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それから『ウルウルフ』の素材をどうするか話した。
受付のウナクさんのアドバイスを聞き、牙と爪、肉を少しずつもらうことにした。
それを使って武器を作ってもらう。
これから冒険者として活動すると話すと(最初は止められたが)武器が必要だ。
素材を鍛冶屋に持っていった方が安く作れる。それもユニークモンスターの素材なので、それを使って作ってみたい鍛冶屋が多くいるのでかなり安く作れるらしい。
防具を作るために毛皮も欲しかったが、領主それも公爵の方が丸々欲しいらしく、丸々売った方が利益になるそうなのでそうした。
僕の利益だけで500万になるそうだ。少しでも欠けていたら100万くらいに下がるらしい。
そんな事情があったので、解体する人が神経をすり減らしながら綺麗に解体したという話だ。
僕が納得してくれて良かったと安心していた。
その分、僕が貰う素材は最良な物をとお願いした。
それからステータスの出し方を教えてもらい、報酬を準備するのに時間がかかるそうなので、ギルドのなかにある飲食店でご飯を頂くことにした。
話がきりの良いところになった時に12時の鐘がなった。
朝6時、昼12時、夜6時になるそうだ
今回はギルドの驕りらしい。
ご飯を食べながらステータスを確認した。
蛇足だが、この世界のご飯はあまり美味しくない。
治療院のご飯でもそう感じたが、病院食だからだろうと思っていた。しかしギルドで食べたご飯(驕りなので少し高い物を注文した)でも感想は変わらなかった。
日本の食事ってレベルが高かったんだなと少しホームシックになった。
閑話休題。
ステータスの出し方は、身分証を持ったうえでステーオープ」と唱えることだった。
正直なんじゃそりゃと思った。
「ステータスオープン」を略したのだろうけど、略のしかたおかしいだろ。と思ったがこれがこの世界の仕様なのだろう。
早速試してみた。
テリー(仮) レベル3 戦闘力 5
スキル
固有スキル 『覇運』
『フリーフライ』※一部封印
『時空魔法+アルファ』
ウルトラスキル 『下克上』『不撓不屈』
スーパースキル 『最俊足』
レアスキル 『暗視』『脚力強化』
コモンスキル 『気配察知』
と頭のなかに出てきた。
…うん。スキルも詳しくみてみよう。
『覇運』 『天運』の下位互換 『豪運』の上位互換
『フリーフライ』 空を自由に飛べる。今は飛べない。
『時空魔法+アルファ』 鈴木翔太が持っていた固有スキル。
『下克上』 格上の対生物に対して能力が上がる。
『不撓不屈』 無理が出来る。
『最俊足』 俊足の上位互換。
『暗視』 暗いところでも見える。
『脚力強化』 脚力を強くする。
『気配察知』 気配を察知する。
ちょっと待って…ツッコミどころが多すぎる。
戦闘力5ってなに?スキルの数より少ないってどういうこと?
ウナクさんの態度でそれは高い数値だとは考えられない。
ユニークモンスター倒したのにレベル3って?レベル低すぎるし、スキルの説明雑過ぎないか。
それに僕の代名詞になる予定だった『フリーフライ』は、説明だけみれば完全に死にスキルだ。
唯一効果が確認できてるのは『暗視』だけだ。
そしてまともな説明しているのは『下克上』と『不撓不屈』だが全然足りない。
『脚力強化』と『気配察知』はそんなことはわかっているよ。だし、『覇運』、『時空魔法』、『最俊足』に至っては、欲しい情報はそれじゃないってことは日本人…いや地球人なら共感してくれるだろう。
効果やそれの発動の仕方を教えてくれよ。
ちょっと待てよ…『フリーフライ』の無敵時間って無くなってないよな…
それに『下克上』や『不撓不屈』は『暗視』と同じでパッシブだよな。
分からない。下手すると『暗視』以外の全てのスキルが死にスキルじゃないか…だから戦闘力5なのかも…と頭を抱えていろいろ念じながら操作できないかを試していた。
「すみません。大丈夫ですか?」
「あ…はい。大丈夫です」
「それなら良いのですが無理しないで下さいね」
ふと周りをみると僕の周りには人がいなくなっていた。
離れた席にいる冒険者達と目が合うと皆顔をそらされた。
恥ずかしい…いやかなり恥ずかしい。
「はい。ありがとうございます」
「それで報酬の準備ができました。受付までよろしいですか?」
返事をして受付まで歩いていった。
「お金をギルドでお預かりすることも出来ますがどうしますか?ギルドでは━━。」
