勇者の褒賞
先日、勇者一行が魔王を討伐し無事王都に帰還した。
メンバーは、勇者アレン、魔法使いレイド、聖騎士プラント、そして第二王女の聖女カトリーナだ。ちなみに、アレンは辺境伯家の次男、レイドは侯爵家の三男、プラントは平民である。
凱旋パレードは正午から王都中央通りにて始まった。勇者達を一目見ようと朝から街道は人で埋め尽くされていた。勇者たちの乗った屋根のない大きな馬車が目の前を通り過ぎると、群衆から熱い声援が発せられた。「カトリーナ様万歳!」「勇者ありがとう!」「レイド様素敵!」「プラント!平民の希望!」民たちは思い思いに叫んでいた。
大歓声に包まれながら、一行は王宮へ進んでいった。
凱旋後、王城で国王への謁見が行われた。
「此度の魔王討伐まことにご苦労であった。国の危機を救ってくれたこと感謝する。君たちは我が国の英雄である。できる限りの十分な褒美をだす予定だ。何か希望はあるか」
「発言してもよろしいでしょうか」アレンが言った。
「かまわぬ」
「私に、いえ、私たちに、魔族に奪われていた辺境の土地をいただけませんでしょうか。辺境伯領は以前は東西に広く分かれていますが、東の一部を魔族に奪われてしまい数十年たってしまいました。魔王を倒したことで、やっと魔族から取り戻すことはできましたが、魔森は残っており、今後も魔族の残党による反乱の危険性もあります。そこで、その地に移り住み、この国の砦として守り続けたいと思っています」
「私たち、とは?」
「はい、私アレンと、レイド、プラントの3人です。私たちの望みは同じです」
「…勇者アレンはもともと辺境伯家の者であるが、魔法使いレイドは侯爵家で聖騎士プラントは平民だが、2人とも王都近郊の生まれだろう。君達は魔法使い、剣士として素晴らしい才能の持ち主だ。君達にも相応の爵位を与え、我が国の人材育成のため王都に残ってほしいと考えていたのだが…辺境へ行くことを希望しているのか」
「「はい」」
「そうか。国のためにその生涯を尽くそうとするその気持ち、気に入った。しかし、勇者アレンよ、我が姫であり聖女カトリーナとの結婚も考えてはもらえんか。姫は聖女であり、他国に嫁がせることはできぬ。魔王討伐の旅のため結婚適齢期もとうに過ぎてしまった。このままでは教会がうるさくなる」
「恐れながら、発言してもよろしいでしょうか」アレンが再び言った。
「かまわぬ」
「私は、この旅を通してカトリーナ様を愛するようになりました」
「では!」
「しかし、それは私だけではありません。レイドも、プラントもです。私だけ姫と結ばれるわけにはいきません。私達は兄弟と言っていいほど固く結ばれた関係です。2人の幸せこそが私の幸せになります」
「そう、なのか。レイド、プラント」
「はい。カトリーナ様はいつも私たちを支えてくれてくれました。時には叱責してくれて、励ましてくれて、カトリーナ様のあたたかな包容力に私は助けられてきました。カトリーナ様がいなければ魔王討伐は成し遂げられませんでした。私は、心からカトリーナ様のことをお慕いしております」
「私は平民ですが、カトリーナ様は分け隔てなく接してくださりました。カトリーナ様のお声に、笑顔に、存在にいつも救われ、剣を今日まで振ってこられました。身分不相応なのは分かっておりますが、私もカトリーナ様を愛しています」
「…カトリーナ、お前の気持ちはどうじゃ。お前もこのこの国の英雄の一人だ。お前の希望も聞きたい」
「私は、アレンを愛しています」
「ほう!」
「そして、レイド、プラントも比べられないくらい愛しています。私は命を預けあうこの旅を通して、3人を深く深く愛してしまいました。3人のうち1人を選ぶことはできません。私はアレン、レイド、プラントの3人と離れたくはありません。もし私の希望も聞いていただけるのであれば、4人での結婚を認めてくださいませんか。たとえ認められなくても、私は聖女であり、この国の姫。この国のために生涯尽くさんとする気持ちは誰にも負けません。私も、アレンとレイドとプラントと共に辺境の地へ行き、我が国を守りたいと思います」
「勇者アレン等も同じ気持ちということか」
「姫と、私たちの結婚を認めていただけるのであれば、これ以上の幸せはありません」「「ありません!」」
「…そうか。では許可しよう。わが国を救ってくれた英雄達からの頼みである。魔族に奪われていた辺境の土地はいったん王領になっている。そこを公爵領として与えるため、砦の機能を担ってほしい。ただし、カトリーナを公爵とする。現在我が国は、伯爵家以上の当主であれば側室も認めている。カトリーナが当主となれば、3人との結婚も法律的には問題ない。今後も、我が国のため引き続き力を貸してくれ!!そしてここからは姫の父としての言葉である。カトリーナをよろしく頼む」
「「「はっ。国のため、王のため精一杯務めさせていただきます。そして、姫を幸せにします」」」
夜、王宮では、貴族達が集まりパーティが開かれていた。勇者たちへの褒賞については、開会宣言の際に王から伝えられた。勇者達を取り込もうと考えていた貴族たちは、3人全員が辺境に行ってしまうことを嘆いた。魔王をたった4人で倒した英雄達。その英雄達を1か所に集めておくことに対する危険性を危惧する者もいたが、国のために尽くしたいというアレンたちの気持ちに大きく心を打たれていた王はそれを一蹴した。数日後には王宮を立つことになる姫は、友人たちと会話に花を咲かせている。
アレン達はパーティを抜け出し、バルコニーで夜風にあたっていた。
「アレンの計画通りうまくいったな。ありがとう」
「いや、姫はとても愛情深い方だ。俺一人では手に余るからな。しかし、君たちも物好きだ」
「俺はあの包容力、圧迫感があればなんでも許せるからな」
「私も、彼女の声、表情、全てが私を虜にさせます。そして何といっても」「プラント」「あ、なんでもないっす!カトリーナ様は最高っすってことです!」
「プラント、これからは言葉を選ぶようにな」
「はっはっはっ!プラントは馬鹿だな~」
「すいませ~ん」
「俺たちは兄弟だ!これからも力を合わせて頑張ろうな」
「まずは瘴気を姫に払っていただいて、俺たちの寝床づくりだ」
4人は幸せに暮らしました、とさ。
深い意味はありません。




