智人-9・報復
調査の結果を聞いた俺は衝撃を受けた。リアルワールドから転移したクラスメイト達を捜索していた斥候が知っていた。ホーマン公が暗殺される前日に周辺を動き廻っていたのは、尊人と真田。そして銀髪の男。
まさか、別件の斥候から真相がもたらされるとは思わなかった。やはり俺は、見えない力に導かれているようだ。
「利用されやがって。バカなやつめっ!」
尊人に精鋭の隙を突く芸当があるわけが無い。ホーマン公を暗殺する理由も無い。やはり、目の届かないところに出すべきではなかった。
真田まで守る義理は無いが、尊人に害が及ばないように手配する“ついで”で守られることになるだろう。
「銀髪男の正体を探れ!
いや、オブシディア騎士団の関係者という証拠を掴め!
場合によっては捏造をしても構わん」
ホーマン公の仇討ちという大義名分があれば、西都市の軍隊を動かせる。北都市に侵攻をして、黒騎士団と交戦することができる。つまり、堂々と織田櫻花を手中に収めることができるのだ。
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ホーマン邸に白騎士団の幹部クラスとセイ軍の将官が集まり、今後の方針を相談する。
「・・・だがその前に。
騎士団長、アンタは職務怠慢の責任を、どう取る気だ!?」
ホーマン公の喪失を悼まなければならないタイミングでの糾弾は尚早。それは解っているが、パルー騎士団を掌握するために、早い段階で目の上のタンコブには退場願いたい。
「我が責任は、犯人を捕らえた上で誰の指示かを把握したあとで・・・」
「おいおい、まだそんな次元の話をしてんのか?団長様は、些か無能なのでは?」
「なんだとっ?新入りの秘境者がっ!」
「新参って事を否定する気は無い。だが、俺には相応の実績がある。
手引きをしたのはゴククア公爵の手の者。
銀髪で長身の青年が、前日に現地の下見をしている」
「なにっ!?」
「現場から離れた俺ですらこの程度の情報を得ているのに、
ホーマン公の死に立ち会ったアンタは、いったい何をやっているんだ?」
「・・・くっ!」
斥候から得た情報は今まで秘匿した。言うまでもなく、皆の前で情報を出して、俺の有能さを証明し、且つ、団長の面子を潰すためだ。
「アンタは長年お世話になったホーマン公の御霊に、どう報いるつもりだ?」
「・・・それは」
「ゴククア公爵の首を捧げるくらいのことはしなければ、
ホーマン公や軍部、そして残されたシリーガルとバクニーは納得しないぞ」
「ゴヨク・ゴククアを倒せというのか?」
「最低限、それくらいはしてもらわないとな。」
「・・・だがっ!」
「ならば逆にアンタに聞きたい。
『泣き寝入りで済ます』とシリーガルやバクニーに説明するつもりか?」
「・・・わ、わかった。ゴククアを倒せば納得してもらえるのだな?」
「パルー騎士団の名は背負わず、あくまでもアンタの独断でな」
騎士団長がゴククア公爵を討ってくれればそれで良い。だが俺は、討てるとは思っていない。これは、俺が用意してやった無能な騎士団長様の最後の花道だ。重要なのは俺の手を汚さずに歯車を動かすこと。
オブシディア騎士団の者が暗殺者を手引きしたという情報だけで、明確な証拠が無ければ争いには持ち込めない。だから、騎士団長にパルー騎士団とオブシディア騎士団の一触即発までを演出してもらう。その後は俺に任せてもらえば良い。存分に英雄としての働きをしてやる。
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数日後、ゴククア公爵の暗殺は失敗に終わり、騎士団長は討たれた。ホーマン公暗殺の前日に宿場町にいた斥候には、事前に騎士団長の監視を命じておいた。騎士団長を討った者は、銀髪の黒騎士。あの日、尊人達と共に西の宿場町にいた男。ブラーク・ライサンと言う名らしい。
「これで繋がったな」
先ずは、銀髪男の引き渡しを求める。銀髪男の独断ならば処刑台に送って終わりだろうが、そうはなるまい。単独犯なら、自分でホーマン公を仕留めたはず。それをせず、暗殺者を手引きして、且つ、尊人達を隠れ蓑にして現地を入念に見て廻ったのは、「ホーマン公を暗殺しろ」という任務を確実に果たす為。つまり、銀髪男にとっての忠義の対象が指示をしたからだ。
「頃合いか」
ホーマン邸の広い庭には、「騎士団長死亡」を知った白騎士達が集まっている。俺は、俺の駒となる連中を一定時間焦らした上で、屋敷を出て彼等の前に立った。
「もはや、俺達がやるべきことは1つしか無い!」
先日の幹部会議では、少なからず穏便に済ませたい者が存在した。だが、騎士団長が報復に動き、志半ばで倒されたことで、「事勿れ」は発言できなくなった。
「主を失い、騎士団長を失い、このまま黙っていることはできない!」
今はまだ、報復軍を鼓舞するだけの代理リーダー。軍の忠誠は、無きホーマン公と、ホーマン夫人のボウインさんにある。だが、この戦いで大きな実績を上げれば、西都市の軍事力は俺が掌握できる。
「ゴヨク・ゴククアと北都市軍に我らの力を示し、
奴等の愚かさを地獄で懺悔させる!」
西の英雄チートは、モーソーワールドの英雄として名を轟かせる。俺の才能が有ればそれはできる。北都市と黒騎士団に所属する転移者を飲み込む。帝都で転移者のリーダー面をしている藤原や、東都市の青騎士団に所属する転移者など、吹けば飛ぶような存在になる。
「パルーの騎士達よ!俺に付いてこい!!」
「おう、おう、お~~~うっっっ!!!」×たくさん
俺は気付いてしまった。ホーマン公の死は必然。恩義で俺を縛る者がいなくなり、翼を広げて大空に羽ばたく時が来た。




