表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

もう私は義元公の命に従う他ないのだ。

 今川義元公の嫡男、氏真様・・・。この氏真様は非常に学識に富んだお方なのである。主に和歌・連歌、蹴鞠などの技芸に通じており、多彩な才能をお持ちであるのだった。

 だがしかし、天は二物を与えず・・・。氏真様は軍事的な分野では、とても疎いのであった。このお方は心底の文化人・・・。究極の芸術家肌の人間・・・・。私は氏真様を幼く頃から存じているが、本当に浮世離れしているのである。恐らくどんな教育を施そうとも、真の武将にはなれないのではなかろうか・・・。それ故に義元公は、たとえ嫡男であろうとも、この尾張への進攻に参加させないのだ。

 これは最早反論の余地なし・・・・。少なくとも私が義元公を説得し、尾張への進攻の指揮を控えて頂くことは叶わない。もう私は義元公の命に従う他ないのだ。


 ~~~~~ そして現代 ~~~~~


 「ふう・・・。」

 「なに溜め息ついてんの。幸せが逃げていくよ。」

 そんなこと言われても、困るのだ。

 「うーん。」

 「何を悩んでいるのかなあ。お姉さんに相談してみなさい。」

 「いや。同級生だし。それに私の方が数ヶ月だけ、お姉さんだし。」

 今、目の前にいるのは私の親友なのだ。いつも彼女はこんな感じだが、本当に私の事を心配しているのだろう。そして親友は勘が鋭い・・・・。

 「ひょっとして、今川先生?」

 「ぶっ!」

 思わず私は、お茶を吹き出してしまった。

 「うわあ!やめてよ!?」

 「だって瀬名(せな)が、あんなこと言うんだもん。」

 これではまるで彼女の方が被害者ではないか。ハッキリ言って、私は納得がいかなかった。精神的には私の方が、ダメージを受けているのだ。しかし一応この私の親友である瀬名は、ときおり鋭い指摘をしてくる。そして学業での成績も、とても優秀だ。だから私はそれとなく、彼女に勉強を教えてもらったりしている。心から頼れる友達でもある・・・。この私は実は、これでいて結構利己的な所があるのだった。

 「あのさ数学の課題の事で、相談なんだけどさ。」

 「こらこら話題をそらさない!」

 「うう・・・。」

 図星故に、私は反論ができなかった。もっとも数学の課題の件で困っているのは、本当なのだが・・・。実は私は数学が大の苦手なのだ・・・。それに数学教師も大嫌いだ。だってこの私に授業中にチョークを投げつけてくるのだから。しかも結構うまい・・・。およそ85パーセントくらいの確率で、私の身体に命中させて来るのだ。こないだなんか私の左乳首にヒットさせてきたのだ。思わず私は「ひゃうっ!?」、と妖艶な声をあげてしまったのだ。まあ最も数学教師は勿論、周りの皆は誰も気がついていなかったのだが・・・。それにしても許せない、あのオヤジは・・・・。うら若き乙女の恥ずかしい部位に、モノを投げつけるなんて・・・・。本当にセクハラもいいところだ。居眠りをしているからって、注意する代わりに実力行使に出てくるとは・・・。だいたい数学教師の授業が、つまらないから睡魔が襲ってくるんだよ・・・。きっと本当は私は悪くない・・・・、はずだ・・・・。

 「なーに、一人でブツブツ言っているのかな?」

 「ぎょっ!」

 「あっはは!何それ!?初めて見たあ!ぎょっ!、なんていう人!」

 そう言って瀬名せなは、笑い転げていたのだった。この学校の制服のスカートは割と短い。それはかねてから今川先生も指摘している。だから瀬名せなは周囲の男子達の注目を集めていた。勿論下着が見えるのを期待しての事である。私の方も初めて見たのだ。ほんとに地べたを笑い転げている人を・・・・。って、こんな事をしている場合ではないのではなかろうか。別に私たちはお笑い芸人を志望しているわけではない。だからこの一連のやり取りは、完全に天然なのだ。綺麗な天然水も真っ青なのである。

 「こらこら、見世物ではないぞ。」

 精一杯の平静を装い私は男子達を咎めたのだった。そして男子達は渋々と散会したのである。やはり瀬名せなは男子達からは人気者なのだ。まったく少しは視線を気にして、大胆な行動は控えて欲しいモノだ。彼女の振る舞いは、友達としては黙っておけないのである。

 「っと!」

 ガバっと瀬名せなは、飛び跳ねるように跳ね起きた。

 「おおっ!!」

 その瞬間に男子達から、歓声にも近い声があがった。

 (ああ・・・。)

 瀬名せなが飛び起きた拍子に、スカートが捲れ上がる。まったくこの娘は無頓着すぎる・・・・。

 勿論、私はキッと男子達を睨みつけた。その迫力(?)に彼等は、思わずたじろいだと思われた。そして実際改めて、男子達は渋々と散会したのだった。本当に無警戒だ。いつか悪い男に引っ掛かるぞ・・・。この瀬名せなは・・・。まあもっともその時は、この私が悪い虫を撃退するつもりなのだが。

 「おわっ!?」

 気がつけば至近距離に瀬名せなの顔があった。

 (え・・・。)

 更に私は動揺したのだった。何故なら、その彼女の顔は真剣そのものだったからである。そして・・・、瀬名せなは私の両肩をガッシリと掴んだ。それから彼女は、私の耳元で囁いたのである。

 「・・・・・・・・。」

 「・・・・・・えっ・・・・。」

 瀬名せなの言葉に、私は驚愕した。

 「じゃあね!」

 また元気な美少女戻った瀬名せなは、背中を向けて去って行ったのだった。


                           <続く>

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