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リルシェさん愛用の魔導バックパック『イッテラ』には、
大容量『収納』貯蔵庫が搭載されているので徒歩での長旅だって安心。
もちろん必要な物資は道中の町や村で随時補給しております。
いま俺たちが休憩しているのは、街道沿いにある道の駅ちっくな小規模集落。
旅人目当ての宿や商店、街道警備の衛兵さんたちの詰め所、
各種ギルドの役割りを兼任している仮設の総合ギルド、などなど。
数軒のこじんまりした建物が寄り集まった小さな集落です。
仮設ギルドでは旅の途中で仕留めた魔物素材がなかなかの金額で売れましたし、
どれ、王都のみんなへのおみやげでも。
この辺りにしか無い名産品や特産品はおみやげにぴったり。
これぞまさしく道の駅巡りの醍醐味。
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「……」
どうしました、リルシェさん。
何かおもしろいおみやげでもありましたか。
「いえ、気になるお菓子があったので」
へえ、子供の頃に大好きだったお菓子と再会したとか。
「この『ボケモノクッキー』、全国で販売中止になったはずなのですが……」
子供のおこづかいで買えるような小さな箱入りクッキー。
箱の中にはクッキー1個とカードが1枚。
販売中止の原因は、この小さなカードなのだとか。
冒険者絵姿カード、通称"ボケモノカード"
古今東西、神話の時代の勇者から最近の有名冒険者まで、
伝説の武具に伝説級の魔導具、
多種多様な魔物や世間を騒がせた悪党も、
その全てが詳細ステータス付きのマンガちっく絵姿で描かれているのが、
このボケモノカード。
要は、異世界版トレーディングカードゲーム。
発祥の地エルサニア王都で火のついたブームはやがてリヴァイス全土に広がり、
大人たちも巻き込んでの激しい争奪戦が勃発。
その過熱ぶりで一時は社会問題にまでなったとか。
ツァイシャ女王様が法外な高額取り引きを禁ずる勅令を出しちゃうほどの。
結局、子供たちの遊びに大人がマジで出しゃばるのは超カッコ悪いよね、
という風潮が徐々に広まり、
カード取り引きにまつわる過激なヒートアップは沈静化の方向へ。
そんなブームの真っ只中に発売されて、すぐに発売中止となったのがコレ、
マニアの間では伝説的なコレクターズアイテム『ボケモノクッキー』
発売中止となった理由は、
非正規パクりカードによるニセモノ流通問題とか、
お菓子への異物混入とかでは無く、
あまりにもアコギなその商法ゆえ。