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ノート:エーテル Side Persona  作者: 金欠のメセタン
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第六十六話「ゴミ掃除の為に」

 今回少し短めです。

「グガッ.....」


「ふむ。二流にしては存外、粘った方か」



 短い悲鳴を上げ、人気のない路地に倒れ伏した暗殺者を一瞥したヴォイドは、この後の始末をどうするか検討する。



(そのまま情報を抜き取って殺しても良かったんだが、まさか法王直轄の暗殺者の一人とは思わなかったんだよなあ。ふーむ、なら死霊魔術の実地試験も兼ねて見た目は生きた人間に見えるアンデッドにでもして、法王の所に報告に行かせるのも面白そうだな)



 今この国で、この首都で起きている混乱をより激化させる為、オレアム皇国の現国王である法王キャリオンを暗殺するのが殆ど確定しているヴォイドの思考。


 それもそうだろう。抜き取った情報の中に、法王がどういう人物なのかというのが明確なまでに分かってしまう光景があったのだから。それを見てしまっては、もはや法王を殺すのはヴォイドの中で確定事項になっていた。



(いやでもあのデブ、中々用心深そうな感じだったんだよな。ならコイツはあまり信用されない可能性があるか。じゃあやっぱり、コイツはここで操り人形(アンデッド)にしてどこぞのゾンビ映画みたく、噛まれたりしたら感染する様に歯や爪にでも、相手の肉体の主導権を強制的に奪う微生物なんかを仕込めば、それほど時間を掛けずにコイツの所属する諜報部隊の支配権を握れる、かな?)



 そこまで行けば、法王に対して聖女暗殺の結果を報告する者はほぼ全て、ヴォイドの手駒へと変わっている為、生かすも殺すもヴォイドの自由となる。それもこれも、これらの報告を法王キャリオンが自らの直轄である諜報部隊の者以外から聞くことはまずない、という機密情報ありきで取れる行動だ。


 これらの情報は今も地面で意識を失っている者の頭の中から抜き取った記憶の中に含まれていた為、このような大胆な行動をヴォイドは思い付いている。何よりも、法王キャリオンは表向きは善人として通っているが、その腐敗した裏の顔を知っている者はそれなりに多い。


 故に、今回の混乱に乗じて法王キャリオンが死んだとて、悲しむ者は存外少ないのだ。



「それに、思い立ったが吉日って言うしな」



 というセリフと共に、ヴォイドは外傷を与える事なく気絶していた暗殺者の男の命を奪うのだった。



...


....


.....



 ヴォイドが死霊魔術による実地試験を喜々として行ってからしばらく、法王キャリオンは最低限の安全が確保されている王城の、更に地下の隠し部屋で苛立ちを露わにしながら、報告を待っていた。



「ええい、一体いつまで待たせるつもりだ!混乱に乗じてあの忌々しい女を殺すはずであろう!報告はまだか!」



 無駄に付いたその贅肉を揺らしながら、最高品質の葡萄酒を一気に呷り、苛立ちを鎮めようとするキャリオン。しかしその行為で怒りが静まるはずもなく、再度注がれた葡萄酒を呷った。



「申し訳ございません、キャリオン陛下。あくまで私の推測ではありますが、未だ私の部下達が戻ってこない理由をお話してもよろしいでしょうか?」



 スラっとした細い身体に執事服を纏い、藍色の髪をオールバックで整えた初老の人物がキャリオンに対し、そう提案する。その提案をした人物をキャリオンは一瞬キッと睨みつけた後、自分を冷静にさせる為に「ふぅ」と息を吐いてその提案を肯定する。



「.....そうだな、貴様の言を聞かせよ。それでも多少の暇潰しにはなろう」


「ありがとうございます。では初めに、陛下は聖女暗殺の命令を我々へと下す際、同時に外の情報も集めてくる様に部下に命令したのは覚えていらっしゃいますか?」


「当然であろう。地下のこんな場所に篭っていては、分かるものも分からぬ。本来であればここまで長引かせるつもりもなかったのだしな」


「その通りで御座います。故に私が思うに、今回の混乱が長引いた為に情報収集があまり捗っていないのではないか、と」


「なるほどな、一理ある。だが、所詮は外の情報をある程度集めるだけであろう?であればここまで時間が掛かるとも思えないが」



 実際、キャリオンが言った様にその考えは正しい。


 本来であればこれだけ時間が経っているのなら、既に報告の一つでも上がってきていてもおかしくない。だが、未だ部下が戻ってくる気配がない事から、彼ら諜報部隊の長であるジンは恐らく何かトラブルが起きたのだろうと推測していた。



「もしかすれば、暗殺対象の聖女殿が存外しぶといのかもしれませんねぇ」


「フンッ、この期に及んであの女は.....まあ良い、どうせここで死ぬのだ。それに、次の聖女候補も数人は確保してある。今までの苦労のおかげであの神の力の片鱗を確保出来ると考えれば、多少釣り合いも取れよう」



