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「ワシは自分のやり方で、この世を生き抜いていくつもりじゃ。」

 ~~~~~ そして戦国時代 ~~~~~

 

 ===== ポンポン =====

 鞠を蹴る音が庭に響き渡る。私は膝まづいていた。

 「なんじゃ、泰朝。」

 その時、鞠の跳ねる音が止まった。

 「はっ、氏真様。」

 私は今川義元公の嫡男、氏真公に、直接お目通りさせて頂いているのである。

 「実は氏真様て実権を握って頂くべく、その補佐を願いたいのです・・・。」

 ===== ポン =====

 そして一回だけ鞠が跳ねる音がした。それはあえて言うと、否定的な響きを醸し出していたのであった。

 「は?何を申すのじゃ。」

 その時の氏真公は、少しだけ歪んだ顔をしているように見えた。

 「はっ。氏真様は大変学識のある、お方です。」

 それは当たり障りのない誉め言葉なのかも知れない。でも私には続く言葉が用意されているのだ。それは当の氏真公が、どのような相槌をするかに全てが掛かっているのであるが・・・。

 「ほう。ずいぶんと持ち上げてくれるものじゃな、泰朝。

 氏真公はポンポンと扇子で自分の方を叩いている。その仕草はいかにも公家じみていた。その余裕のある態度に、猶更に底知れぬ不気味さを感じるのである。しかしだからと言って、このまま食い下がる訳にはいかない。

 「されど。」

 「うむ。」

 「氏真様は(いくさ)に関しては随分と出遅れているもの、と存じ上げまする。」

 これは我ながら率直な意見である、と思う。しかしこれ位の指摘を述べないと、このお方の心には響かないのではないか・・・。

 「はっははは!」

 高らかな笑い声をあげながら、氏真公はパンと自分自身の額を扇子で叩いていた。このお方は全く、そのご機嫌を損ねた様子はない。こうゆうところは本当に人物が大きい、と感じるのである。 

 「うむ。そなたが言いたかった事は、そうゆうことじゃな。」

 これ位に真面に弱点を指摘し感情を刺激しないと、この氏真公は動いてくれない・・・。

 「お恐れながら。」

 私は氏真公の眼を真っすぐに見つめながら言った。 

 すると氏真公は私の側に近づいてきた。そしてそっと囁くのであった。

 「ワシは自分のやり方で、この世を生き抜いていくつもりじゃ。」

 「・・・・はっ・・・。」

 私は(こうべ)を下げた。何故なら私は、もうこれで義元公の出陣を止める術はない、と悟ったからなのである。愕然とした私は、仕方なく屋敷を去った。


 ~~~~~ そして現代 ~~~~~

 

 「はあ。」

 自分にとっては日常とはいえ、2つの人生を歩み、しかもその記憶がある・・・。それが私の悩みの種なのだ。なぜ女子高生が1人で、戦国時代の事について悩まなければいけないのだ。本当に理不尽とは、自分の為にある言葉なのではなかろうか。このお蔭で今や、私はすっかりと歴女となってしまったのである。これは問題ではなかろうか。とある人生が、別の人生に干渉されている。まあこんなことを考えていても、日々時間は経過していくのであるが・・・。

 今日は休日だ。私は何気に公園でブランコに座っていた。どうしてこんな場所にるのか、と聞かれそうだ。その理由は特にない。別に公園でなくてもいいのだ。何も考えずにボウっとしていられれば・・・。この公園は、まあまあ大きい方なのではなかろうか。だから勿論、外にも人の姿は見られる。実際に何組かの親子連れがきている。本当に平和な光景だ。いつかは私もあんな風になれるのだろうか。羨ましい限りだ。まあそれなりに苦労は絶えないのであろうが・・・。それでも私も将来は、家庭を持ちたい、と常日頃から考えているのである。こう見えても自分はそれなりに、将来の事は気にしているのだ。・・・・はっ・・・・、勝手に一人で意見を述べて、盛り上がってしまった。私はブランコに座りなおして、気を取り直したのだった。

 「うん。」

 早速に私は、その違和感に気づいた。1人だけ例外的な人物がいた。勿論この私を除いてだ。男の子が1人だけで遊んでいる。いや、正確に言うとそうじゃない。皆のように楽しんでいない。この子は塞ぎ込んでいるように見える。ベンチに座って項垂れている。その様子を見て、私は心配になった。この子は大丈夫なのだろうか。ひょっとしたらこの子は・・・・。

 ひょっとしたら、この子は家庭に居場所がないのではなかろうか。明らかに公園に遊びにきている訳ではなさそうだ。改めて私は、この男の子をジッとみた。また私の余計な、お節介癖が現れたのだった。

 「ねえボク。」

 次の瞬間もう私は、その男の子に声を掛けていた。男の子は砂場で何かを造っていた。それは遊んでいる、と言うよりも作業をしている様に見えた。それだけ、この子が楽しんでいる様に見えないのだ。そして私は男の子の傍にしゃがみ込んで・・・。

 「何を造っているのかな?」

 その男の子に顔を、私は覗き込んだ。

 「おわ!!」

 その瞬間に尻もちをついた私は、端ない位に大きな声をあげたのである。その理由は・・・・。


                               <続く>


 




 

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