04.新たな拠点
――
しばらく歩いた子供三人はようやく新たな拠点へとたどり着いた。
「つ、疲れたぁ・・・」
小さな女の子は崩れ落ちるように床へとダイブしていた。
「あ、アンナ!せめてもっときれいなところで・・・・・」
それもそうだろう。
『安全なところへ行こう!』
と自信満々にいった女の子は、今や"地球"より異世界の方が長いのだ。
そのため地球にある自身の家の場所なんて覚えていなかった。
そして荒れ果てた街並み…。
体は子供でも中身はおばあちゃんである。
完全に迷子だった。
何度も同じ場所をグルグルまわったり、引き返したり戻ってきたり…。
ウロウロとするたび、ゾンビたちは女の子に近づきたいが近づけず一定の距離を保っていた。
そして、何とか【聖女】パワーで記憶をフル回転させた結果。
昔の家に辿り着くことができた。(聖女は関係ない……はず!)
そのため、皆歩き疲れていたのである。
「さて。積もる話はあると思うけど、まずは体をきれいにして腹ごしらえだよね!!」
すでに体力の限界の男の子と女の子を無視して、【聖女】パワー全開の女の子は言い放つ。
「えっと……。僕たちは何をすれば……」
「私がお風呂に入れてあげるね!!!」
「「…え?」」
この時の男の子の顔はきっとこれから先ずっと忘れることはないだろう。
―――
その後、お風呂に入り、たくさんの御飯を食べることが出来た三人だった。
そしていつの間にかきれいになったリビングでゆっくりと座りながら三人は今さらな自己紹介を始める。
「私は、吉沢空。年は忘れたわ!この年になると年の1歳や2歳なんて気にしてられないからね!!!」
その発言に男の子と女の子はまた困惑の顔になる。
見た目12歳ぐらいの女の子が、この年になると、なんて言っているのだ。
「さて。二人のことも教えてくれる?」
すると、男の子が先に話し始めた。
「あ、はい。僕から!僕は高野蓮。8歳で小学三年生です!」
「キャー―――♡可愛い♡」
ソラは可愛らしい蓮をみて、大興奮してしまい、その様子をみた蓮とその妹は若干引いていた。
「「・・・・・・・」」
「コホン……。ごめんね!次はそこの可愛い女の子かな?」
「はい!私、高野安奈。4歳です。幼稚園のひまわり組です!」
「あぁ…。二人とも…可愛いわね…。でもなんで二人ともあんなところにいたの?親御さんは?」
こうして、蓮と安奈から、二人に何が起こったのか、そしてこの世界に起こっていることを知ることが出来たのだった。
「・・・・・・そう。つらかったわね。」
すると、安奈の目から涙がポロポロと流れだし、服の端で拭いても拭いても止まらないようだった。
「軍人さん。ずっと安奈とお兄ちゃん守ってくれたけど……急に私たちいらないって・・・・・」
すると、蓮が安奈を抱きしめながら話し始めた。
「……軍人さんはいい人だから……新しい女ができるまでは僕たちを守ってくれてたんだ。」
そういうと蓮は、安奈を抱きしめながら涙をぐっとこらえながらまた話始める。
「…だけど、私と子供どっちが大事がを聞かれたとき……。軍人さんは女を取ったんだ・・・」
「え?なに?最低な大人もいたもんだな?」
子供の大好きなソラは、この二人を追い出した人たちも、天秤にかけた女も、そして子供たちを見捨てた軍人にも激怒していた。
「とにかく、今は二人ともゆっくり休んで!そして今後どうするかも一緒に決めましょ?」
すると安奈がまだ止まらない涙を流しながらソラに話しかける。
「お姉ちゃんは……私とお兄ちゃんのこと……捨てたりしない?」
するとソラは安奈と蓮の二人を抱き込む形の体制になりながら答える。
「捨てるなんてことするわけないよ。私は二人のこと大好きだからね!もし二人も私のこと好きになってくれるなら、ずっと一緒に居よう?そして、二人の大事な人も探して皆で一緒にいるの!どうかな?」
「ほ、本当???」
「…僕たち…何もできない子供だよ?」
すると、ソラは両腰に手をおいて胸を張りながら答える。
「子供を守るのが大人なんだよ?二人は安心して私に守られなさい!!!」
「「……」」
「お姉ちゃんも子供――」
「ふふん!!!こう見えても私は年上なんだよ!!」
前にも同じようなやり取りをしたような気がするが、ソラは相変わらず威厳はなかった。
「お姉ちゃん!……ありがとう!!」
「……ソラさん。ありがとう!!」
そんな蓮と安奈は、久しぶりにフカフカのベッドでゆっくりと睡眠をとることが出来たのだった。