詳しい話を聞くと銀行の預かりサービスとクレジットカードを複合したようなサービスだった。
預けているとカードでの支払いができるそうだ。
違うところは預けていても利息がつかないところと、お金は借りられないところ、年間使用料がいらないくらいだ。
大金持っているのも怖いので10万ほど貰って預けた。
ウナクさんが屋台では使えないところが多いと言っていたからだ。
「それでテリーさんのお仲間のことですが…お聞きになりますか?」
「はい。お願いします」
決して仲良くはなかった(木村君とは戦ったし)が、僕は知らないといけないと思った。
ただの自己満足なのかもしれないけどそう思ったのだ。
端的にいうと遺体は狼達に荒らされていたようだ。遺体をあの平原に埋めたそうだ。
それから遺品を渡された。
前田さんと鈴木さんの遺髪や身に着けていた物や、佐藤君の成りの果てである『妖精石』、藤木君の欠片、食べられた木村君の指輪を渡された。
それらを見ると仲良かった訳ではないのに、目頭が熱くなった。
自分を落ち着かせると、供養に関わってくれた冒険者にお礼を渡してほしいとお願いした。
これからはお金が必要になるということで最初断っていたが、それでもと言ってお願いした。
「わかりました。渡しておきますね」
「お願いします」
「忘れてしまっていると思いますが、その指輪のおかげで、『ウルウルフ』を討伐できたんですよ」
「そうなんですか?」
「あくまで予測なんですが、その指輪が『ウルウルフ』の腹の中で暴発して討伐出来たんだと思っています」
なるほど、指輪に『即死魔法』の力が残っていたのか…あくまで予測でしかないけど、僕の念で死んだよりはかなり納得できるな…
「お願いします。話は変わるんですが、ウナクさん冒険者の人達のレベルの平均ってどれくらいなんですか?」
「そうですね…ランクによって違うんですが、テリーさんと同じGランクなら平均10ですかね」
最低クラスで10だと…しかも平均で…
「最高級のSですと700くらいが平均でしょうか」
しかも100がカンストじゃない…
「しかしレベルよりも戦闘力。戦闘力よりも実力、実力より信頼や信用の方が大事です。そしてなにより生きて戻ってくることですよ」
僕にはなにもないけど…いや戦闘力5が低いと決まった訳じゃない。
「戦闘力の平均も教えてくれませんか?」
「そうですね…少し言いにくいですが、Gランクで30くらいです」
…
「…それじゃあ僕の戦闘力5って低いですよね?」
「はい。残念ながら…喧嘩っぱやい10歳の子どもくらいですかね」
10歳…僕は小学生レベルなのか…
「今からでも冒険者への追加報酬を取り下げませんか?」
「…いえ大丈夫です」
「そうですか…すみません。しつこかったですね。もう私はその事に関してはなにもいいません」
…
「それとスキルの使い方や効果の情報は皆さんどうしているんですか?」
「あぁテリーさんは記憶を無くされていたんしたね。忘れていました。もしかすると戦闘力5はそのせいかもしれません。そうですねコモンスキルは━━」
朗報だ。スキルの使い方が分かれば戦闘力が上がるかもしれない。
説明によると、コモンとレアスキルは持っている人が多いので検証が進み、効果や使い方はおおよそ判明している。
冒険者ギルドの資料室にもいくつか書いてあるらしい。
しかし、それ以上になると持っている人が少なく難しいらしい。
終わった。コモンスキルは『気配察知』しか持っていないよ。
「ありがとうございました。最後にオススメの鍛冶屋さんや、防具屋さんを教えてもらいたいんですけど」
それから鍛冶屋さんや防具屋さん、道具屋さんを教えてもらい、長く付き合ってもらったお礼を言って資料室へ向かった。
結局素材や遺品は預かってもらうことにした。
盗難防止と紛失防止のためだ。
今はまだ持っていても使えない。どこかに忘れるかもしれないし、最悪強盗にあったら戦闘力5の僕では殺されるかもしれない。
戦闘力5の僕には出来るだけ強い武器が必要なのに、無くしたり盗まれてしまったらどうしようもない。
だから預かってもらうことにした。
資料室へ行き僕が持っているスキルがないか調べたが読めなかった。雰囲気は象形文字に似ている。
数字はアラビア数字なので分かるが…
そうだよな…普通に話せていたから気付かなかったがここ異世界なんだよな。
この世界では本当に10歳くらいの能力しか僕にはないのかもしれない。
泣きたい。
しかし泣いてもしかたない。
文字を教えてもらう場所をウナクさんに教えてもらい冒険者ギルドを出た。