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 衝撃の提案から次の日。

 今日になっても考えていた。


 とりあえず、日課になっているランニングを始めた。


 走っているとゲルマールさんを見つけた。

 目が合ったので、会釈をしてその場を去った。ゲルマールさんは仲間になりた…

 期待した目でこちらを見ていた。


 他の人にも会いそうな気がしたので、僕はランニングを切り上げて家に帰った。


 家に帰り、筋トレをしているとギルドマスターが家から出てきた。

 今日は珍しく休みみたいだ。というか初めて休んでいるところをみた。

 ついでにいうとあれ以来はじめて会った。


「おはようございます」

「おはよう。頑張っているらしいな。私は見ていないが噂は聞いている。無理しないようにな」


 嫌味の一つくらい飛んでくるかと思ったが…


「はい。ありがとうございます。僕もマスターの話をゲルマールさん達から聞きましたよ」


 驚いた後、嫌そうな顔をした。


「あいつら…どんなふうに聞いたか知らないがあまり信じるな」

「いや、別に悪いことは聞いていませんよ。例えば出会いからですけど」


 昨日聞いた話をした。途中にご飯を食べに出かけた。

 マスターはご飯を食べに出てきたようで、話はご飯を食べながら話した。


 マスターは相づちや違うことなどを指摘しながら聞いていた。

 不服そうにすることもあったが、終始懐かしそうにそして楽しそうにしていた。


 マスターに改造の件を相談してみた。


「うーん…お前はなんで悩んでいるんだ?」

「えっ!?普通悩まないですか?自分の体を改造するんですよ」

「いや、お前は冒険者を続けるんだよな。そして冒険者として食っていく…出来れば成功するつもりなんだろう?」

「はい。出来れば…」

「なら改造をした方が強くなるだろう。そして強い方が冒険者として成功できる」

「でも失敗するかもしれないじゃないですか」

「それならするな。魔物討伐を諦めろ。ここで失敗するからと諦める奴に魔物討伐もする冒険者はむいてない」


そんな暴論だ…そこまで言われないといけないことなのか…


「納得していないみたいだな。そうだな。お前『ウルウルフ』に襲われた時、誰かに助けてもらいたくなかったか?」

「はい。助けてほしかったです」

「そうだろ…じゃあ仮にその時に私が…いや冒険者が助けにきたとしたらどうだ?」

「嬉しいですし感謝します」

「うん。それでその冒険者がやっぱ無理ですと言って、お前を置いて帰ったらどうする?」


 あぁ…なるほど。マスターの言いたいことがわかった。


「悲しいですし、恨むかもしれません。だから依頼を受ける人もそういう気持ちで出すということですか?」

「そうだ。それと強くなる可能性があるのに尻込みするような奴は、先ほど話した冒険者よりもむいてない。一応そいつは助けてみようとは思ったんだからな。助ける実力がなかっただけで」


 やらない天才よりやる馬鹿か…


「確かにそうかもしれません…」

「そう落ち込むな。もし、食うのに困っているなら、私がお前を雇ってやろうか?お前は口がたつし高い計算能力もある。迷うくらいならやめとけ。結論が出たな」

「ありがたいですけど…」

「まぁ、急がなくてもいい。お前のことだ。自分で決めろ」

「ありがとうございます。そこまで評価されるようなことしました?」

「そうだな…ああいう言い回しが出来る奴は少ない。平民では特にな。話の裏に嫌味をいれれる奴は、貴族を相手する時に役にたつ」


 うげっ…貴族を相手にさせられるのか…

 顔には出なかったはずだ。


「嫌味に気づかれても恨まれない限界も知っているようだしな。それに限界を間違えても弁明もできる」

「いえいえ、僕はそんなつもりじゃありませんでしたよ」

「全くそういうところだよ。言質をとらさないしな」

「いえいえ考えすぎですよ」


 ジトッと僕を見てため息をついた。


「まぁ本当にそんなつもりがなくても、計算器としては役にたつから問題ない」

「計算器ですか…」

「まぁミリムやウナクなんかは確実に喜ぶだろう。仲も良いようだし、ミリムは計算が苦手だから特にだな」

「そうだと嬉しいです」

「そうか。ギルド職員になってくれるか」

「えっ!?」

「フフフっ、冗談だ。やっとお前のあせった顔を見れた。それにしても今日は迂闊だな。下手をするとさっきので詰みだぞ。特に貴族相手だとな」


 ビックリした。あれでダメなのか…

 貴族相手に仕事なんか無理だな。


「まぁお前は一度言えばわかるだろう」

「そんな優秀じゃないですよ」

「そうか。まぁそれは見ていけばわかる。他に相談ごとがあるか?」

「しつこいようですが、ゲルマールさん達は僕のためにしてくれているんですよね?」

「当たり前だろ。町の奴らは感謝している。あいつらは特に感謝しているだろうからな。もちろん私も感謝している。なかにはムカついている人もいるが聞くか?」

「いえ、大丈夫です。何人か心当たりがあるので…」

「そうか…お前も知っていたのか…ゲル達に聞いたか?」


 マスターは驚いていた。馬鹿にしないでほしい。


「いいえ。ゲルマールさん達には聞いていません。何人か僕のことを睨んできますからね。情報通とは違うと思いますけど…」

「…あぁ。そういうことか…ちなみに私が言ったのは、そんなちんけな奴らじゃない。お前は会ったことはないだろ。ああ、この町に来る前は知らないがな」


 えっ!?どういうことだろう。


「心当たりがないようだな。仕方ないか…ヒントをやろう。お前がこの町に来なかったらどうなっていたと思う」


 僕が来なかったら…なんだ?

