぇ、尊人くん・・・チョット嫌な噂を聞いたんだけど」


 僕と真田さんとブラークさんがトロール&オーガ討伐を終えて帝都に戻った同日、西の宿場町でホーマン公爵が暗殺をされた。


「ホーマンさんって・・・シリーガルさんとバクニーさんのお父さん?」


 あの日、街道で白騎士団に囲まれた馬車と擦れ違った。馬車には、髭を生やした偉そうな人が乗っていた。紳士には興味が無かったけど、ブラークさんが恐い顔をして見送っていたので、鮮明に覚えている。


「関係・・・無いよね?」


 真田さんに「関係無い」と否定してほしい。だけど、前に皆にブラークさんの自慢した時、「信用できる相手なのか?」と言われた。真田さんは、「時々、凄く冷たい目をして違う方を見てる」「全部を信用できるって感じじゃない」と評価していた。


「確かめてくるっ!」


 この行動が正解かどうかは解らないけど、ジッとしてられない。櫻花おーちゃんの情報を得るにしても、ホーマン公爵の暗殺の事実を知るためにも、ブラークさんとの接触は必要だ。


「待って、尊人くん!あたしも行くっ!」


 僕が動き出したら、察した真田さんが付いてきた。


「おい、源!」

「ちょ・・・早璃ちゃん!」

「慌ただしくてゴメンっ!」


 藤原くんや沼田さんに止められるのを尻目に、僕達はブラークさんが泊まっている宿に向かう。




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