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 場所が移り、この屋敷の応接間にやってきた。

部屋と違い高そうなものがいっぱいある。


「そこに座れ。なにか飲むか?紅茶と果実水しかないが…」

「失礼します…えっと紅茶をお願いします」


 マスターが紅茶をいれて、持ってきてくれたのでお礼を言った。美味しい。


「さて、まぁ話の続きだが、まず三人の話はいいな?」


 紅茶を飲んでいたのでうなずいた。


「それはこの領の話なんだ」

「まさか公爵様が…」

「いや、テオドール様は関係ない…関係はあるが直線的にはないな」


 なんだろう?


「またヒントがほしいか?それとも答えがほしいか?」


 普段ならヒントを選ぶんだけど、考えることがいっぱいで考えたくない。


 答えを聞いた。

 マスターは残念そうだったが、いっぱいいっぱいで考えたくないことを伝えるも教えてくれた。


 どうやら世継ぎに関係あるらしい。

 この町とその周辺は子爵であるハルク様が治めているが、彼は長男だがまだ正式な世継ぎじゃない。


 この領の公爵家の後継者の選び方は、公爵の子供が成人とともにどこかの町とその周辺の管理を任される。

 現公爵が引退する又は、事故や病気で執務できなくなった時に優秀な人が公爵になる。


 優秀な者を選ぶのは公爵家家宝の魔道具なので、人が介在できる予知はあまりない。

 それは初代王様の弟である初代公爵が決めた家訓なので、現公爵でも変えることができない。


 それでも一番上から管理する領地を選ぶので、上が有利であることは変わらない。

 子供のなかでいち早く成人になったハルク様はこの領地を選んだ。


 ここの領地は公爵領のなかで一番当たりだった。

 公都、王都へ行き帰りの時に通る良い場所であるのに加えて、魔物被害もケルトさんがいるので町の防衛もあまり問題ない。

 それに加えて説得するのは難しいが、出来たら大きな利益が見こめる三人がいる。

 それに別に説得できなくたって問題がない。

このまま行けばハルク様が公爵になっていた。


 しかし『ウルウルフ』騒動で他の候補者達にもチャンスになった。

 遠回りすれば王都、公都の行き来は可能だ。

 それによって他の子供の領地は潤った。


 公爵の長女と次男は喜んでいただろうと予測していた。

 その二人は運が悪い当主はダメだ。や三人を説得できないこと等にいちゃもんをつけていたみたいだ。


 三人を説得できないことに関しては問題なかった。

 それは公爵であるテオドール様が好きに暮らしていいといったから、三人はこの領に定住している。

 説得できない批判は、テオドール様への批判になりかねないので影で言われていたようだ。


 しかし運が悪いっていうのは問題だった。


 この国は運を大事にしている。理由はシンプルで初代国王が運に助けられて建国したからだ。

 そのため運は大事な要素らしい。運が悪い人には誰もついてこない。特に貴族や官僚は…


 さすがに領地を運営するのに一人ではできない。求心力がなくなれば、領地に悪影響がでる。


 それなのに高位貴族や冒険者達、いろんな思惑があるなかで動くに動けず本当に運が悪かった。


 それが僕じゃなかったら問題がなかった。

 三人を説得または高額なお金で作らせ、治療をさせ、その代わりに討伐してもらっていたら、もしくはハルク様の騎士団を犠牲を覚悟して討伐しても、犠牲が出た時点で運が悪いことは同じだった。


 ハルク様は詰んでいた。


 しかし僕が討伐したので問題がなくなった。

 ハルク様となんの関係もない僕が討伐したので、運が良いこと…『ウルウルフ』が現れた時点で、良いことまでとはいわないが、悪くないことを証明してしまった。


 ハルク様の兄弟、特に長女と次男は僕のことを恨んでいるだろう。という話だった。


「まぁこの話は私の予想もはいっているから確実ではないがな」

「マスターの予想が外れていることを祈ります」


 でも当たっているんだろうな。


「まぁそうであるなら楽なんだがな…」

「とりあえず忘れます。僕にできることはなさそうなので」

「まぁそうだな。気にするだけ無駄だ。お前がやりたいようにやればいい。改造するもしないも、冒険者を続けるも続けないもな」

「わかりました。でもいきなり改造って怖くないですか?例えば動物からとか…」

「なぜ動物からやるんだ?動物で成功できても意味ないだろ…」

「安全性の確認とか出来るじゃないですか?」

「意味あるのか?」

「確かに人間で成功するかはわかりませんが…」

「いや、お前はなにを言っているんだ?なんでそこで人間がでてくるんだ?」

「動物が成功するかもしれないけど、人間で成功するかわからないでしょ」

「それはそうだが…」


 僕がなにを言っているかわからなさそうだ。

 話がかみ合っていない気がする。


「最低ですけど、他の誰かが成功すれば僕の成功確率も…」

「なんで赤の他人に改造をさせるんだ?」

「…えっ。だから安全性を…」

「いや、赤の他人が成功しても意味がないだろ?」

「意味はあるでしょ?誰かが成功したら僕の手術も成功しやすくないですか?例えば未知の魔物が現れたとして、弱点や倒し方がわかれば他の人も倒せる可能性が上がるじゃないですか」


 よく知らないけど、製薬会社とかはお金を払って治験とかをするんだろう?


