プロローグ
前作からお読みいただいている方、ありがとうございます。皆さんのおかげで書けています。
初めての方はこれからよろしくしていただければ幸いです。
「おかしいだろうっ!なんでクラス転移初日で僕一人なんだ…そんなのおかしいだろう…」
僕はこの世界の常識に振り回されていた。
夏休みが終わり9月。
夏休みが終わりやる気がなく、まだ残暑が辛いこも以外なにも変わらない日、いつものように教室で数学の授業を受けていると大きな地震が起きた。
「机の下に隠れろ!」
先生の指示に僕とほとんどのクラスメートは従ったが、パニックだったからなのか、理由は分からないが何人かは指示に従わず教室から出ていった。
勝手に出ていったクラスメートを追いかけて先生も出ていってしまった。
机の下に隠れていると窓ガラスや蛍光灯が割れたりしていた。
なかなか揺れがおさまれず、というかどんどん揺れが激しくなった。
床に亀裂が入り、机に隠れながら恐る恐る天井を見ると床よりも大きな亀裂がはいっていた。
天井が崩れても机の防御力ではなんの意味もなく、床が崩れてもこの教室は三階にあるので、結果はあまり変わらない。
無信教の僕ですら神様に祈り、他のクラスメートも変わらないようだった。
しかし遂に天井に限界がおとずれ、天井が崩れようとしていた。
すると祈りが届いたのか、教室中央から魔法陣が浮かび、眩しい光が教室全体を包んだ。
目を開けると教室ではない真っ白の空間に、僕達二十二人の生徒と偉そうに座っている老人がいた。
これはまさか…いやそんなはずは…でも…
混乱しながらも少し…だいぶ興奮していた。
僕以外にもそんな奴は何人かいた。
近年、異世界転生物のアニメがテレビ放送したためだろう。
『私はお前達の上位の存在だ。分かりやすくいうと神だ。お前達は元の世界では死ぬ運命だったが、私が助けてやった。お前達には私が管理している異世界に行ってもらう』
老人が喋ると大部分が困惑し、親やこの場にいない友人に会えないことを悲しんでいたり、老人を睨んだりしていた。
「ふざけるな!俺達を元の世界に帰せ!」
クラスの一軍。リア充代表の西園寺君が老人…自称神に向かって叫んだ。
すると大多数の他のクラスメートも「そうだ!」や「帰せ!」等と西園寺君に同意していた。
僕はハイハイそれね。とのんきに思っていた後、(西園寺君は勇者なんだろうな…)や(彼女は聖女で、彼は…)とクラスメートのジョブを予想していた。
すると自称神は『分かった』と言って、指パッチンすると西園寺君とそれに同意していたクラスメートの姿がなくなった。
残った生徒は僕を含め七人だけだ。
それを僕を含む七人のクラスメートは「え…?」「はっ?」と一言だけ発して沈黙が訪れた。
…
「…さ、西園寺君達…いや、えっと…さっきまでいたクラスメートはどうしたんですか?」
恐る恐る僕が訪ねた。
『あやつらは望み通り元の世界に帰してやった。まぁ死ぬこと。それが奴らの望みだったからのう』
本当にあの瞬間に…教室の天井が落ちた時に戻したのか…
『あやつらがどうなったか見るか?』
僕を含むクラスメートは首を横にふった。
あの教室に戻ったクラスメートは万が一にも助からないだろう…
自称神が助からないと言っていたので、奇跡なんかが起こることもなく、本当に助からないだろう。
なにが楽しくてクラスメートの死体を見ないといけない。
それにしてもヤバイな…
小説では、神様が折れてチートなり転生特典つけて送りだすところじゃないのかよ…
それがテンプレだろう…
『なぜ私が折れないといけない?助けてやったのは私で、別にお前達に頼んでいるわけでもない。私の気まぐれで私が管理する世界に転生させるだけだ』
心を読めるのはテンプレかよ…
『ふむ。それだけじゃないぞ。お前達の予想通り、剣と魔法の世界じゃ。勿論魔物なんかもおる。お前達の住む世界に比べるまでもなく危険じゃな』
おいおい。そんな危険な世界を転生特典なしで生きないといけないのかよ…
『そんなことはないぞ。というか渡さなければお前達など早々に死んでしまうじゃろ』
おぉっ!くれるのか。よかった。
「グフっ…ぶふふっ。それなら即死魔法と無詠唱を希望しますぞ」
クラスメートの木村君が言った。
木村君の見た目は一昔前の『THEオタク』って感じの人だ。
木村君なら転生物の小説やアニメを観ているだろうし僕より詳しそうだ。
それにしても即死魔法か…
確かに即死魔法はチートの代表でもあるし、腐らないだろう。さすがは木村君だ。
でも大丈夫なのか?
