02.高野蓮①
僕の名前は、高野蓮。8歳で小学三年生だ。
僕には兄と妹がいる。
兄は高校生になってからあまり家に寄り付かなくなった。
父さんも母さんもすごく心配しているけど、兄はその言葉をかけられるたびにすごく迷惑そうな顔をしていた。
僕も兄に聞いてみたんだ。
「いつもどこにいっているのか?」
そうすると兄は、言っていた。
「こんな家から出て独り立ちするんだ!そのためにバイトをしている」
と……。
意味は分からなかったが、兄はこの家から出たがっているということだけはわかった。
そんなある日、珍しく家には兄も、父も母もいた。
とても真剣な顔をしている父も母も、そして兄をみてとてもまじめな話だということはわかった。
「父さんと母さん離婚するんだ。どっちについていきたい?」
僕も、僕より幼い妹も困惑した。
どちらのことも大好きだ。
どっちについていきたいかなんて聞かれても、どちらとも一緒にいたいに決まっている。
すると兄は言った。
「父さんも母さんも俺たちがいるにも関わらず、他で恋人作って離婚だと?俺たちの気持ち考えたことあんのかよ?俺はまだしも、蓮も安奈も・・・・選べるわけないだろ?お前ら二人親として最低だよ!」
「「・・・・・」」
兄は両親の不倫を知っていたんだ。
だから、独り立ちをしようとしていたんだと僕の知識をフル回転させて悟った。
僕と妹は、結局その場で選ぶことが出来ず、一ヵ月の間考えておくようにと言われた。
だが、結局選ぶことはなくなってしまった。
それは、父も母もあまり家には帰ってこなくなったため、その代わり早く帰ってきてくれる兄と三人でゆっくりテレビを見ているときだった。
テレビが緊急ニュースへと切り替わったのだ。
―世界各国で暴動事件が発生―
―死んだ者が突如動き出し生きているものを攻撃―
―引っかかれたりかみつかれたりすると感染してしまう―
―復興の目途は経っていない―
「これは……!!!」
兄は急いで家を見回り、僕や妹もいつでも逃げられるように準備をしていた。
だが、僕たちの家はオートロックの高層マンションだ。
ベランダから外の様子を見てみるが、テレビで起こってる出来事は近くではまだ起きていないようだった。
そんな不安な気持ちを抱えたまま、僕たちは眠りについた。
翌日、目を覚ますと兄の姿がなかった。
メモが残されており、そのメモには
『食料をさがしてくる。二人はこの家から出ないように』
どうやら、父と母は、離婚が決まってからこの家から退去する予定だったらしく、食料が全くと言っていいほどなかったのだ。
最近はお金だけが兄に渡されているらしく、それで僕たちはやりくりをしていた。
僕は父や母より兄といたいな…と考えていたら、妹も気持ちは同じようだった。
それから一週間が過ぎたが、兄が帰ってくることはなかった。
僕たちの家の食料は尽きてしまい、水で何とか空腹を紛らわせていたが、水ももうすぐ尽きようとしていた。
ベランダから外を確認すると、
日に日にテレビの光景のようにゾンビたちが闊歩するようになり、外からは悲鳴がいろんなところから聞こえてくる。
僕と妹は、震えながらも耐えていたが、突如僕たちの平穏は破られた。
隣のベランダと僕の家のベランダの壁が破られ、僕たちの家にゾンビが入ってきてしまったのだ。