02話 約束された武器
なんとか起きてご飯までありつくことができた。この家で寝起きするのはしばらくないのかな。そう思うと少し寂しくなる。けれどこれから待っているのは冒険の日々だ。英雄譚のことはさておきワクワクしてくる。
そういえば、僕を起こしに来たユウマはというと、図々しくもうちで一緒に朝飯を食べている。自宅で食べてきたはずなんだろうけど、よくそんなに食べられるな。これからダンジョンへ出掛けるというのに、まったくのんきなものだ。
「ユウマ君、シオンのことよろしくね。この子、朝弱いから迷惑かけちゃうだろうけど」
「もちろんですよ! シオンと一緒に行けるなら朝くらいどうにかなります!」
「母さん、確かに朝ダメだけど、ダンジョンでは眠ってられないこともあるだろうから大丈夫だよ」
最後の日まで起きられなかったからそりゃそう思うよな。
「ところでユウマ、準備はいいのかよ。僕は昨日のうちに済ませたぞ」
「お前は寝坊したくせに何言ってんだよ。バッチリに決まってるじゃん。あとは親父さんから武器を貰うだけだぜ」
そうそう、このあと武器を選ばないとね。
朝ご飯を食べ終わり神妙な面持ちの父さんと一緒に武器庫へ行く。その背中はなんだかいつもと違った雰囲気を出している。
武器庫の近くには物置小屋がある。スキルの練習をしていた時に燃やしてしまったっけ。今は新しく建て直してあるけどいい思い出だ。
さて、武器庫についた。薄暗くも武器たちは輝きを放っている。手入れが行き届いている状況からいつも大切に扱われているのがわかる。好奇心で勝手に入って怒られたのが懐かしいな。さて、父さんはどの武器がいいか決めてくれたのだろうか。
「どれでも好きなものを選ぶといい。ただ、こいつはダメだぞ。家宝なんだから」
こっち任せかぁ。まぁ、父さんらしいか。
しかし父さんがダメと言っているのは英雄の武器だって言い張るボロイ剣のことだ。燃やしちゃった小屋の方にある金庫に隠して保管していたんだけど、僕が燃やしちゃったから武器庫の方に移していたんだっけね。本当に英雄の剣ならそんなボロくないだろうし何だったらしっかり管理して国の宝物庫の中なんじゃないかな。
「選ぶわけないじゃん。そんなにボロいんだし」
しまった。つい本音が出てしまった。父さんはこう言うと怒るんだよ。
「あぁ、そうだな。じゃあこっちの剣はどうだ」
あれ? 怒らなかったぞ?
そうか、いつもと違った雰囲気は寂しいっていうことなのか。父さん気にしているんだな。
「親父さん! 俺にも選んでくれよ!」
「あぁいいとも。ユウマはこれがいいんじゃないかな」
「かっけー! 親父さんが選んでくれるんだから間違いないな! なぁ、シオン!」
「あぁ、そうだね。父さんがいいっていうなら僕はそれにするよ」
こうして武器が決まった。2人して長剣だけど、どっちかが弓でもよかったかな。ただ、お互い弓を扱えるような器用さはないから無理か。
「よし、それじゃあ武器も決まったことだし試験を受けに行くか」
そう。冒険者になるためには一応通過儀礼がある。これを突破できないとダンジョンにすら入れない。王国軍監視のもとでモンスターを1匹倒せばクリアだそうだ。ただ、毎年違うモンスターをつれてくるようで年によっては合格者が少ないらしい。
「ユウマ、絶対合格してやろうな!」
「もちろんだ! こんなところで躓いてらんないぜ!」
いったいどんなモンスターが待っているだろうか。練習の成果をしっかり発揮できるといいな。