00.プロローグ
「はぁ……はぁ……」
栄えていたであろう街並みはすでに荒れ果て、その中を小さい子供二人が何かから逃げるように駆け抜けていく。
「お兄ちゃん……。もう走れないよぉ……」
小さな女の子はまだ四歳ぐらいだろうか・・・。
女の子が先に体力の限界で立ち止まってしまった。
「アンナ!ここは危ない!!もう少しだけ我慢してくれ!!!」
そういってアンナと呼ばれた女の子の手を引いて走ろうとするが、すでに目の前から人影が現れる。
「クソ!!すでに…回り込まれてたか!」
男の子は後ろに逃げようとするが、すでに敵は後ろからも現れていた。
「か、囲まれた!!!」
兄は妹を抱きしめながら逃げ道を探すが、敵は二人の子供に狙いを定め、一歩…また一歩と近づいてくる。
「お、お兄ちゃん…」
女の子も男の子も、ぶるぶると震えながら絶望していた。
その時……
「子供を傷つけるなんて許しません!!!!」
空から急に降ってきたのは・・・・・・・
12歳くらいの女の子だった。
「…え??」
急に現れたのが、年の近い女の子だったのだ。
男の子も女の子も困惑の顔をしていた。
だが、突然やってきた女の子はそんなのお構いなしに敵に向かって言い放つ。
「さぁ!!!かかってきなさい!!私が成敗してあげる!!」
両腰に手を当て、胸を張っているようだが・・・・
ダボダボのシスター服のような格好で、威厳も何もかもが台無しになっていることを本人は知らない。
「に、逃げてください!!!ヤツラは・・・・生きている人間を襲うんです!!!だから――」
男の子は勇気を振り絞って、目の前の女の子に声をかける。
すると突然現れた女の子は男の子の方に顔を向ける。
「あ……。。。。」
男の子の顔は真っ赤になった。
それもそのはず、突然現れた女の子は絶世の美少女だったのだ。
「坊や。怖かったな。私が助けるから…。もう少し待っててね!」
「……坊や……」
男の子は、坊やという言葉にさらに困惑する。
年もそんなに変わらない女の子に【坊や】と呼ばれたのだ。
困惑するのも、きっとおかしいことではないだろう。
「とまれ!!!幼子に何をするつもりだ!!!答えろ!愚弄ども!」
「ぁ"ぁ"あ"-------」
近づいてくる人影をよく見ると、物凄く顔色が悪かった。
「あれ?…お主顔色が悪いようだが。というか…皆顔色悪いな??…」
そこで突然現れた女の子は周りを確認してみる。
「ぁ"ぁ"あ"-------」
どうやら、顔色が悪いという表現は不適切で、そもそもすでに死んでいる者たちのようだった。
死してなお生きているものを襲う化け物、"ゾンビ"へと変貌したものが、こうやって生きている者たちを襲っていたのだ。
「ふむ…。おかしいな。"地球"にはこのような化け物はいないはずだが…女神の奴。帰還先間違ったんじゃ…」
「ぁ"ぁ"あ"-------」
「余計なことを考えている暇はないな。生きる屍など!!私の敵ではな―――」
「ぁ"ぁ"あ"-------」
そのときふと気づく。
生きる屍たちは、女の子の一定の距離に近づいたあたりから、全く近寄ってこなくなっていたのだ。
「……え?なにこれ…」
女の子が戦闘態勢を解いてもゾンビたちが近づいてくることはなかった。
「「「……」」」
その時、それを見ていた男の子と女の子も、突然現れ倒すと息巻きながら現れたのに何も出来ていない女の子も…
三人ともしばしの間沈黙が訪れた。
「さ、さて!!!ここは危ないから二人とも安全なところに行こう!!」
「…え?あ…うん・・・」
「…お姉ちゃん…助けてくれてありがとう。」
「グハッッッ!!!…コホン。私は子供の味方だからね。」
「…えっと。君も子供じゃ――」
「坊や。いいかい?私はこう見えて年上なんだよ!」
そういって両腰に手を当てて胸を張るが、相変わらず威厳を感じず、ただただ背伸びしたおませな女の子と化していた。
こうして、三人は歩きながら帰路するのだった。
生きる屍のいる中堂々と・・・である。