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21-5・おーちゃんの所在

 朝が来た・・・というか、朝日が昇って窓の外が明るくなってきたのに、まだ雑談は終わらない。途中で何度も由井さんに「仕事あるのに寝なくて良いの」と聞いたんだけど「明日寝るから大丈夫」と言われて今に至る。


「あっ!やべっ!朝の準備しなきゃっ!

 んじゃ、ゆっくりしてってね」

「ゆっくりする時間・・・全部奪われたんだけど」


 ようやく、由井さんが会話を止めて退室をしようとする。


「ああっ!由井さん、ちょっと待ってっ!」


 ペースを乱されまくって、一番大事なことを説明してなかった。


「帝都には藤原くんの持ち家があって、僕達4人以外にも、

 真田さんと吉見くんと沼田さんと近藤くんも一緒に住んでいるんだよ」

「お~!さりちゃんとぬあちゃんもいるんだ?次は、みんなで遊びに来てよ!」

「由井さん、一緒に帝都にいかない?」

「なんで?アタシが合流したら、女子4人で男子5人だから、

 男子が1人寂しくなっちゃうぢゃん」

「・・・・・・・・・・・ん」


 言ってる意味が解らない。その論法だと、現時点で女子3人で男子5人だから、男子2人が余って寂しいってこと?余った男子2人で友情を深め合うからOKってこと?


「いやいや、そうじゃなくて、みんなで力を合わせて、現実世界に帰ろうよ!」

「あ~・・・そゆことね」

「うん。帰りたい派を増やしたいの」

「ごめ~ん!アタシ、この世界のこと気に入っちゃってるの」

「え?・・・そうなの?」


 真っ先に聞くべきことが後回しになったあげく、アッサリと却下されて話は終わってしまった。


「つ・・・つかれた」

「ね~む~い~」

「やっと解散になった」


 ちなみに、僕と土方さんと鷲尾くんは頑張って起きていた(ペースを乱されまくっていた)けど、藤原くんは途中から座ったまま寝ていた。そして、恐いので僕と土方さんと鷲尾くんは起こそうとせず、怖いもの知らずの由井さんが起こそうとしたけど全力で止めた。


 真田さんもおしゃべり好きだけど、こ~ゆ~のとは違うっていうか、もっと落ち着いて会話のキャッチボールができるというか、話していて疲れることはない。じっくりと会話をしたのは初めてなんだけど、クラスの3大美少女で、櫻花おーちゃん以上に人懐っこい由井さんがモテ度で上位にいない理由が解った気がする。


「ゆいゆいを勧誘できなかったのは残念だけど・・・」

「それなりに収穫はあったね」


 今から寝たら、そのまま昼過ぎまで起きられそうにないので、早々に朝食を食べて帰ることにした。・・・ってゆーか、まさか、宿を手配する時に由井さんが勘違いした「4人で1部屋」が事実になるとは思わなかった。団体部屋のベッド3つは確保しなくて良かったじゃん。


「また遊びに来てねっ!」

「うん、時々様子を見に来るよ。引き続き情報収集をよろしくね」

「任せてっ!」

「気持ちが変わったら、帝都に来いよ」

「は~い!」

「もし、秘境者狩りに遭遇しても、絶対に無理はしないでね」

「うん!死なないようにガンバル!」


 由井さんに見送られて、南宿場町を発ち、帝都に向かう。

 このたびの情報収集で把握できたのは、「由井さんは南の宿場町で元気にしている」「菅原さんと前田さんがルービイ騎士団に参加している」「和田さんはサファイ騎士団に参加している」「渡辺くんが和田さんを追って東の都市アーズマに行った」、ついでに「鷲尾くんは櫻花おーちゃんが好き」・・・以上。それなりに大きな収穫だ。


