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「あ、あのっ!タルアさん!皆さんの関係ってどんな関係なんですか?」
なんかマズイ流れだったので、少し無理矢理だったかもしれないが話を変えた。
「…そうだね。この二人とは腐れ縁だよ」
それから三人の話を聞いた。
少し険悪になりそうになった時もあったが、なんとか話を変えて喧嘩は阻止した。
話をまとめると、ゲルマールさん、タルアさん、ケリーラークさんは子供からの付き合いらしい。
ゲルマールさんとタルアさんは幼なじみで、ケリーラークさんは引っ越してきたらしい。
最初はケリーラークさんをゲルマールさんがいじめていたらしく泣かされていた。
(ゲルマールさんは可愛がってるつもりだった)
それにタルアさんが、そんなケリーラークさんに修行をつけたらしい。
(ケリーラークさんはこれもイジメだと思っていた)
タルアさんの修行が終わった後、ケリーラークさんはゲルマールさんに挑み一矢報いたらしい。
(ゲルマールさんは譲ってやっただけらしい)
それから三人はよくつるむようになり、成人になると冒険者になった。
冒険者になって一年ほどたったころに、ケルトさんとケルトさんの幼なじみの女性、そしてなんとギルドマスターと出会い、紆余曲折あってパーティーを組んだらしい。
23歳という若さでAランクとなり、このままいけばSランクと噂されるほどイケイケの状態だったらしいが、25歳の時にケルトさんとケルトさんの幼なじみとの間に子供が出来て引退となった。
その時ケルトさんは続けるつもりだったが、四人に説得されて引退したらしい。
ゲルマールさんの「お前冒険者なめているだろう。自分は無事だと思ってるだろう。だから簡単に続けるって言えるんだ」の言葉がささったらしい。
本人いないから本当にささったのかは分からないけど…
それからしばらくは、二人の代わりを入れて活動していたが、限界を感じてケリーラークさんが辞めると、しばらくしてゲルマールさんが辞めてしまった。
(タルアさんに言わせればゲルマールさんとケリーラークさんは根性なしらしい)
(ケリーラークさんによれば二人が辞めて戦力よりそれ以外が痛いらしい。こんな感じだから割とすぐに喧嘩になるのを、ケルトさんが天然ボケで、そしてケルトさんの幼なじみが今の僕みたいに間をもっていたらしい)
それから一年はタルアさんとギルドマスター二人、四人の代わりとで頑張っていたが、理由はわからないが旧二人と新四人との間で揉めて二人は引退したらしい。
それから三人は別々の道へ進んだが、三人は天才らしくすぐに別の脚光を浴びたらしい。三人とも国、いや世界で一番だと自称している。
腕はいいが客を選ぶし、冒険者時代に貯めたお金もあるので客を選べるらしい。
お金に苦労しないなんて羨ましい…
それで『ウルウルフ』の騒動の時に、ゲルマールさんは最高の武器を10品、タルアさんには最高の防具を5セット、ケリーラークさんは患者を10人診れば、増税せずにすむと子爵から圧力がかかっていたらしい。
嫌だったので、ケルトさんを誘って何度も四人で探したらしいが、その時は出てこなかったみたいだ。
「それにしてもタルはケチ臭いな」
「あぁっ…なんだって…」
「いや。お前。皮の装備くらいサービスしろよ。お前が作った訳でもないんだろ?」
「はぁーっ分かってないね。私が作ったものじゃないからサービス出来ないんじゃないか。あんたは弟子が作ったものを勝手に無料であげるのかい?」
確かに弟子が作ったものを、勝手にしかも無料で渡されたら弟子は悲しむかも…
「なるほどな…それは悪かったな。それじゃあ、お前が作った防具を無料にするんだな?」
「当たり前だよ。天下のタルア様を見くびるんじゃないよっ!」
なんか勝手に決まった。
「いやいや。それは悪いですよ。ちゃんと適正価格で買いますので…」
「テリー。あんた私をなめてるのかい?私が作った防具があんたに買えると思っているのかいっ!オークションで買うと3億リルくらいだよ」
た、宝くじじゃないか…
「そんなに高い物を受けとれません」
「あんた受けとってんじゃない。その短剣1000万リルくらいはするよ」
「馬鹿野郎。三だ。テリー以外に渡すならな」
さ、3000万…この短剣で宝くじミニ…
僕には過ぎたものだ。
「返しますって言ったら怒るぞ」
ゲルマールさんが笑顔で言った。
なんか胃が痛くなってきた。もうどうとでもなれ!
