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 このふてくされてる妖精さんの名は、フォルモルくん。


 見てくれはこまっしゃくれた悪ガキですが、


 れっきとした成人、ってか社会人だそうで。



 ご職業は、フリーの"何でも屋"


 いろいろやらかしてギルドから冒険者登録を抹消されたそうで、


 現在はヤバめの裏仕事も請け負う"何でも屋"稼業。



 今回の裏の依頼は、俺たちの持っている激レアアイテムの入手(手段は問わず)




「先にトロいおっさんを痛めつけて人質にすれば、言うこと聞かせられるはずだったのに」



 トロいは同意するけど、おっさん言うなし。


 で、激レアアイテムって何なのさ。




 ---




『国史無双の真の女王"ツァイシャ女王"、お忍びver.:EXR』



 ボケモノカード史上、僅か3種しか実装されていない最高レアEXR。


 その中でも極め付きの入手困難カードが、これ。



 公式発表でその存在が明らかにされてから、


 全てのボケモノカードマニアが血まなこになって探し回っているという、


 間違い無くボケモノカード界の頂点に君臨する孤高の逸品。



 そのあり得ないほどの極低出現率だけでは無く、


 実際のカードバトルで使用された際の、


 バランスもへったくれも無いブッ壊れっぷりは、


 天才ゲームデザイナーネルコ氏唯一の汚点とまで言わしめたほど。




 で、どっからバレたか知らんけど、


 俺たちが引き当てちゃったことがボケモノカード界隈で超速拡散。



 表向きは、度を超えたやり方でのカード取り引きは禁止されておりますが、


 入手するためなら手段を選ばない連中が目の色変えて大発奮、


 裏稼業方面はかなり騒がしくなっておりますよ、と。




 ---




 この女王様カード、引き当てたのは俺ですが、


 リルシェさんカードとのトレードで現在の所有者はリルシェさん。


 今は俺の時間経過無し『収納』で預かっております。



 こんなのがねぇ……




「そのお宝カード、俺の依頼主に持っていけば、3人で報酬山分けしても全員に城が建つよ」



 うん、ひと言いいかな、フォルモルくん。


 お城が建っちゃうほどの額の、さらに3倍の報酬、


 依頼主がまともに払ってくれると思う?



「こういう裏仕事って、デカい仕事に関わるヤツほど信用を大事にする」

「どんな理由があろうとルール違反の裏切り者は地位も財産も、もちろん命も、全部失うよ」



 ってことは、成功すればマジで一攫千金だったんだ。



「……アイツは駄目かもね」

「金払いは悪くないって前評判に釣られて依頼の内容を聞きに行ったら、金をバラ撒いて評判が落ちないようにしてただけの阿呆だったよ」



 ……何でそんなしょうもない依頼主から依頼を受けちゃったの。



「流石にヤバいと思って姿を隠そうとしたんだけどさ、とっくにアウト」

「俺が逃げらんないように、依頼を受けたことを裏界隈に広められてたよ」

「確かに裏仕事するヤツなんてろくでなしばかりだけどさ、最低限の仁義も守らない外道もいるんだね」



 阿呆で外道だけど、裏社会を知り尽くした難物だった、と。



「結構な地位にいる阿呆って、ホント始末に負えないんだよな」

「欲しいものは金や手段にこだわらずに手に入れようとするくせに、自分のやり方に妙にこだわって損したり失敗したり、その穴埋めに余計な金や手間を掛けてることに気付かなかったり」

「阿呆なのに見栄っ張りだから、代理人を雇うのをケチって自分の屋敷の使用人に裏仕事の交渉ごとを任せてるし」

「あれじゃ黒幕じゃなくて身元垂れ流しの垂れ幕だっての」



 うん、上手いこと言うね、拘束解除したらざぶとん一枚。



「まあ、執念深さだけは凄かったよ」

「無理やり巻き込んだら都合の良いように便利に使い倒して、失敗したら後腐れ無いよう処理して切り捨てるタイプ」

「あんなのとは関わりを断つのが一番なんだけどさ、普通の種族ならこういう失敗してもいくらでもやり直す方法があるんだろうけど、俺、妖精だし」

「こういう目に遭わないよう気を付けてたんだけど、流石にひとりじゃ限界だったのかな……」



 ちなみに、依頼を達成出来なかった何でも屋の末路は?



「……逃げきれなかったらアウト」

「普通はヘマしたヤツが無事に逃げられたかどうかなんて誰も気に掛けないけど、俺って普段から狙われてたんでアイツらも喜んで行方を探すだろうな」

「とりあえず、あの依頼主が悪事の証拠をほっとかないってことだけは、絶対に確実」



 ふむ、詰みですな、それ。



 正直、依頼主とやらをどうにか出来たら、


 フォルモルくんがどうなろうと知ったこっちゃないのですよ、俺。



 このままニルシェ王都で衛兵さんに引き渡して国が動く案件にしても良いし、


 ここで全部白状したフォルモルくんが今後一切俺たちと関わらないなら、


 すぐにこの場で解放して逃してあげても良い。



 大事なのは俺たちが厄介ごとに巻き込まれなくなること、


 ただそれだけだから、フォルモルくんも知恵を出してくれるとうれしいです。



「……」




「むう、かなり念入りにお手入れしたのに、変な匂いが取れません」

「私の愛刀を汚した罰、受けるべきは誰だと思います?」




 あのまなざし、リルシェさんかなりキテますし、


 フォルモルくんには悪いけど、


 早いとこニルシェ王都へ行ってケリをつけたいですね。



 さて……



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