1st SNOW 雪宮凍子と雪宮氷夏梨
予定より少し前倒しになりましたが、僕の処女作である「雪女JKと陰陽師の転校生」の続編を、この度連載することになりました!!
この作品で最後に氷華が産んだ「凍子」が主人公として、戦いに身を投じていき、躍動して「当主とはなにか」を肌で感じていく、そんなストーリーとなっています。
また、妹の氷夏梨を凍子と比べられる存在として描いていますので、そちらの対比もお楽しみいただければな、と思います。
最初は家族の紹介と、いきなり「雪女の集会」からスタートします。
雪宮凍子は現在、女子校に通う高校1年生だ。
快活な性格で、多数の友人にも恵まれている、所謂カリスマ性を有していた。
端麗な容姿に加え、極端に白い肌と髪、赤い目が神々しさを感じさせられる。
そんな彼女にはある秘密があった。
それは「雪女」であること、そして________『雪女一族次期当主候補』であることである。
凍子は現在、5人家族の長女として暮らしている。
家族構成はざっとこんな感じである。
まず、父・晴夜は銀行員で現在は大手銀行支店の部長にまで昇進している。
なので一家の稼ぎとしてはかなり良い方ではある。
退魔師の一族・陰陽師の跡取りであったが、現在本人はその家業を継がず、引退状態である。
母・氷華は、元ファッション誌モデルの経歴を持った、現在専業主婦だ。
雪女一族としては一流クラスの実力を持ち、凍子にとっては師匠のようなものだ。
44歳になった現在も、若い頃と容姿は大人びたくらいで殆ど変わっておらず、(というよりも雪女が老ける一族ではないのだが)端麗な容姿も凍子は受け継いでいる。
凍子にとっては厳しくも優しい母である。
一家の次女で妹の氷夏梨は中学2年生で、こちらは一般的にいるような雪女だ。
だがしかし、「史上最強の雪女」と評される凍子とは違い、雪女の術を一切使えない、対照的な性質を持っており、雪女の間では「落ちこぼれ」呼ばわりされているものの、氷華は気にするようなところはなく、「普通の子」として可愛がっている。
凍子も同様で、「大事な妹」として大切にしているのだが、氷夏梨本人は凍子とは若干距離を取り気味である。
また快活な凍子とは違い、引っ込み思案で内気な性格であり、友人も恵まれていないという「THE・インキャ」という典型例だった。
ただ容姿自体は氷華によく似ており、男子にはよくモテるようである。
そして弟の旭氷。
彼は現在小学5年生の、世にも珍しい「家族と同居している雪女の血を引く男子」である。
本人も雪女の血を引く者としての認知はしているが、口外はしていない。
何故なら旭氷の存在自体が「特例中の特例」なのだから。
実は氷華と晴夜の間に「男が生まれても別れることはない」という誓約が交わされている、とはいっても本人達の意思を他所に、(ただし2人は高校時代からの付き合いである)互いの家元で取り繕われた取り決めによるもので決められたことだ。
性格は、というと明るい性格で末っ子らしく甘えん坊でもある。
友人も多く、みんなの愛され枠が旭氷なのだ。
そんな仲のいい五人家族だったが、夏休みに凍子の運命を決めることが行われることになるのであった。
それはお盆の季節。
4年に一度の取り決め、「新世代10傑」の選考結果発表と、凍子にとってはそれよりも最も大事なことがあった。
当主の座を懸けた「鳳雪戦」。
現当主・霜之関雪子との一騎打ちを特設闘技場で行われるのだ。
そのために凍子は調整をしてきていたし、何より凍子は自信家な性格も相まって負ける気はしないとソワソワしたテンションになっていた。
ということで一家は、横浜にある雪子の屋敷へと向かっていった。
会場に着くと、もう既にのべ5万人にもなる雪女が集結していた。
旭氷は晴夜と別の場所で遊ぶのが恒例で、氷華、凍子、氷夏梨と入っていくのが雪宮家の決め事としてある。
ただ、社交的な凍子がぐいぐい行けるのはいいとして、人見知り且つ落ちこぼれ扱いを周囲からされている氷夏梨はなかなか輪に入っていけない。
「ほら氷夏梨、叔母さんに挨拶に行くよ?」
「………う、うん………」
