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19-5・戦力外通告

「ミコト、オマエは戦い方がまるで成っていない。

 サリがいなければ、ここまで生き残ることすら難しかっただろう」


 言われなくても解っている。でも、今まではいつも優しかったブラークさんから、こんなキツいことを言われるとは思わなかった。


「尊人くん頑張っているんだから、そんな言い方をしなくても・・・」

「『頑張っていない』から言っているんだ。

 今のままでは、ミコトだけでなく、共にいる君も死ぬぞ」


 メッチャ辛辣。「僕が死ぬ」以上に言われたくない言葉だ。藤原くんから「隣に立ってくれる奴すら守る気が無いのか」と言われたことを思い出す。


「この盾を持っていけ」


 ホブゴブリンが持っていた小さい鉄の盾を剥ぎ取って僕に差し出した。ブラークさんは、ゴブリンが装備していた大きなハンマーを持つ。


「宿場町まではあと少しだ。急ごう」

「・・・はい」


 その後は無言のまま、「僕に何が足りないのか」を考えるけど解らないまま、アンさんに付きまとわれて「ウザい」と感じ、時々真田さんに牽制をしてもらいながら、西の宿場町に向かう。



 西宿場町ミドオチスに到着後、冒険者ギルドに行ってホブゴブリン討伐が完了したことを報告をする。ブラークさんに教えてもらって初めて知ったのだが、モンスター討伐は、薬草集めとは違って近隣都市間での共通の依頼の為、受注と報告が別の場所でも問題無いらしい。報告を受けたギルド職員が馬を走らせて現地に行って確認をした後に、依頼は達成の扱いになる。


「ミコト様!今宵こそは我が家にっ!精一杯のおもてなしを・・・・」

「しつこいっ!お呼びじゃないっ!帰れっ!」


 アンさんと別れ(真田さんが無理矢理引き離した)、宿を決めたあと、僕と真田さんはブラークさんに呼び出されて、宿場町の外に出た。


「サリ、その胸当てとブレスレットを見せてもらえないか?」

「・・・はい」


 真田さんは、装備した状態でブラークさんにガン見されるのは抵抗があるらしく、銀の胸当てを脱いで渡した。ブラークさんは、銀の胸当てに触れ、軽く叩き、中央に着いた宝石を眺める。


「素材は外地の金属。この技術、おそらくはドワーフが作製した鎧だな」

「どわーふ?外地に住む種族でしたっけ?」


 セイの町に、凄く綺麗で耳が尖ったエルフって種族がいたことを思い出す。


「物理ダメージだけでなく魔法ダメージの軽減と、魔石による魔法補助。

 そして、ブレスレットの魔石への魔力伝達。

 攻防を兼ね備えた非常に優れた防具だ」


 銀の胸当ての検分を終えたブラークさんが、真田さんに返す。


「そんなに凄い鎧なんですか?」

「ああ。たいした逸品だ。

 その胸当てを活かす戦い方を心掛けるだけで、直ぐにでもワンランク強くなる」

「マジで?」


 真田さんが、ちょっと機嫌を直して話に食い付く。


「異世界から来て僅か数日で、あれくらい魔力を練られれば大したものだ。

 掌に魔力を溜めるのではなく、

 丹田から鎧の宝石に魔力を集めるように意識しろ。

 それだけで、今まで以上の魔力を発せられるようになる」


 創作物全般あるある(再確認)

 美少女キャラは優遇され、作中で明確な設定が無いまま「露骨なキャラ補正」という神スキルを発動させる。且つ、作者に「自分を投影させた主人公に無双させる」という思惑がある場合を除き、「主人公補正<美少女補正」になることもある。「何故、そんなに優遇されるのか?」の理由は、「作者が贔屓しているから」としか説明できない。


「やってみます!」


 真田さんが気合いを入れて深呼吸をする。


「力まず、自然体で、『自分にはできる』と己を信じるのだ」

「はいっ!」


 さすがはブラークさん。さっきまでは文句を言う気満々だった真田さんの信頼を、シッカリと得たようだ。


「さて・・・問題はオマエだな、ミコト」

「・・・はい」


 戦力外通告を覆せるのだろうか?不安で仕方が無い。


「最も得意な戦い方でかかってこい!」


 ブラークさんが、鞘に収められたままの剣を構えた。

 動揺はある。だけど、ブラークさんのすることに間違いは無い。「これは僕のため」と解釈して、鞘に収めたままの剣を握り、甲羅の盾を正面に構えた。


「わぁぁっっっ!」


 唯一の必殺技(?)、シールドアタックの体勢で突進!


「攻撃されることを怖がりすぎだ!それでは正面も満足に見えておるまい!」


 闘牛士に軽くあしらわれる牛のようにアッサリと回避され、背中に剣(鞘付)の一太刀を叩き込まれて弾き飛ばされる!


「くっ!」


 さすがはブラークさん。僕の必殺技が通用しないなんて・・・ってわけではない。悔しいけど指摘されたことは理解できる。シールドアタックは、藤原くんにも通用しなかった。

 盾の中に体の大半を隠し、相手が何となく見える状態で突っ込む。それでは、相手がどう動くのか把握できずに、回避やカウンターに対応できない。


「相手をちゃんと見るためには、盾から顔を出さなければならない。

 ・・・解ってるんだけど」


 盾と剣(鞘付)を握り直し、気合いを込めて再突進をする!ブラークさんは僕の顔目掛けて剣を水平に振るった!


「ひぃっ!」


 慌てて盾を上げて顔を隠したので、ブラークさんの剣は盾に弾かれる!しかし、直後に足を引っ掛けられて無様に転倒!起き上がるより前に、眼前に鞘先を突き付けられた!


「どうした?これで終いか?

 それでは、オマエは近いうちに必ずサリを失うぞ」


 盾の中に全身を隠せば相手が見えない。顔を出せば顔を狙われ、顔を隠せば足元を狙われる。


「だったらっ!」


 顔が狙われた時に、盾を上げて顔を隠すのではなく、顔を下げて盾に隠れる。それなら、剣閃を回避できる。・・・そんなんでシールドアタックが決まるとは思えないけど、気が焦って上手く解消する手段が見付けられない。


「わぁぁっっっ!」


 3度目の突撃!突っ込みながら気付いた!僕が接近するまでの間に、ブラークさんは剣を腰に戻して、先ほどゴブリンから強奪した大ハンマーに持ち替える!そして、頭や足元ではなく、盾の真芯目掛けて、目一杯の遠心力をかけて振り切った!


「うわぁぁぁっっっっっ!!」


 盾ごと弾き飛ばされて尻餅をつく。回避をされる、頭を狙われる、足元を狙われる。そして盾そのものを狙われて、シールドアタックの根底を崩される。これでは、攻略法なんて見付けられない。


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