「なぁ、源。前々から疑問だったんだが・・・」


 帰路のスタート時は、藤原くんの馬に乗せてもらう。・・・と言うか、一睡もしていない土方さんと鷲尾くんには、余り負担を掛けたくない。


「ん?なに?」

「なんでオマエは、その長剣を使っているんだ?オマエに合っているか?」

「ああ・・・これ?」


 藤原くんは、やや短くて幅広の剣(古代ローマのグラディウス)を使っている。剣としても使えて、状況次第では盾としても使える剣。徒手空拳も武器にする藤原くんらしい武器だ。近藤くんの場合は、典型的な長剣ツーハンデッドソード。剣の扱いに長けた近藤くんに似合いの武器だ。小柄で上半身の筋肉が無くて、剣を満足に扱えない真田さんは、最近ではダガーナイフを多用している。皆、初期装備の剣ではなく、自分用の武器に持ち替えているのだ。


「この剣、力石先生の形見なんだよね。

 元々使いやすい武器なんて無いから、この剣に慣れようと思ってね」

「そうか」

「・・・変かな?」

「ああ、変だな。だが、オマエらしくて良いんじゃねーのか?」

「僕らしい?」

「オマエの場合は、剣の技術以前に、スロースターターぶりが問題だ。

 闘争心のスイッチが入って本気で剣を振るうまでに時間がかかりすぎる」

「・・・うん」

「今後も早璃と並んで戦うつもりなら、戦うべき時を迷うな」

「・・・うん」


 以前、沼田さんが「藤原くんは中学の時に真田さんに告白してフラれたらしい」と教えてくれたのを思い出す。本当なのかな?聞いてみたいけど、さすがに聞けない。仮に僕が櫻花おーちゃんに告白してフラれて、そのあと、おーちゃんが他の男子と仲良くすんのを応援できるかな?多分、できない。目を背けると思う。


「帝都に帰ってからも、徹底的にしごくから覚悟しておけよ」 

「うん、ありがとう、藤原くん」


 まだちょっと怖いし、気軽に話しかけることはできないけど、藤原くんは悪い人ではない。格好良く思える。変な先入観で見ないで、この世界に来る前からもう少しちゃんと接しておきたかった。 



 帝都に帰ったら、真田さんと沼田さんが戻っていた。真田さんの表情に、いつもの笑顔が無い。


「どうしたの?吉見くん達は?」

「ちょっとワケがあって・・・

 近藤くんと吉見くんは、北都市ノスまで偵察に行ったの」

「アイツ等、勝手に動きやがったのか?」


 沼田さんの説明に対して、藤原くんが憤る。態度には出さないけど僕も同じ気持ちだよ。北都市ノスは秘境者狩りが盛んな地域。東都市アーズマで秘境者狩りと交戦したばかりなのに、たった2人でノスまで行くなんて何を考えている?


「ごめん・・・尊人くん」


 真田さんが口を開いた途端に涙ぐむ。目に涙を浮かべて僕を見詰めている。


織田おうかっち・・・多分、ノスの町にいて黒騎士団に入ってるの。

 あたしの所為でノスから逃げるみたいなことになってなかったら、

 尊人くん、おうかっちに会えてたかもしれないの」


「・・・・・・・・・え?」


 僕が一番会いたかった人の所在が解った?直ぐにでも会いに行きたい。会って、ゆっくり話がしたい。

 だけど、真田さんの泣き顔を見ていると、どう意思表示をすれば良いのか解らなくなる。

 尊人と早璃の親密度が安定をしてきたので、櫻花投入になる。


 尊人視点では描けないので裏話になるけど、第7話~第8話の時点で櫻花はノスの町にいた。尊人と早璃が商店街の散策をしたり、朝の町並みを楽しむ余裕があれば、会えたかもしれない。しかし、秘境者狩りが動いた為に、尊人達は早々に逃走をした。しかも、この時の秘境者狩りで櫻花は捕獲され(既に入団済みの知人がいた)、黒騎士団に降伏をした。

 言うまでもなく、第7話~第8話の時点で櫻花と合流していれば、尊人と早璃の物語は始まらずに終わっている。

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