08話 門での邂逅
門まで戻ってみると人だかりができていた。入ってくる人。出ていく人。確認をしているようだ。
「うーん。とりあえず、あの列に並んどくか」
「そうだね。たぶんこっちが出口側だからみんな出ていく人たちかな」
「そうなんじゃないか。逆側に行くにはここを通るしかないし、この列でいいだろう」
待っている間は暇だな。これがみんな冒険者なんだろうか。馬車に乗っている人とか、商人のような人もいるね。あれはなんだろう。大きな樽のようなものを持っているな。
「なんかすげー色んなひとがいるよな。どんなことしてんのかはまったくわかんねーけどな」
「そうだね。でも目的がないとこうやって出入りするのも大変だろうから重要な任務についているとかね」
「これから任務するときはいつもこんな感じで並ぶのかー。面倒この上ないぜ」
「仕方がないよ。そういう決まりでもあるんだろうから」
だんだん近づいていくと夜は見えづらかったけど、通ってきた場所は大きな城門のようだった。壁もしっかり作られていてモンスターからの襲撃に備えているんだろう。これだけの防備なら余程のことがないとピンチにはならなそうだね。
しばらくして順番が来たので事情を話してみる。
「昨日の夜中に門を通ったので通行証がないんですけど発行してもらえますか?」
「受付に誰かいたはずだが? お前ら不正に入ったんじゃないか?」
「そんなことはないです! 声はかけたんですけど、ここに誰もいなくて昨日冒険者になりたてで疲れていたのもあって、それで……」
お尋ね者と言われたことが引っ掛かって変に動揺してしまった。
「シオン、落ち着けって。お前らしくもない。門番のお兄さん、すみませんね。少なくとも昨日は誰もいなかったんだ。俺たちは任務を受けたくて通行証が必要って聞いたからここまで取りに来たんだ。だから通行証ってやつをください!」
「そうは言ってもな。居ないはずがないんだよ。当番制だし、しっかりその辺は管理している。誰もいない状況だとモンスターとかが来たときに対応できないだろ?」
「そうは言っても、居なかったんだからしょうがないじゃないか」
「はー、まったく。たしか、昨日の当番は……ドルガンだったな。おーい、ドルガン! 昨日はちゃんと門番やってたんだよな?」
「あー! そりゃもちろん!」
ものすごい大きな声で驚いた。
「だとさ。君ら不正に街に入ったってことで罰金ね」
「ちょっと待ってよ! 俺らガランさんに教えてもらって来たんだ。そう言わずに頼むよ」
「あー、ガランさんか。まったくあの人はまた適当なこと言って」
何か紙みたいのをめくっている。ガランさんのことが書いてあるのか?
「適当だけどあの人がいないと街が成り立たないしな。だけど、これで今月5回目か。さすがに多すぎるけど、君たちには関係ないから、あとでガランさんに言っておくよ。けど本当かどうかの確認はするから待っててくれ」
「ありがとう! 門番の人!」
「シルトだ。ったく調子のいいやつめ」
ユウマに助けられてしまった。僕はどうしてしまったんだ。
「シオン、気にすんなって。なんとかなりそうじゃんか」
「ありがとう。ユウマのお陰だよ」
待っている間にドルガンさんが来た。
「さっきは居たよって返事したけど、トイレに行っていたときは居なかったかもしれなくてな。シルトが戻ってきたら伝えておいてくれ。これ書き置き」
「わざわざ律儀なひとだぜ。だけど俺ら待たずに突破しちゃったからな。そこは変わんないだろ」
ユウマが冷静に受け入れるなんてね。ドルガンさんにはお礼を言って手紙を受け取った。
しばらくすると報告が来たようだった。
「待たせたね。確認とれたよ。ただ、不正は不正だ。罰金の半分は払ってもらうぞ」
「えー! そんなことは言わずに! ドルガンさんからも手紙もらったよ!」
シルトさんが手紙を読んでいる。
「確かにあいつの字だ。居なかった瞬間は、まぁ理解しよう。だけど不正は不正だ」
「しょうがない。けど、あの……今、ちょっと事情があってお金ないんですけど……」
「そこは冒険者だろ。稼いでから持ってこい!」
そう言いながら2人分の通行証をくれた。
「わかりました! シルトさん、ありがとうございます! 行こうぜシオン!」
「あ、あぁ……行こう」
まだ動揺が抜けない。冒険できなくなってしまうと考えただけで足がすくんでしまったようだ。
早く立ち直って任務を受けにいかないと。