「タルアさん。僕の防具よろしくお願いします」
「最初からそういえばいいのにさ…困った子だよ全く」
「ありがとうございます」
「俺も作ってやるからな。『ウルウルフ』の素材を使ってな」
「羨ましいよ。全く。毛皮は売ってしまったんだろ。憎き『ウルウルフ』で私も作りたかったよ」
「公爵様が欲しがっていたみたいなので…」
「聞いたよ。全くシーラには困ったものだよ」
「仕方ないですよ。シーラさんも立場がありますから…」
シーラはギルドマスターの名前だ。
なんか疲れた。
僕への提案はなんだろうな。
「テリーさん。私もテリーさんが私に診てほしいと思う人がいたら一度だけ、どんなに私がその人のことを嫌いでも、診て全力で治します」
「へぇー…あいつでもかい?」
「はい。もちろんです。でもテリーさんがあの人を助けるとは思いません。もしあるのならやむを得ない事情があるのでしょう」
「確かにそうだ!脅されてとかな…あり得そうだ」
あり得ないでほしいんですけど…
「あいつ」のこと聞いたら教えてくれるだろうが、長くなりそうだな…
「師匠達…私の話が全然出ないのですが…」
「それはすまなかったねぇ。この子はリーナ。私の弟子さ」
「違うだろっ!寝言は寝ていえっ!俺の弟子だ!」
「なにを言っているんですか?頭の病気はご健在ですか?リーナさんは私の弟子です」
あぁリーナさんの話があったか…
いつになったら聞けるのだろうか…
しばらくリーナさんは誰の弟子かという言い争いがはじまったが、話をまとめると、三人にギルドマスターが加わり四人の弟子らしい。
詳しく話すと初まりはゲルマールさんが赤ちゃんのリーナさんを拾ってきたが、育てられずに経験があるケルトさん夫婦が引き取ることになった。
三日に一回は四人のうち誰かが行ってたみたいだ。
リーナさんが7歳くらいの頃、物作りの才能があることをゲルマールさんが見抜いた。
しかし鍛冶場は子供には危ないので、タルアさんに預けてみた。するとリーナの実力はみるみるうちに上手くなったので教え方が上手いとタルアさんは自慢した。それが10歳の頃だ。
するとリーナさんが天才なだけだとゲルマールさんが反論して、それならば全員三年ずつあずけようということになった。
クジでマスター、ゲルマールさん、ケリーラークさんの順番になった。
マスターは魔法を、ゲルマールさんは鍛冶を、ケリーラークさんは治療魔法と治療法を教えた。
ゲルマールさんの言う通り、天才だったのか三人のところでも才能を発揮した。
しかし当の本人であるリーナさんは、四人の師匠達に勝てる気がしなかったので、道具屋を始めたらしい。
なにかの主人公みたいだ。
リーナさんによると自分は二流、良くて一流らしく、四人の師匠達のように超一流ではないと自分で言っていた。
ヒヨッコと一流の差より、一流と超一流との差のほうが大きいとなにかで聞いたな。
それで三人の言い分だが、ゲルマールさんは自分が初めて会ったし才能を見抜いた。更に皆のところへ学びに行かせた。
タルアさんは一番目最初に教えたし、学ぶ姿勢や効率的に覚える方法を教えた。
ケリーラークさんは最後に教えたし、指導した期間が長いようだ。
結局僕とリーナさんがとりなして事なきを得た。
確かにケリーラークさん出ていった時の気持ちがわかる。
それでやっとゲルマールさんが考えた僕の武器の話になった。
僕はただ単に武器を紐で腕に固定すればと思ってゲルマールさんに言ったのだが、それだけならこんな大ごとにはならないと思う。
話を聞くと本当に大ごとだった。空いた口が塞がらない状況だった。
1、リーナさんが作った魔道具を作る
2、魔道具が僕に干渉しないようにタリアさんの防具を魔道具に取り付ける。
3、ケリーラークさんがその魔道具を僕につけるための手術する。
4、魔道具に取り付ける武器をゲルマールさんが作る。
なんか僕の改造計画だった。マット過ぎる…
成功率は悪くないらしい。
というのも、自分は失敗しないけど、他の奴らが失敗するかもというものだった。
そんな無責任な…
いや自分の仕事は失敗しないと言っているからそんなこともないのか?
まあそこはどうでもいいかな。
なんでも必要な物を作って準備しているらしい。
あとは僕の同意があればすぐに改造を始められる状況だ。
ちなみに紐で取り付ける案は紐が緩く縛るとすぐに外れるし、だからといってキツく縛ると長時間活動した際に腕が壊死して、腕が短くなるか最悪死んでしまうみたいだ。
さすがにすぐに返答が出来なかった。
少し考えさせてください。と言って治療院を出た。
改造か…どうするかな…
眠るまで悩んでいた。