01話 出立の朝
「シオン! 起きてるか! いよいよ今日だぞ。最初から寝坊すんなよ!」
窓の外からの大声で目が覚めた。そうだった。今日はいよいよ待ちに待った日だった。こんな大事な日に寝坊してしまうなんてね。
起こしてくれた声の主は隣に住んでいるユウマだ。小さい頃から一緒に過ごしてきた。
「いつか冒険者になってダンジョンへ挑もう。そこで英雄みたいに世界を救おうぜ!」
いつもそんな調子で僕を焚き付けていた。
僕は武器屋の息子。あいつは薬草商人の息子。ダンジョンに挑む冒険者が冒険の支度でよく来るものだから自ずと冒険者への憧れはあった。
そしてこの国は子ども向けの英雄譚がある。
かつて偉大な英雄はダンジョン奥に潜むドラゴンを倒して空が落ちて国が滅ぶ運命を救ったのだという。
国の歴史にはその事が事実として書かれているそうだけど、全くもって信じがたい。空はこんなに広い。これが落ちてくるなんてね。
半信半疑だけど繰り返し夢に見る光景が英雄譚にそっくりなものだから本当のような気がしてくる。
何となくだけど英雄のように世界を救うのが冒険者の役割ならきっと僕もそうなるんだって幼い頃からずっと思ってきたものだ。そしてこのユウマの声だ。僕を連れ出したくてうずうずしているんだろう。
今日は、待ちに待った冒険者になる日。
この国では15歳を越えたら冒険者になる資格が与えられる。父さん母さんには前から話していたから大丈夫だ。うちは武器屋だからね。2人分の武器も見繕ってくれるってさ。
昨日の晩に冒険の準備は済ませてある。名残惜しいけど夢に向かってそろそろ起きないとね。正直眠いけど気を振り絞ってこの重たい体を起こせばいいだけだ。
さて、それじゃあ冒険の旅に出発しようか。