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#25 江野畑の帰り道

私は江野畑茂枝えのはたもえ。学校では普通の女子高生だけど、ネットではたくさんの人から見られてる人気者。いつもは、山田っていうクラスメイトに絡まれてるんだけど、今日の授業であいつにとっての幸せが「自分がいいと思うもののありのままの姿で眺めること」さらに言えば、「それを誰かと共有すること」だってわかった。...あいつにはたまに写真撮らせてあげたり、あいつがおすすめのスポットで写真撮ったり、そこで一緒にゆっくりしてあげてた。だけど、そんな理由で私のこと誘ってるのかと思ったらすごくムカついたから、今日はあいつとは帰らないで一人で帰ることにした!

学校からの帰り道、最近はなんでか買い食いをする気分じゃなかったけど、今日になっていきなりお腹が空いてきた!それもこれも、全部山田のせいだ!私のことを「綺麗なもの」とでも思っているのか、それとも「いいと思うものを共有する相手」だと思っているのか知らないけど、気安すぎる!私は特別な存在なんだから、もっと感謝されるべきなのに!あいつはいっつも交渉してくるし、私の言うこと聞かないし、まるで対等みたいに扱ってくる!本当に私のことなんだと思っているんだろう!

「あいつ本当に...人のことなんだと思って...」

ムカつきながら、道を歩く。

大体、あいつは会った時から私のことを対等みたいに扱ってムカついてた!今までそれを我慢してたのは、あいつがいないとほかに私のこと撮ってくれる人がいなくて...あいつが綺麗だって言った景色も悪くはなくて...あいつは別に私のこと尊敬はしてないけど、交渉するってことは軽くも見てないし...私のこと否定しないし...むしろ、すごいって褒めてくれるし...

「…」

...よく考えたら、別にあいつは私のことを「綺麗なもの」として見てても「いいと思うものを共有する相手」として見てても、それは特別なんじゃないの?

「… …」

いや!でも!それでもあいつはムカつく!私に自分の価値観押し付けて!自分が満足するために私を利用して!私の優しさに対して「ありがとう」も言えないし!本当にひどいやつ!

「… … …」

自分の価値観の押しつけでいえば、写真を撮ってもらっておいてそれが当たり前みたいに言う私のほうがひどいんじゃ...あいつだって一応時間と手間をかけてくれたわけだし...

「バカ...」

はぁ~~、なんでこんなことになるんだろう。あいつがもっと素直に言ってくれたら、私だってもっと素直に言えるのに。それとも、あいつは素直に言ってあれなのかな?だとしたら、もうちょっと執着してほしいな。仮にも特別だと思ってるんならなおさら。

「… … …」

こうなった原因はわかってる。非は私にしかない。でも、そんなこと認められない。それを認めたら…

「嫌だね。ほんと...とりあえず、今日の写真だけでも撮っておこ」

あいつもいないし、そんな暗いことを考えるのは今じゃなくていい。適当に写真だけ撮って載せよう。

「これでいいや」

被写体に選んだのは御神木。ちょうど神社の前を通ったので一番インパクトがある御神木を撮影することにした。...私の顔が写らないけど、これはこれで綺麗だろう。タイトルは、「ただそこにある木」

別になんてことはない木ではあるが、長生きしているからか力強さを感じる。...写真を上げてから数分経った。いつもよりいいねが断然少ない。まあね、みんな私の美貌を見たいわけだし、当然といえば当然だけど。コメント欄には、「なんでいきなり木?」「これのどこがいいの?」「いつもの綺麗な顔みたいな!」「匂わせですか、レベルが高いですね」「こういう自然もたまにはありだよね!」といったコメントがいくつか並んだ。

「そんな嬉しくない...」

あいつが綺麗だと思いそうなものだったけれど、反応は良くない。じゃあなんであいつはわざわざ自然を綺麗だと思うんだ。みんなに認められないんじゃ、撮る意味ないじゃん!おまけに私が写ってないから不満の声も出てきたし。ちょっと適当に木を撮ってみたけどあいつの真似なんかするんじゃなかった…

そう思っていた時、後ろから声をかけられた。

「お、江野畑。別々に帰ろうって言ったのに、まだここにいたのか。お前歩くのそんな遅かったっけ?」

相手は今、一番話しかけてほしくない山田だった。こいつ!誰のせいで私がこんな思いをしていると思ってるんだ!

