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第1章 異国への逃亡

第1章 異国への逃亡


惑星アングローン。

そこには、いくつかのドーム都市がある。


中でも一番大きい都市がフィフス・ロンドン。

かつて宇宙のあちこちに移住を繰り広げた人類が最初にいた惑星、地球。

その国の一つを長とした連邦組織「コスモウェルス」。そこに属した都市だ。


しかし今、フィフス・ロンドンは荒れ放題だった。

その都市を治めていた女王の住む王宮が何者かによって爆破されたのだ。

あたしたちはそんな混乱から逃げ出そうとした。

ドーム都市間を移動する高速飛行船に密航同然に乗り込んだ。

目指すはフィフス・ロンドンからほぼ真裏の位置にある都市へ…。

その都市の名前はドリッテ・ゲルリッツ。

コスモウェルスに所属せず、

フィフス・ロンドンの人々とは全く違う言語を話す。


「ドリッテってなに?」

「この都市の言葉・ゲルミナ語で『三番目の』って意味だよ。」

アーウィンは本当に物知りだ。

中学も高校もひとっ飛びで大学生になれてたかもしれない。

…まあそれもお金持ちに生まれてば、だろうけどね。


ドーム都市には地球の都市の名前が付けられている。

ただし、まるっきり同じだと区別がつかなくなってしまうので、

頭にセカンド、サードなどと付けて呼ぶことにしている。


街にはさまざまな人種の子供達がチョコレートをおいしそうに頬張る広告。

見慣れない言語で書かれた文章は「せかいのひととおともだち」という意味だそうだ。

でもあたしたちは平穏無事にこの都市に到着したわけではないのだ。

このドリッテ・ゲルリッツ到着目前にして、あたしたちの仲間の一人・ジェーンが高速飛行船から振り落とされてしまったのだ。

「ジェーンはどうなったんだろう……?」

「さぁな」

アーウィンは気のない返事をした。

「でも…あんな所に落ちたらもう…」

「おい!なんてこと言うんだよ!きっと無事だって」

ドノヴァンが声を荒らげた。

「ご、ごめんなさい」

あたしは反射的に謝った。


高速飛行船がドリッテ・ゲルリッツに到着すると、あたし達は一目散に降りた。密航者であるあたし達を捕まえようとする人たちを振り切るために。そして、とにかく街の中心と思われる場所を目指した。まずは住める場所を探そう、と。これがフィフス・ロンドンだったら適当に転がり込めそうな空き家があちこちにあったものなんだけど。


あたしことミリータ、それにマリコ、ジェーン、アーウィン、ドノヴァンは、フィフス・ロンドンで身を寄せ合って暮らしていた。みんな貧困で両親を亡くしていて、盗みなどで生計を立てていた。そんな感じで、生きていくのも大変だったので、お腹いっぱい食べられる日なんか、ほとんど無かったという感じだった。

だから、ドリッテ・ゲルリッツの目の前に広がる光景を見て驚いたものだ。

辺り一面チョコレートの広告だらけじゃないか。こんな甘いお菓子を好きなだけ食べても構わないのか……。


とりあえず住居を探して街中を歩いているとアーウィンが突然、「あそこにしよう!」と言い出し、彼の指していた方向を見るとそこは公園だった。

「うんわかった。じゃあそっちに行こう」と言ってあたし達は歩き始めた。しばらく歩くとベンチが見えたのでそこに腰かけた。辺りを見回すと、街灯や建物の明かりなどで照らされた光の街という印象を受けた。まるで夜空に輝く星みたいに思えた。

「…ジェーンもここにいればなぁ…」マリコがぽつりと言った。

マリコのその寂しげな態度を見た途端、胸がきゅっと苦しくなった。

「おいマリコ!お前変なこと言うんじゃねぇよ。あいつは死んでねえっつーの」

ドノヴァンが強い口調で言った。

「でも…あんなところから落ちたら助かりっこないって!」

アーウィンが叫んだ。

高速飛行船がこのドリッテ・ゲルリッツに到着する直前、船体が大きく揺れて、密航していたあたし達は船外に放り出されそうになった。その時、ジェーンは堪えきれずに落ちていったのだった…

「なんと言われようと俺は信じてるからね。彼女はどこかで生き延びているはずだ」ドノヴァンは強情だ。

「そうだといいけどな」アーウィンはまだ納得していない様子。

「まあまあ2人とも落ち着いてよ」と、マリコが間に入る。彼女はいつも仲裁役を買って出るのだ。それが彼女の長所でもあるんだけれど。「もう夜も遅いんだし、寝ようよ。それからいろいろ考えよう」

と、あたし達はこの公園で野宿する事になった。


翌朝、あたし達は街を散策してみた。

全く違う言語の看板や標識が並んでいる。そこで目についた言葉は「ドルメッチェ・ドルメン」

それが広告のチョコレートの商品名だとわかったのは、しばらくたってからだった。

肌の色や髪の色、目の色の違う子供たちが、そのチョコレートを食べるとお互いの言葉を理解し、仲良くなる。そんなことを表現した広告だった。


「おいおい、チョコレート食ったくらいでここの言葉がわかるんだったら苦労はしねえよ!」

ドノヴァンが突っ込みを入れていた。

「確かにな。俺くらいは苦労しないとな」

「アーウィン、お前だって苦労なんかしてないだろ?」

「はぁ何を言ってるんだ?ありとあらゆるところに侵入して知識や情報を集めた俺の苦労を否定するのかお前は」

あー、なんか険悪になってきた。

「もう、やめてよ!」

マリコが割って入る。

「とにかく、このあたりの事を知るためにも情報を集めるわよ」

「そうだね。」

あたしたちは歩き出した。

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