05話 街への道のり
「シオン……、街まであとどのくらいよ……もう疲れたぜ……」
ユウマがもう限界だと言わんばかりに聞いてくる。辺りはすっかり暗くなっている。当たり前か、ダンジョンなんだし地下へ潜っていくんだからさ。思えば門番の人に止められたっけ。
*
「お前ら今から行くのか? はじめてならやめとけ。夜道のダンジョンは難易度高いぞ。そこに泊まれるところがあるから明日にしておけ」
ちょっと怖そうかな。今日は試験もあったし明日の方が良さそうだね。
だけど、ユウマがキラキラした顔でこっちを見た。
まずい。これは行くって言いそうだ。
「いやいや、今日行くしかないだろ! なんのために準備したと思っているんだ! 行くぞ、シオン!」
「いや、待ってよ。確かに準備したけど夜道は危ないって言ってるよ」
「ビビってんじゃねーよ! 俺たち試験を突破したんだぜ? モンスターもあんな感じならやれるって!」
やっぱりそうなるか。冒険者になりたくてここまで来たんだし、先に進みたいよね。
ふと、門番の人の顔を見ると呆れていた。
「あーもう君たち、行く気ならこれ以上止めないけど、あとで後悔しても知らないからな」
*
門番のおじさん。ごめん。ちゃんと聞いておけばよかったよ。こんな暗い中歩くのは確かにしんどい。少し肌寒く、よく分からない音がこだましている。鳴き声っぽいのはモンスターだろうか。風の音や木々の揺れる音が不気味に感じる。何かが出てきそうな、そんな空気を感じる。だけど遠くに街の明かりが見えるのがまだ救いか。
「もう少しだから頑張ろう。僕が明かりをつけるからさ」
そうは言ってみたけど、うまくいくだろうか。火を着けるのはできる。火力の調節ができない。辺り一面火事にすることはないだろうけどさ。松明を作ろうにも布も油もないから本当に手元で火を起こすだけだ。
ボッ!
よし! うまくいった。練習のときよりもうまく扱えてる気がする。紋章のおかげかな?
何とか明るくなってほっとしたユウマの顔が見える。明るくなって周りが少し見えてきた。明るいっていいなぁ。
ん? あの影のところに赤い目?
!?
「ユウマ! 危ない!」
急に何かが飛びかかってきた。辛うじてユウマを突き飛ばして直撃は避けられた。急いで身体強化のスキルを使う。辺りを見回しても何もいない。また背襲モグラか? いや、違う。もう少し小柄で地面を這っていたような。
「シオン! 上だ!」
見上げるとコウモリのようなモンスターが飛んでいた。大きさは背襲モグラくらいか? 足元に居たような気がしたけど、あんな高いところにいる。いったいどうしたらいいんだ。
様子を伺っていると、こっちに向かって急降下しながら素早く飛びかかってきた。
「キシャーッ!」
キンッ!
剣で受け流す。
危ない。うまくいったけど、そう何度もは続かないぞ。しかも牙のようなところが剣になっている。あんなので刺されたらひとたまりもない。
「これは、俺の出番だな! シオン、俺が雷撃を放つから落ちてきたところを頼むぜ!」
「あぁ、わかった!」
ユウマが右手に雷撃をためている。
「行くぞ、コウモリやろう! でりゃー!!」
もうちょっといい掛け声はないのか。技の名前でも決めておけばいいものを。
しかし意外にも命中して落ちてきた。
「今だ! シオン!」
とっさのことでとにかく構えるしかない。
「くっ、斬る!」
横一閃。コウモリ型のモンスターが真っ二つになった。
やった、倒せた! 初めて連携にしてはうまくいったね!
「シオン! やるな! それにしてもなんだよ斬る! ってさ!」
「そういうユウマこそ、でりゃー!! ってなんだよ!」
おかしくって笑いが止まらない。はー、楽しい。これがダンジョンなんだ。
気を取り直して先へ進もう。街まであと少しだ。
・剣歯コウモリ(けんしこうもり)
黒い体に赤く光る目と剣のような歯を持つ。空から様子をうかがって急降下して攻撃する。至近距離だと歯で刺されるが、離れていれば脅威はない。