「別に歩くのが遅いわけじゃなくて、写真撮ってただけだから!」

「へ~、何の写真?」

山田にそう聞かれて、少しだけ動揺する。でも、ここで答えないとこいつはずっと聞いてくる!軽く答えるだけにしよう。

「その...そこの木撮ったの!なんか、気が迷って...」

気が迷ったことには違いない。嘘はついてないので早く会話を終わらせてほしい。

「そうか、お前が理解し始めてくれたようでうれしいよ!...へ~、この写真いいじゃん!やっぱり、お前は写真撮るのうまいよな!」

「そうだね...ありがと...」

若干照れながらもなんとか会話を成立させた!よし、すぐに立ち去ろう。こいつと今いるのは色々よくない。そう思って足早に神社を跡にしようとする。

「あ、境内で賽瓦たちが本読んでる」

山田がそう言うと私は急いで神社に戻り境内を見る。だが、すぐに期待していたものではないと理解した。確かに、三河さんたちが本を読んでいるけど、ただそれだけじゃん。あの人たちが一緒にいるのはいつも通りだし。イチャラブを期待したんだけどなぁ…

「いいよな、ああいうの。めっちゃ仲良くて」

彼女たちを見て山田がそう話す。

あれが??傍目にはただ本を読んでいるだけに見えるんだけど…

「なんだお前、気づいてないのか?よく見ろ。お互い肩をくっつけてるだろ。つまりそういうことだ。これ以上あいつらを見るのは失礼だし、早く別の場所に行こう」

そう言いながら山田が私の手を引っ張る。

え、肩をくっつけてるって?と言おうと思った時にはもう山田が歩き出していた。仕方なく私もそっちに向けて歩く。...こいつのこういう強引なところとかさぁ...いや、考えないほうがいいよね。特に今は。

どこに行くのか知らされていないが、私は買い食いしたいから、繁華街に行きたいな。空も赤くなってきたし早めに

「ねぇ、あんたどこ行く気?」

「え?うちに帰る気。江野畑は?」

山田がキョトンとしながら返す。

え?こいつ、本当にすぐ帰る気だったの?ここまでしておいて?余計ムカついた!絶対何かおごらせてやろう。

「あっそ。でも、私買い食いするから」

「そうか。じゃあ、気を付けて...」

「あんたも行くんだよ!マリトッツォを私におごりなさい!」

「えぇ~、お前いっつも俺になんかおごらせるじゃん!たまには俺におごれよ!」

「...何かおごったら、私にいいことある?」

「俺の腹が満たされる」

「交渉になってない!絶対おごらないから!」

「嘘だよ!三河たちのことでもう一つ気づいたこと教えるから!」

「何?それ次第だけど...」

「三河たちは...ずっと黙ってた」

...それが???ただ単に話すことがなかっただけじゃないの?そう思ったが、山田が「まあまあ焦りなさんな」みたいな表情をしてくる。やっぱムカつくなこいつ...

「三河たちは、俺たちがいるのに黙ってたんだよ。あの距離でも、俺たちの声は聞こえるはずなのに。しかもお互い肩をくっつけながら。つまり、ここからわかることは...?」

...あぁ~そういうこと!マジですか。本当に仲いいんだなあの二人。尊い!

「というわけで、教えたからマリトッツォおごってくれよ」

「仕方ないねぇ...」

その後、マリトッツォをおごってあげた後に、サイゼリヤで夕ご飯を食べ、山田が支払いをしている最中に手持ちの金がマリトッツォを買ったときにすべてなくなったことを告げて、この日は終わった。

山田はグチグチ言いながらもちゃんと全額払ってくれた。こういうところはいいところだと思う。

なんだかんだ楽しい帰り道だった。

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