この命燃え尽きようとも、親方様を・・・、今川家を守り抜くのだ・・・。
===== ザアアアアー =====
その勢いは、とても力強く激しい。その音は全てを、かき消さんとしているのではなかろうか。
(ああ・・・・。)
私は現在、滝に打たれている・・・。シャワーという名の滝に打たれている。涙は覆い隠される。もう全てを洗い流してほしい。自分に芽生えた気持ちも。
うう、、、。
必死に私はそれを落とそうとしたが、、、。
いわゆる自己嫌悪。私は最低な女だ。好きな人の不幸を喜ぶなど、論外なのだ。それが自分の本音だと知ってしまった。もう正面から今川先生と向き合えない。
もう消えてしまいたい・・・。
(うう・・・・・。)
寝床についても私は、いたたまれない声を漏らしているのだった。そして私は、ひとつの結論に達した。
===== 私は子供だ =====
そうまだ私は高校1年生・・・。まだまだ身も心も、成熟していない。間違いなく今川先生は、私の事を大勢の生徒うちの1人としか見ていないであろう。彼からしたら、私は女としては認識されていないのだ。だから自分がどうこう考えても、初めから相手になどされていないはず・・・。それに何よりも、今川先生には息子さんがいる。たぶん私と並んだら、ちょっと年の離れた姉弟に見られるだろう。果たして真くんは私の事を、母と認めてくれるのだろうか。・・・・正直に言うと、とても難しいと思う・・・。あのとても利発そうな少年に、私は慕われる自信はない。もし今川先生と結婚できたとしても、うまくいくはずがない。うん、そうだ。きっとそうに違いない。これは完全なる、自分の一人相撲なのである。
(明日からは普通にしていこう。)
勝手に悩んで勝手に結論を出した私は、そのまま泥のように眠りについたのであった。
~~~~~ そして戦国時代 ~~~~~
「泰朝様は、義元様を見限ったのでございますか。」
勘助は自分がおかれている立場を理解した様である。しかしそれは少しだけ違う・・・。
「お主は動くでない。これは今川家の命運がかかった戦である。今川を離れた男に任せるわけにはいかぬじゃ。」
これで私が何を言わんとしているか、勘助は察した様子であった。
「それは・・・。」
「そうゆうことじゃ、勘助。全てを私に任せろ。」
「・・・朝比奈様・・・・。」
もう何もかも悟った山本勘助は、眼を瞑ったのであった。それは彼が私の配下に拘束されるのを、受け入れる事を意味していた。
「では、お主の身の安全は約束する。私は今から出陣する。」
「お気をつけ下さいませ。あの信長は油断なりませぬ。」
「うむその辺の準備は怠っておらぬ。信長の動きはだいたい把握しておるのじゃ。」
「・・・・分かり申した・・・。」
もう勘助は、これ以上意見を述べるまい、という雰囲気である。もう私は部屋を後にした。
「よし。」
全ての支度を終え、私は手勢と共に親方様の元に向かう事にしたのだった。朝比奈の精鋭の騎馬隊・・・。数は少なくとも、信長を討ち取るには十分は戦力と心得ている。そもそも信長の部隊そのものが奇襲目的に編成されたものである。当然に兵力も小規模を推測されるのだ。ただしこの戦の形勢の不利をひっくり返すためである。また信長も織田の精鋭部隊なのであろう。信長の部隊に戦いを挑めば、間違いなく私の部隊は壊滅する・・・・。しかし私は決めたのだ。この命燃え尽きようとも、親方様を・・・、今川家を守り抜くのだ・・・。
「・・・そうか・・・。」
密偵からの報告を聞いた私は、信長の部隊の現在位置の把握をした。もう準備は万全である。
===== ババッ =====
出撃の合図を下した。もう後には戻れない。私は織田信長を地獄まで道ずれにするべく、馬を走らせるのだ。信頼すべき側近・部下たちと共に・・・・。
~~~~~ そして現代 ~~~~~
「フンフフーン♪♪」
その翌日、私は鼻歌交じりにスキップをしながら、登校したのだった。
(・・・お、あの子、とってもイケメンだなあ・・・。)
自然と私は、他校の男子生徒に視線が言った。じつを言うと自然ではなく、故意に年の近い異性を視界に入れたのだが・・・。。
(ようし・・・!)
私はあわよくば、その男の子と仲良くなろう、と声を掛けようとした。しかし・・・。
「え、と・・・。」
その男の子に声を掛けた。しかしそれは今にも擦れそうな、自身のない声であった。こんなのでは、この男の子に気が付かれるはずもないのに・・・。でも・・・。
「なんか用があるの?」
「ひっ・・・!ひえっ・・・!」
なんと男の子は、私を認識してくれたのであった。それに対して、この私は驚きの声をあげてしまった。自分の方から接触したにも関わらず・・・・。さぞかし男の子は、怪訝そうな顔を浮かべている事であろう。
「大丈夫かい?」
「へ・・・・?」
その男はスッキリした顔で、私をみていた。とても綺麗だ・・・。その男の子の瞳は・・・。澄んだ瞳という言葉は、正にこの男の子の為にあるかの如くであった。
<続く>