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17-1・一気飲みはやめましょう

 僕はアルコールなんて飲んだことがない。飲もうと思ったことも無かった。だけど藤原くんが勧めてくる。


「・・・お酒抜きで話がしたいんだけど」


 これが精一杯の勇気。ホントは話すのも怖いんだけど、そこは受け入れるからお酒はパスさせてほしい。


「あ゛ぁっ?酒も飲まねーで本音トークができると思ってるのか?

 それとも、俺に話す本音なんて無ーってか?勇敢な色男さんよぉ!」

「史弥、酔いを覚ませ」

「酔ってねーよ!」


 近藤くんが制するけど、藤原くんは聞く耳持たず。


「・・・わ、わかったよ。飲めば良いんだね」


 メッチャ飲みたくない。でも飲まないと場が納まらないっぽい。


「源くん、酒飲めるの?」

「わかんない」


 吉見くんが気を使ってくれるけど、こんな生活レベルのことで助けを求めるようなヘタレにはなりたくない。恐る恐る、目の前に置かれたカップに手を伸ばす。だけど、僕がカップを掴む前に、後から伸びてきた小さい手がカップを掴んだ。


「バッカじゃないの?そんなの飲めても、全然格好良くないよ」

「・・・真田さん?」


 後に真田さんが立っていて、お酒の入っているカップを奪い取る。 


「この世界に来て頑張ってんの、藤原(ふーみん)だけじゃないのにさ。

 尊人くんだっていっぱい頑張ってるのにさ。

 なに『俺は凄い』みたいにイキってんの?」


 真田さんがカップに口を付けてガブガブと飲みはじめた。


「真田さんっ!?」


 止めようとしたんだけど、あっという間に飲み干して、空いたカップをテーブルに置く。この光景に驚いているのは、言うまでも無く僕だけではない。吉見くんや近藤くん、そして吹っ掛けてきた藤原くんも目を丸くして驚いている。


「おえっ!まっずいっ!・・・飲んだよっ!これで文句ないんでしょっ!」

「真田さん・・・お酒、飲めんの?」

「しらない。初めて飲んだ・・・おえっ

 尊人くん、夜ご飯、違うご飯屋さんで食べよ」

「・・・でも」

「このお店で食べたら、不味くなりそう」


 真田さんが踵を返して、出口に向かって歩き出す。・・・が、3歩ほど進んだところで引っ繰り返った。


「真田さんっ!」


 僕だけじゃなくて、吉見くんと沼田さんも寄って来て、真田さんを介抱する。


「きもちわる~い・・・あたまいたぁ~い・・・」


 意識はあるけど混濁中。酔い潰れてしまったみたい。


「この近くに宿ある?そんなに高くないところが良いんだけど」

「私達の屋敷は?」

「ちょっと遠い。早くちゃんと寝かせてあげたい」

「そっか・・・そうだね。

 5分くらい歩けば、私が土方さん達と合流する前に泊まってた安い宿が・・・」

「案内してもらっていい?」


 真田さんを座らせて、後から沼田さんに支えてもらいながら背負って立ち上がる。背後からの視線がメッチャ痛い。見たくないんだけど、それはそれであとが怖いので振り返る。案の定、藤原くんが「今すぐ取って食う」と言いたそうな視線で僕を睨み付けていた。


「ごめんね、藤原くん。明日、ちゃんと話そうね」


 藤原くんが腰を上げようとしたけど、近藤くんが肩に手を置いて留める。


「オマエの負けだ。解ってんだろ?」

「・・・チィ」

「吉見、付いてってやれ」

「うん」


 案内役の沼田さんだけではなく、近藤くんの提案で吉見くんも同行してくれることになった。


「トロールにやられた僕を町まで運んでくれてありがとう。

 じゃあ・・・また明日。朝になったら、藤原くん達の家に行くね」


 言ったものの、本心では行きたくない。可能なら真田さんを連れて、このまま帝都から出て他の町に行きたい。


「・・・待てよ」


 藤原くんが呼び止めて、ポケットから3枚の銀貨を出してテーブルの上に置く。


「トロール討伐の礼金だ。

 均等割ではなく活躍度で按分したオマエ等2人の取り分な。宿代のタシにしろ」


 チョット意外だった。トロール討伐のお金なんて貰えるとは思ってなかった。分け前だけで超高額。薬草採取の礼金とは比較にならない。

 もしかして、藤原くんって、ちゃんと話すと良い人?今まで接点を作らなかっただけ?警戒しすぎて勝手に「怖い」って想像していたのかな?


「ありがとう・・・じゃ、また明日の朝ね」


 背中にベッタリと凭れ掛かる真田さんの温もりを感じつつ、吉見くんと沼田さんに付き添われて酒場をあとにする。


・

・

・


「おぇ~~・・・きもちわるいよぉ~~~~」

「大丈夫?無茶しすぎだよ」

「なんかごめぇ~~~~~ん」

「僕の背中で吐かないでね」


 真田さんが唸りながら謝罪をする。でも、真田さんに助けてもらったんだから、謝られる理由なんて無い。真田さんが割り込んでなかったら、僕が酔い潰れてたかもしれない。


「早璃ちゃん、お子ちゃますぎっ!

 助け合わなきゃなんだから、もう少し大人になろうよ」

「だって、ちょうムカつくんだもん」


 沼田さんが取り繕うけど、真田さんは頑なに受け入れない。人懐っこいはずの真田さんがこの調子だと、藤原くんとの関係については、多分、僕が大人になって接しなきゃなんだろうな。上手くできる自信は無いんだけど、真田さんのおかげで、少し勇気がもらえた気がする。

 

「真田さんが、こんなに無謀とは思わなかったよ」

「・・・ははは。まぁ・・・・うん・・・」


 吉見くんの真田さん評については笑って誤魔化しておく。真田さん、そこそこ無謀です。だから意気地無しの僕は、煽られて頑張れています。


 ちなみに・・・その後、宿に到着する直前で、頭の上でゲロを吐かれました。二度と一気飲みはしないでね、真田さん。


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