03.高野蓮②
初めて間近で見たゾンビの姿は、僕も妹も恐怖で動けなくなるのには十分だった。
ただただ震えていた僕たちは、目の前にきたゾンビに腰を抜かしてしまった。
そして"殺される!!"
そう覚悟したとき、隣の部屋にいた軍服を着た男性が僕たちの部屋へとやってきてゾンビを倒した。
軍服の男性は、隣に住んでいる30代の元軍人さんだった。
どうやら、軍人さんはいつゾンビが襲ってきてもいいように、軍服を着ているのだそうだ。
やめたのに、なんで軍服をきているんだろう?
すきなのかな?
僕にはよくわからなかった。
どうやら軍人さんの隣の家のベランダが破られてしまい、戦闘になったところ、僕たちの家のベランダの壁も誤って破ってしまったとのこと。
軍人さんはものすごく謝ってくれて、そしてお詫びにと少し食料を分けてくれた。
だけど、どっちみち僕たちはここからでて食料があるところに移動する必要がある。
僕は、これから移動するという軍人さんについて安全地帯を求めて移動することを決意した!
そこから僕と妹、そして軍人さんはいくつもの生存者のいるところへと移動した。
どこに行っても、途中から来た僕たちを歓迎してくれるところはなかった。
最初に辿り着いた拠点は、内部で感染者が現れその拠点は崩壊した。
そこからも色々と回ったが、最近辿り着いた拠点は、食料をもらうには働く必要があるといわれ、軍人さんが僕たちの分まで働いていたが、結局軍人さんはその拠点の女性と恋人同士になったことで、僕たちはその拠点から追い出されてしまったのだった。
軍人さんは、最後まで僕たちのことを追い出すのはやめてほしいと言っていたが、恋人の女性が『私と子供どっちが大事なの?』の一言で、軍人さんもその後は何も言わなくなった。
そして、追放されてしまった僕と妹は当てもなく逃げ回っていたが、なんの知識もなく、ゾンビを倒す力のない僕たちは、安全に逃げ切ることは難しいだろう。
そんなことあの拠点の人たちみんな知っていたことだ。
つまり、死ねといわれて追い出されたのだ。
僕は、何もできず、妹を守りきれない自分自身がとても情けなくて泣き出したくなるくらい悔しかった。
だけど、そんなこと妹には悟らせちゃいけない。
僕は何があっても妹を最後まで守り抜くと決めたんだ!!!
僕は妹の手を強く握りしめながらゾンビたちに気づかれないように、新しい拠点を求めて歩き出す。
妹もそんな僕に大人しくついてくる。
だが…。
ゾンビに気づかれてしまった。
急いで走りながら隠れられるところを探すが、どこもゾンビが徘徊しており危険だらけだった。
そして、逃げて…。
逃げて…。
逃げて…。
そのたびに追ってくるゾンビの数だけが増えていた。
体力も尽きかけ、泣きたい気持ちをグッとこらえていた時、ついに妹の体力に限界を迎えてしまった。
「お兄ちゃん……。もう走れないよぉ……」
僕は焦った。
ここでとまったら、僕たちでは逃げ切ることはできなくなるかもしれないからだ。
「アンナ!ここは危ない!!もう少しだけ我慢してくれ!!!」
そういって妹の手を強く引いて逃げようとするが、目の前からゾンビが現れたのだ。
妹が立ち止まったおかげで目の前のゾンビにつかまらずに済んだが、後ろからもゾンビがやってきている。
間近でゾンビの集団を見た僕と妹は、今まで軍人さんに助けてもらっていたため、忘れていたゾンビへの恐怖を思い出し、腰が抜けて動けなくなっていた。
ここまでか・・・。
そうあきらめかけたその時、空から女の子が現れた。