18-4・藤原くんの思惑
ところで、真田さんはなんでここにいる?僕がどこにいて、どの道で帰るかなんて解らないだろうに。
「藤原に文句言ってくるっ!」
なるほど。僕に会うんじゃなくて、藤原くんに会うつもりだったのか。この鉢合わせは不運だったわけね。いや、僕の知らないところで話が拗れるよりマシってことで、むしろ運が良いのかも。
「あたし、前にも言ったよね!
『守ってもらいたくて一緒に行動してるわけじゃない』ってさ!」
「うん・・・そうなんだけど・・・」
「あんなヤツと仲良くする必要なんて無いよ!
無視すれば良いだけじゃん!」
真田さんは、「僕がハブられるなら僕に付いてくる」と言ってくれている。その気持ちは嬉しい。僕だって、それで済むなら藤原くんとは絡みたくない。だけど、それじゃダメなんだ。力の有るグループに参加して、安全で効率的に仲間達を集めて、現実世界に帰らなきゃならない。
「ねぇ、真田さん。僕等だけで行動すればリスクは上がるよ」
「それがなに?今までだって2人で何とかしてきたじゃん!」
「せっかく沼田さんに会えたのに、沼田さんのことも無視しちゃうわけ?」
「・・・そうじゃないけど」
「まさか、リスクが上がるって解ってるのに、
沼田さんを僕等側に引き抜くわけじゃないよね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「一緒にいられる方法を探そうよ」
「・・・う、うん」
良かった。少しは機嫌を直してくれたっぽい。
「とりあえず、僕が戦えばハブられずに済むんだろうし、
近藤くんから聞いたけど、大怪我しても沼田さんが直してくれるんでしょ?」
沼田さんが頷いてくれた。沼田さんの特殊能力は「即死以外は直す」で間違いなさそうだ。
「なら、なんとかなるでしょ」
「でもやっぱり、藤原と戦うってのは不満っ」
僕自身、さっきまでは不安だった。だけど、レンタルの発動待機の使い道が解った現状では「勝てるかもしれない」って一定の自信がある。その成果を見せたくて、真田さんと合流を急いだんだからね。
「アイツってさ・・・いつも、喧嘩の時、相手にハンデ与えるの。
『武器使って良いよ』とか『何人でかかってきても良いよ』とかね」
「ああ・・・そうなんだ?」
モロに今と同じ状況だ。
「それで、相手の方が絶対に有利ってゆーのを演出すんの。
そーすると、どうなると思う?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
喧嘩をしたこと無い僕でも解る。その状況で藤原くんが勝てば、みんなは「藤原くんは凄い」って思うし、負けた人は「あんなにハンデもらったのに負けた」って恥をかく。仮に藤原くんが負けたとしても、みんなは「ハンデがあるんだから負けても仕方無い」って思うし、勝った人は「正々堂々と戦わなくてズルい」と恥をかく。
「余裕で勝てるって思うくらいのハンデをもらってるんじゃないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「アイツの、『自分を良く見せる』演出や『俺、凄いでしょ』感がムカつくの」
この勝負は、どう転んでも僕が恥をかかされる?勝っても周りからセコい認定されて、負ければまるっきり面子を潰されるってこと?
ハンデがあっても藤原くんは勝つ自信がある?レンタルの発動待機を切り札にして勝っても、僕が損をする?
「売り言葉に買い言葉で喧嘩するなんて、尊人くんらしくないのにさ・・・
まるっきり、ふーみんの作戦に嵌まってんの」
「・・・僕らしくない?」
僕らしいってなんだろ?喧嘩をふっかけられてもヘラヘラ笑って誤魔化して逃げること?敵うわけが無いってサッサと謝ること?それが「僕らしさ」だったら情け無いって言うか、どっちも違う気がする。
「真田さん・・・ありがとう」
まだ見えていないけど、不安と焦りで「僕らしい」を忘れてるっぽいことは解った。
「えっ?」
「藤原くんには文句言わないでね。この勝負は止めなくて良いよ。
『僕らしさ』ってゆーの・・・考えてみる。
ちゃんとできるか解らないけど、『僕らしさ』で戦ってみるよ。
だから、僕を信じて」
「うん。尊人くんがそこまで言うなら」
真田さんにレンタルによる特殊スキルの連続使用を見てもらうのは中止。戦いの時間までは、あと2時間くらいかな?僕は「僕らしさ」を模索することにした。
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太陽が地平から10度くらいまで傾いた。日没まで、あと1時間くらい。
先生の剣を背に装備して、小さな斧を腰布に縛り付け、リザードマンから強奪した甲羅の盾を持って準備完了。機動力を重視する為に革の鎧は装備しない。
真田さん&沼田さんと共に宿から出て、藤原くんが指定した西の壁門へと向かう。
門の外に到着したら、既に藤原くんが待っていた。近藤くん&吉見くん&土方さん&鷲尾くんの姿もある。
藤原史弥。出席番号28番。帰宅部。ただし空手道場に通っていて、相当強いらしい。細マッチョな体型で、クラスで3番目に身長が高い。クラスどころか、学年で存在感と発言力が一番ある。勉強の成績は下の方。体育の授業にもあまり積極的には参加していない。ちょっと恐い力石先生が僕等のクラスの担任になったのは、藤原くんを抑える為って噂がある。
スクールカーストという分類はあまり好きでは無いけど、間違いなくトップに君臨する男子。この世界に来ることが無ければ、絶対に接点を持つことはなかった。
「逃げ出さなかっただけでも褒めてやるよ」
藤原くんの魂胆を把握する。凄い藤原くんと、情け無い僕を演出する為には、立会人は多い方が良い。
「やっぱり・・・みんなの前で僕の面子を潰すのが目的なんだね」
ぶっちゃけ、藤原くんや近藤くんに「腰抜け」と思われても構わない。沼田さんや土方さんや鷲尾くんに「所詮はこの程度」と思われても気にならない。僕は「その程度」なんだから、格好を付けて「変な背伸び」なんてする気は無い。
「僕はヘタレだけど・・・」
ヘタレなりの意地を見せたい人がいる。情け無い姿ばかり見せたくない人がいる。
「藤原くんが想像しているよりは強いよ!」
背負った剣を抜刀して構える。
「富醒発動!レンタルっ!
アーマーファンブル、アジリティ選択!」
鷲尾くんは目に映らない速さで動いて3体の残像を作ったけど、僕は目でギリギリ追える速さで動いて1対の残像を作るのが限界だった。
「アジリティ発動!!」
藤原くんの目の前に残像を作り、10mくらい移動をする。
「アーマーファンブル発動!!」
藤原くん達が僕の移動を認識して目で追った時には、僕は大木を切り倒していた。
「これが僕の特集能力。
近藤くんのファンブルと、土方さんのウインドミルと、
鷲尾くんのアジリティを組み合わせて戦うからね」
「テメーっ」
藤原くんは少し驚いた表情をしている。
「先に手の内を明かすのは、ハンデをくれる藤原くんへの僕なりの礼儀だよ。
近藤くん達が『返せ』って意思を表明すれば、僕には使えなくなるから、
ヤバいって思うなら、そうしても良いよ」
「調子にのんなよ、ヘタレ」
藤原くんが刀身がやや短くて幅広の剣を抜刀した!
僕は、次は木ではなく、藤原くんに向けて剣を振るうつもりで構える!