 あっ、『ウルウルフ』は討伐できなかった?まさか!


「理解できたようだな。多分正解だ。おかしいと思わなかったのか?『ウルウルフ』は見つけさえ出来れば高ランクの冒険者にとってそこまで強い訳ではない。あいつらも探したみたいだしな」


 あれを高ランクの人は普通に倒すのか…

 凄いな。


「あの三人は元Aランクといっても引退した身だ。それなのに倒すことが可能なくらいの強さだったんだぞ。現役ならCで可能。Bくらいのパーティーで問題なく倒せるだろう」

「え、でも見つからなかったからなんじゃ」

「そうだ。見つけられなかった。この町の高ランクパーティーではな」

「他の町の冒険者なら可能だった?」

「その通りだ。敵を探すのが得意な奴がいるパーティーだったら可能だっただろう。さてあれの討伐報酬は高くなかったか?」

「200万ルンだったと思います。ほとんど治療費でなくなりましたけど…」

「そうだ。さてなぜ他の所から来なかった?素材も売れば500万くらいになっただろう。なぜだ?」


 まさか!?


「圧力がかかっていた…でもなぜ?困っている人を助けるのが冒険者じゃないんですか?」

「確かにそうだ。そうあるべきだと私もそう思う。だがな…あっ…もしかしてあの三人の価値を知らないのか?」


 あぁ…宝くじ(あれ)は本当のことだったのか…


短剣(これ)が3000万リルと聞きました。それとタルアさんの防具一式が3億リルだとも…」

「そうだ。3億リルだぞ。それに中古でだぞ。オーダーメイドじゃない防具一式でだ」


 そうか…オークションって聞いたから高くなるものだと思っていたけど、普通に新品よりは安くなるよな。

 タルアさんは生きているんだし…


「それにその短剣も、そこまで良い素材で作っていたわけじゃない。それなのに3000万だ。ボッタクリだろ?極めつけはケリーの奴だな」

「ケリーラークさんがどうしたんですか?」

「ケリーに治療してもらいたい奴。診てもらいたい奴がどのくらいいると思う。ケリーを知っているなら国中の奴らがそうだろう。私もなにかあったら診てもらいたいな」

「もしかして陛下でもですか?」

「あぁ、きっと診てもらいたいだろうな。…だが勘違いするな。陛下は今回の話に関係ないからな。そんな青い顔をするな」


 頷いた。

 そういえば、マスターは冒険者達のことは奴というけど、ところどころで人を使っている…


「でもそれに準ずる人達が…」

「まぁ、そういうことだ。ついでに高ランクの冒険者達もだ。ゲルの武器、タルの防具、ケリーの治療を受けとれるチャンスがお前のせいで潰れたわけだ」

「確かに恨まれそうです」


 お腹と頭が痛くなってきた…


「こんなことをする奴に、又はそれを利用する奴に自分の技術を貸したくない。と三人は言っていた」

「確かに気持ちはわかります」

「しかし町の人達は困っている。町の人達と職人のプライドの板挟みだったんだ。それを助けたお前に感謝しないわけがないだろ」

「そうだったんですね」

「そうだ。まずは三人の力を利用したかった人達だな」


 「まずは」だって…もういっぱいいっぱいだ。


「次に…いや、ここからは場所を移そうか。ちょっとマズイ内容も含んでくるから屋敷に帰るか」

「さっきも十分マズイ話をしていたような気がするんですが…」

「いや、さっきの話は町の奴なら全員知ってる。子供は除いてな。そうだろう?その人達は作って、又は治療してほしいんだから住民に教えるだろう。苦しいのは三人のせいだってな」


 うわぁ…貴族が使いそうな手だ…


「そうなんですね。本当に三人は板挟みだったんですね。あくどいですね…」

「だから英雄なんだろ。たまたまなのだろうが、弱かろうが、記憶がなかろうがな…高位貴族や高ランク冒険者達に間接的に喧嘩を売ったんだから…」


 マジか…普通にかなり強い魔物だからだと思った…

 それか子供だからか…

 『ウルウルフ』にそんないわくがあるなんてわかる訳がない。


「喧嘩売っている訳じゃありません」

「そうだろう。だが運は悪くないようだぞ」

「えっ…手もなくなったんですけど…」

「それだ。そのお陰で今も無事なんだぞ。私もとりなしが楽になった。もし無くなっていなかったら、お前がなくなっていたかもな」


 えっ!?それって死んでたってこと?

 それならマスターは命の恩人だ。


「そうなんですか?マスターがとりなししてくれたんですね。ありがとうございます」

「そんな忙しい時にお前が銅像の件で来たんだ。まぁ、お前のせいじゃないがな」

「そう言ってくれる助かります。それで皆が知らない話もあるんですか?」


 これ以上聞きたくないな…


「ある」

「もうおなかいっぱいなんですけど…」

「聞かないか?それでもいいが…一応、町や昔の仲間を助けてもらったお礼をしてるんだぞ」


 ここで聞かなくても状況は変わらないか…


 お願いすると店を出た。マスターの奢りだった。


 なんか誰かに狙われている気がしながら、マスターの後を追いかけた。


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