『即死魔法と無詠唱じゃな。よかろう。本来なら神力が足りないところだったが、元の世界に戻りたい連中が多くいたからのう。大丈夫じゃろ』
……
なんて言えばいいんだ…
「…礼をしますぞ」
それをかわきりに二人のクラスメート、前田さんと藤木君が木村君に相談していた。
藤木君は木村君と仲が良いので分かるが前田さんは驚いた。
前田さんはクラスの一軍ではないが、今は亡き西園寺君と付き合っていると噂されていた。聖女だと予想していた人だった。
実際付き合っていたは分からないが…
僕は驚きながら自分のチートはなにがいいか考えていた。
「あの!言語能力や向こうの世界の詳しい情報を知りたいんですが…」
木村君に相談していた前田さんは、相談が終わったのか挙手をした後、能力を決めていた。
なるほど…情報を制するものは世界を制するというもんな…
前田さんもよく考えているな…いや木村君の意見に賛同したのか…
『よかろう。言語能力と私の世界の情報じゃな。どれほどの言語能力と情報を欲しいのか?』
前田さんは木村君に少し相談すると「出来れば全ての言語能力と情報をください」と言った。
貰えるなら出来るだけ欲しいものな。
だがそれは欲張り過ぎないかと思ったが自称神は『よかろう』とその願いも聞き届けた。
その後、藤木君はなんでも作れる能力を頼み許可が出ていた。
僕ともう一人のクラスメート以外は、木村君達に相談をして能力を決めていた。
鈴木さんはテイム能力を、佐藤君は時空魔法にしたみたいだ。
ちなみに二人は付き合っている。
木村君。なんか主人公みたいだ。
これで決まっていないのは僕と中村君か…早く考えをまとめないと…
「俺はあんたを…神をも殺せる能力をくれ!」
僕と同じで現在ボッチの中村君が言った。
ボッチといってもクラスでもボッチの僕とは違う。
彼は中村君は元の世界に戻ってしまった人達と仲が良く、特に西園寺君とも仲が良いリア充だった。
それに加え中村君の彼女も一緒に戻ってしまった。
なぜ今もここにいるのか…それは彼はあの地震でも呑気に居眠りして、この場所でも居眠りしていた猛者だった。
さっき起きて前田さんに事情を聞いていた。
『ふむっ…鬱陶しいな』
そんな言葉を残した後、中村君の姿はなくなった。
……
『お前達なにを驚いておる。あぁ…それは君達の認識の違いだな。いつから神と対等になった?そうだな。お前達は移動中に羽虫が顔の周りにいたら殺したり、手で払ったりするだろう?それと同じことをしただけだ』
僕たちと羽虫が同じ…
『あぁ、私としたことが例えを間違えた。私とお前達との差はお前達と羽虫の差より広い。それなのに私を殺す能力が欲しい?調子に乗りすぎだろう?本当は私と会うだけでも光栄な事なんだぞ。跪せていないのは別にお前達が跪かせたとしても意味がないからだ。お前達を跪かせることなんて簡単だ』
急に胸が苦しくなり、膝をついて前かがみになった。クラスメートも同じだ。
そう、僕達は自称神に跪いている格好になった。
「ゆ…ゆ、許して欲しいですぞ」
跪いている状態で木村君が謝り、それに続けて周りからも謝罪の言葉が出ると胸の苦しさは無くなった。
『まぁお前達は愚かな事は知っているからな』
僕達がお礼をいうと頷き、許そうと言いながらも何か考えていた。
『あぁ分かった。羽虫じゃなくてゴミだ。部屋にゴミがあったら掃除するだろう。それと同じことをしただけだ。うん。これだな。お前達にも分かりやすいだろう』
正直ムカついたが、すぐにヤバイとその考えを消した。
『おいっ!後はお前だけだぞ。早く決めろ。さっきの奴みたいになりたいか?それとも能力なしで私の世界にくるか?』
バレたかと思った…いやバレていたが見逃されたのか?今はそんなことはどうでもいい。
早く決めないといけないが衝撃の連続で考えていたことを忘れてしまった。くそっ。
「えっと、それならこの姿…人間の姿で空を自由に飛ぶ能力を下さい」
しまった…
焦り過ぎてなぜかドラ〇もんの曲を思い出してしまいそんな能力を希望してしまった…
『…うむ。よかろう。それで間違えないな?』
なんだ?今の間は…
「はい。間違えありません。ただ確認なんですが空を飛べる時間は無限ですよね?それにスピードも思いのままで、その間は無敵ですよね?なにしろ自由にですから…」
ありがとう。ワン〇ース。名言集見ておいて良かった。それがヒントになった。
『こざかしい奴だな。一度約束してしまったのが不味かったな…』
そうだそうだ。約束は守るものですよ。
『しかし無敵には出来ない。考えてもみろ。無敵ということは神ですら倒せない=神より強いってことになるだろう。そんな能力は無理だと愚かなお前でも理解出来ただろう?』
くそっ。これは理解しないとダメだな。反抗したしたところで中村君と同じ結末になる気がする。
『理解出来たようで良かったな。本当にこざかしい奴だ。誤解しないでほしい。私も約束は守りたいからな』
やはりごねたら、神より強い=排除対象になるところだった。
『私からは正解とも不正解とも言わないよ。それと神以外は無敵ってのも無しだよ』
…っち。先回りで潰された。
「それなら、飛んでいる間はあなた以外にはバレないようにして下さい。それと着陸と着地の時だけでいいので無敵にして下さい。そうしないと死んでしまいます」
『よかろう。その代わりスピードや飛行時間は、お前の訓練次第にしろ』
「そんな…それだといつになったら空を飛べるようになるか分かりません」
『安心しろ。空を飛ぶ方法は教えてやる。お前がすべきことは魔力を増やし、魔力の循環効率を上げることだ。魔力が増えれば飛ぶ時間が増え、魔力の循環効率を上げればスピードも上がるだろう』
うーん。
『納得出来なければこの話はなしだ。今からでも別の能力にしたらどうだ?』
ここまでか…もう少し粘りたかったが…
「いえっそれで大丈夫です。それでお願いします」
『本当に良いのか?納得出来ていないようだが』
「大丈夫です。問題ありません」
分かったと言って指を鳴らすと、空の飛び方が頭の中に入ってきた。
なるほど。こうすれば空を飛べるようになるのか…
手と足が噴射口の役割なのか。前に手足を出せばブレーキになる。
『うむっ、準備出来たな。それではお前達は私の世界へ招待しよう』
部屋全体が白に包まれ、目を開けるとそこには…
お読みいただきありがとうございます。