「なんでその例えがでるのかはわからんが、確かにその通りだろ」

「同じですよ。安全性が保たれるでしょ」

「お前なにを言っているんだ?安全性は保たれるかもしれないが、称号や強いスキルが手に入るチャンスがなくなるだろう?」

「なっ!?」

「…ああ、そうか…記憶がないんだったな。いろいろと合点がいった。その手術は恐らく世界初だ。世界初に成功すると称号やスキルが手に入るチャンスがある。しかも強いスキルがだ。それなのにお前以外が成功しても意味がないだろ…」


 なんだって!?

 あぁ、そうか。ここは称号やスキルを得られる異世界だったか…


「…そうだったんですね…考えを整理したいのでお付き合いいただいても?」

「あぁ、私もお前がどんな答えを出すのかが気になる。今日は久しぶりの休みだからな」

「ありがとうございます。まずはゲルマールさん達が良かれと思ってしてくれていることはわかりました」


 僕が冒険者としてやっていけるように、世界初?のことをして、僕に強いスキルを得るチャンスをあげたかったのだろう。

 もし得なかったとしても強くなることは確かだし…


「しかも、これは僕が強くなるチャンスであることもです」

「そうだな。多分あいつらはお前が断るとも思っていないだろうな。お前じゃない奴なら大金を払ってもやってほしいだろう」

「そうなんでしょうね。僕はどのくらい危険なんですか?」

「手術のことか?それともお前の状況の方か?」

「どちらもです」

「そうだな。手術のことはわからないが、あいつらが失敗することを思い描けないな…」


 そこまで凄いんだ…


「状況の方はこの町にいる限りは大丈夫だろう。ハルク様も含めて町の人はお前に感謝しているからな」

「ハルク様も感謝しているんですね」

「詰んでいた状況から、逆転の目がでたんだ。当たり前だろ。…ああそうか。お前は屋敷に招待されてないからか?」

「招待は遠慮したいですが…」


 感謝の言葉くらいと思うのは小さいだろうか…


「そうだろ。お前はそんなのは嫌いだろうから私が断った。感謝を直接言いたいと言われたがそれも危ない」

「なぜでしょうか?」

「招待以外で直接礼をするのに他にどんな方法がある?屋敷でも町の中でも秘密裏に会って感謝の言葉をかけることくらいだろ?」

「そうですね」

「それはハルク様が事前にお前にお願いして討伐してもらったと疑われる恐れがある」

「そうなりますか?」

「そうだろ。秘密裏に会うんだから、なにかやましいことがあると思わないか?それは状況的に『ウルウルフ』のことが一番怪しい」


 確かに知らない他人だったらそう思う。


「そう思われたら、ハルク様の運はお前の手がなくなったことで運が悪いと言われるし、お前にも危害が加わる可能性も高くなる。だから止めた」

「招待なら問題なかったんですか?」

「それはそうだろ。町をそれにハルク様を救ったんだからな。招待を受けるか?ハルク様も喜ぶだろう」

「いえ、遠慮しておきます。マスターから聞けたので満足です。と伝えておいて下さい」

「わかった」

「この町じゃない場所では違うんですか?」

「もちろんだ。この町ではお前を殺すことは難しい。それはハルク様に喧嘩を売る行為だからな」

「なぜですか?」

「当たり前だろ。自分を救ってくれた人を自分の町で殺してしまったら面目がなくなるだろ。お前が知っているお前を嫌いな奴らも、手を出さないのはそれが理由だ」

「犯罪になるからと思ってました」

「冒険者が…いや冒険者に限らず、人がそんな利口な奴ばかりだと思うな。そんなのやる奴らはやるぞ。気分だったり気性だったりでな」

「そうなんですね…」


 平和な日本でもネットやワイドショーをざわつかせる人達がいたもんな…この異世界じゃ当然か…

 どこかで自分にはふりかかって来ないと思っていた。


「もちろん。そんな奴ばかりじゃないってことはわかるだろ?」

「はい。もちろんです。マスターやミリムさん、ゲルマールさん達にケルトさんやウナクさんに…」

「もういい。それでだ。もしもお前が冒険者を続け、この町を出ていくのなら、ある程度強くならないといけない。割にあわないと思わせるくらいだ。簡単に殺せるなら殺したい奴はたくさんいるぞ。だからゲル達はお前を強くするためにやっているんだろう」

「ありがとうございます。いろいろとわかりました。でもよくこんな厄介者にギルドで働いてほしいと思いましたね」

「まぁ、私が敵になってでも、お前を殺したい奴なんかいないからな」

「…凄い自信なんですね」

「そうだな。私はあいつらと同じで世界一の魔術師だと思っている。自称だがな」

「…それで多分なんですか?」

「それはそうだろう。私が知らない奴なんか知らん。頭が死ぬほど悪い奴、お前を絶対に殺したい奴、それに私のことを雑魚といえるくらい、強い奴がいるかもしれないからな」

「そんな人達に会いたくないです」

「私もだ。それでおかわりいるか?」

「はい。ありがとうございます。次は果実水がいいです」


 それからいくつか雑談をしていた。

 マスターの実力や冒険者として、心構えや大事なことを聞いた。

 マスターの実力はぼかされたが、心構え等は教えてくれた。


「もう夕方だぞ。ミリムの助けにいかないのか?」

「もうそんな時間なんですね。ありがとうございました」

「あぁ、気をつけてな」


 応接間から出てギルドに向かった。


 僕はどうしたいんだろうか…


 ギルドに着くまで、いろんなことを考えていた。


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