「………っとにさー、氷夏梨は気にしなくてもいいのに。アタシがいるんだからさ?」
氷夏梨はオドオドしながらも凍子に頷き、叔母の霜乃と氷衣露の元に2人で訪れた。
「やほー、叔母さん久しぶりー!!」
「ご………ご無沙汰してます…………」
明るい声かけをした凍子に対し、氷夏梨は声が通るか通らないか、ギリギリのラインで挨拶をした。
「おっ、凍子じゃん!! 久しぶりだね。お正月以来かな?」
霜乃はまだ空気が尖っていた大学時代とは打って変わり、結婚、出産を経てだいぶ丸くなっていた。
凍子たちの従姉妹である雪宮雪果は霜乃の1人娘であり、凍子より二つ上の高校三年生で、彼女も10傑候補の1人だ。
「霜乃叔母さん、久しぶりだねー、ホントに。雪果ちゃんはどう?」
「お陰様でだよ。大学に行きたいー、っていうからさ、今そっちの方面で忙しいんだよ。」
「えー? マジ?? そりゃー、頑張ってもらわないとね!!」
凍子は氷衣露にも声を掛けられる。
氷衣露は相変わらずの明るさを見せ、雪宮家の集まりでは案外ムードメーカーにいつもなっていたりするものである。
彼女の娘である雪宮舞雪は氷夏梨と同い年で、氷夏梨とは違い天才肌なため、周囲からも愛されている。
そこは氷衣露とよく似ているものだ。
「ほんとさー………誰に似たんだろうね、その性格さ?」
「え? 誰にって、アタシが?」
「そそ、いっつも思うんだけどさ? 氷華ねーちゃんも大人しいし、晴夜くんもいい人だけど明るすぎるー、って感じでもないからさ? 誰に凍子は似たんだろう、って。舞雪は私に中身は似たから、そこは親子だなー、とは思うけども。」
「えー? ママが大人しいって意味? 氷衣露叔母さん。家じゃ明るいけど。」
「ホントに?? 全然だよね? 霜乃ねーちゃん?」
「そうそう、氷華さー、まだ若い時ホントに大人しい子だったのに。それこそ氷夏梨にそっくりだったよ、中身。」
「えー!? 信じられないよーー!!!」
「氷華ねーちゃんさ、実力はそりゃー、頭一つ抜けてたよ? 若い時から。でもどっか自信がなくて引っ込み思案だったしね?」
「ホントにー?? ママのそんな姿、見たことないよアタシ。ねえ、氷夏梨??」
と、凍子は後ろを振り向き、ジリジリと距離を置いていた氷夏梨に声を掛けた。
「ひゃっ!? え、う、うん………そう、だね………お姉ちゃん………」
突然声を掛けられたのか、氷夏梨はビックリしてコクコクと首を高速で縦に振った。
「………氷夏梨、もっと堂々としていなよ。みんなの前でもそれやるつもり? アタシの妹だからもっと威張っていいのに。」
「ご………ゴメン………」
頼りなく見える氷夏梨だが、その分人一倍優しい性格をしており、ただ一方でネガティブな性格がベースのため、その所為で雪宮家以外からは疎んじられているのも事実である。
凍子はそういった面を姉として心配しているだけなので、他意はなかった。
「まあ、しょうがないよ。結構珍しいもん、術が使えない雪女なんてそうそういないし。けどさー、私は………キッカケさえあれば氷夏梨は絶対大化けすると思うんだけどなー………だって誰よりも霊力が強いもん。」
「そー………だね。氷夏梨が自信になれるものがあればいいんだけどなあ………だって家にいても勉強して、絵を描いてってだけだもん、氷夏梨。買い物にも誘ってさ、行ったりもするんだけど………やっぱ人混みが怖いみたい。」
「まあでも、そのうちさ、なんかに自信持てると思うよ? 可愛いし。」
氷衣露にそう言われ、氷夏梨は顔が急に赤くなる。
見た目通りのピュアなのも、家族から愛される要因であり、同時に他から疎まれる原因でもある。
「そこはさ、当主になったら色々考えるつもりだよ、叔母さん。それじゃあね?」
凍子は2人の元を去り、食事を楽しんでいくのであった。
さて、凍子は闘技場で「鳳雪戦」の準備のため、氷華と氷夏梨と別れた。
アナウンスが入り、司会者が前に出てマイクを取る。
この後、会場のボルテージが更に上がることになるのである。
次回は「鳳雪戦」の開始直前まで書こうと思います。
いきなり雪子とのバトルで、戦い序盤でインフレを巻き起こしますが、僕もそこに負けないよう頑張っていきたいと思いますwww