10.聖女の怒り
聖女というのは、一般的に気高い女性、神聖なことを成し遂げた女性を指す言葉だが、
異世界での【聖女】とは神聖な魔力、能力の持ち主の女性を指す言葉だった。
勿論、回復や補助などの魔法を得意とする女性を【聖女】を指すことも多いが、ソラの場合、全てのスペックに関して高かった。
つまりソラは神聖魔法も得意だが攻撃魔法も得意であり、剣術や弓も得意だったのである。
簡単な話、勇者パーティの面々は、国王に推薦されるだけあってかなりの実力者だったが、ソラに出会って自身をなくした結果、投げ出すということをやってしまったのである。
そして、聖女はキレたのだが…。
実はその怒りは、その本人たちに影響を及ぼしていたのである。
【聖女の怒り】が発動した結果、
軟弱な勇者はごっつい男に異様に好かれるようになり、以前より身の危険を感じることになり、
眼鏡好きな賢者は自身に触れると眼鏡が破損するようになり手元に置けなくなり、
男漁りの好きな弓使いは、魅力を感じなくなったといわれ誰も相手にされなくなったらしい。
どれも、【聖女の怒り】という割には重くなさそうに聞こえるが、本人たちは絶望するべき事柄だった。
その後、聖女に何度も謝り、【聖女の怒り】が解けるまで続いたとのことだった。
その【聖女の怒り】が今、発動したのだ・・・・・・・。
【聖女の怒り】が発動した瞬間。
一瞬だけマンションが揺れた。
それは本当に一瞬だったため気づくものは少なかった。
暴力団のメンバーたちは下品な笑いを上げながら上階へと向かっている。
ゾンビの世界となった今でもエレベータが安心して使えるのはここぐらいだろう。
そう思いながら目的地につくのを今か今かと待っている。
ずっと人妻などで人のもの奪う優越感に浸っていたが、管理人の娘にたまたま出会い、俺たちの相手にふさわしいと思って声をかけると管理人が異常に反応した。
そのため俺たちは管理人を放り出し娘のところへ向かう。
先にボスたちは楽しんでいるんだろうな。とソワソワしていたが、目的の階に着いたと思ってエレベータのドアが開くのを待つが、エレベータのドアがあくことなく下へと移動し始めた。
「はぁ?なんだこのエレベータ???」
どのボタンを押してもエレベータが止まることなく、1階へとついたと思ったら、扉が開くことなくまた上へと動き出す。
暴走族のメンバーたちはこの現象が異常だということはわかったらしく激しく苛立ち始めた。
エレベータの出入り口を殴ったり、ジャンプして降らしてみたり。
非常口の扉を開こうとしたり。。。。
だが、何をしてもエレベータの外に出ることも動きが止まることもなかった。
管理人の娘のもとに残っていた暴力団のボスたち数名は、目の前にいる管理人の娘をどのように弄ぼうか悩んでいた。
だが、まだ昼間にも関わらず目の前が真っ暗になったのだ。
皆が困惑していると視界が戻ってきたことに安堵するのもつかの間、目の前にいたはずの管理人の娘が消えていたのだ。
部屋の中や外をくまなく探すメンバーたちだが、どこにもいない。
すると、どこからともなく筋肉ムッキムキの男性が現れる。
この場に男性たちもかなりの筋肉でいいからだと評されるが、筋肉ムキムキの男性たちは1周りも二回りもでかかった。
そんな筋肉向きの男性たちは言い放つ。
「なぁに?君たち可愛いわね!私たちのおもちゃにしてあ♡げ♡る♡」
「「「ひぃぃぃぃぃ~~~~~!!!!!」」」
いつもは強気なボスたちだが、ガタイもよく貞操の危険を感じたら逃げだすのは無理もない話だろう。
だがしかし今は【聖女の怒り】の最中、逃げることはできないのである。
そのあとのことは想像に任せるとしよう。
とにかく、暴力団のメンバーたちは高層マンションから叫びながら逃げるようにさったのだった。
――
何が起こったかわからないおじいさんだったが、娘が無事だということを確認し大泣きしながら部屋へと戻っていくのだった。