 執事との会話で少し冷静さを取り戻し、ある程度状況を整理する事が出来たキャリオンは再度、葡萄酒を呷った。


 そして口の中に広がる芳醇な香りと重厚感のあるその味に満足気に目を瞑り、一度眠ろうか、と考えたその時。


 地下にあるこの隠し部屋の入口の扉が、小さく数回ノックされた音が聞こえた。その音はキャリオンにも捉えられたようで、執事をチラリと見やり、問う。



「ようやくか、ジン」


「えぇ、恐らくは。確認してきますので、陛下はこの部屋で少々お待ち下さい」



 そう言ってジンと呼ばれた初老の男が部屋を出て扉に近づき、合言葉による質問を口にすると、同じく合言葉による返答が知っている声で扉の向こうから聞こえてきた。その事に多少安堵しながら、ジンが扉を開ける為にドアノブへと手を掛けたその瞬間。


 ジンは勢いよく後方へと退避した。


 その退避した音を聞いたキャリオンは少し焦った様子で、扉の向こうからジンへと問いかける。



「どうした、何があったジン!?」


「敵ですッ!そのまま隠れていてください!!」



 短く、しかしはっきりとそう告げる彼の額には、小さく汗が滲んでいた。



(どうやってこの場所を知った?ここはかなり限られた者達しか知らぬはず。いや、恐らくは部下の誰かが情報を吐かされたと考えるべきか。だが私の部下が幾人か隠れてここを守っていたはず。考えたくありませんが、それらも全滅と考えた方がいいですかね。しかし分からない、敵は一体――――)



 そう。ジンには分からなかった。相手の規模、相手の強さ、相手の素性。それら全て、情報が欠落していて推測の余地すらない。しかし扉のその向こうに、確実に居るのだ。


 明らかに自分と同等か、もしくはそれ以上の実力者が。


 勝てないとは思わない。しかし、無傷でキャリオンを守りきれるかと問われれば、否と答えるしかないだろう。少なくとも相手は二人以上なのが確定しているのだから。


 故に即座に袖口から折りたたみ式のナイフを取り出し、正面からでは見えない位置に構えて待ち受けた。



 そして、「ギィ」という音と共に扉がゆっくりと開く。しかし、その先にあったのは一寸先も見えない深い暗闇だけ。音も、気配も、殺気も、何も感じられない。


 そんな闇の中から、ジンにとっては部下だった3人の男が突如として飛び出してきた。


 その手に得物はなく、ただ本能に従って動いている獣の様な挙動で迫った3人の男は攻撃に移るその瞬間に、ナイフによって流れるように首を切られ、その場に倒れ伏した。


 しかしジンは目線を倒れ伏した彼らから逸らす事はない。何故なら首を切り裂く時に感じたその手応えが、いつもと少し違った為だ。


 そしてその異常が事実だと示すように、3人の男の死体はゆっくりとした動きでその場から立ち上がった。その瞳に既に生気はなく、あるのは暗い死だけ。


 それらが示す答えは――――



死霊魔術(ネクロマンシー)というやつですか、厄介ですね」



 そう呟いたジンが再度短剣を構えようとした所で、扉の方向から突如場違いな拍手が聞こえてきた。その何者かの気配を察知出来なかったジンは焦ってそちらを向くが、そこに立っていたのは闇と同化するような漆黒のコートに身を包む銀髪の青年だった。


 そしてそれは言うまでもなく、ヴォイドである。



「いやぁ、流石は名高い【蛇影】のジン。見事な腕前という他ない」


「ッ!?貴方は確か、最近【漆黒】の二つ名を賜った冒険者のヴォイド殿とお見受けしますが、当たっていますかな?」



 驚愕は刹那にすら及ばぬ一瞬。それでも難なくそれを捉えてしまえるのが、ヴォイドの五感。故にヴォイドは対面の相手の評価を一段階引き上げる。



「あぁ、アンタの言った様に、俺は【漆黒】のヴォイドで相違ない。しかし、元暗殺者ギルドの精鋭の一人のアンタが、こんなとこで一体何してんだ?」


「一体何をしているのか、という事であれば、むしろ私ではなく貴方の様な冒険者の方が、こんな場所で何をしているのか聞きたいところなのですが。あぁ因みに、私はただの仕事(・・)です」



 隙があれば少しでもこちらの情報を得ようとするその姿勢に、ヴォイドは堪らず笑みを浮かべた。囲まれているにも関わらず、会話での時間稼ぎと同時に隙を探り、しかし殺気は一切漏らすことなく対面し続ける。


 その優秀さに、ヴォイドは堪らず嗤うのだ。



「仕事.....仕事ねぇ。暗殺者のお前らが仕事上の関係で、あんなクズ相手にあそこまで肩入れするか?」


「肩入れもなにも、護衛の仕事ですので。依頼主を死守するのは、当然でしょう?」


「ハッ、アホかお前。近衛騎士じゃあるまいし。てか、裏専門のお前らに護衛依頼する時点であのデブ“黒”で確定じゃねぇか」



 そう、ヴォイドの言った様に護衛の為に表の戦力を使っていない時点で、法王キャリオンは「黒」なのが確定している。故に、やはりここで殺しても問題ないとヴォイドは再度判断した。



「あぁそれと、さっきの質問の答えは簡単だ。俺はここに、ゴミ掃除(・・・・)する為に来ただけだ」



 そうヴォイドがジンへと告げた瞬間、ジンを囲んでいたアンデッド達が一斉に襲いかかった。

 しばらく更新が無くて申し訳ないです。改稿作業で筆が止まったり、ゲームにのめり込んだり、はたまたファンタジー小説を読んだりしてインスピレーションを溜め込んでいたら、一ヶ月以上経ってました。


 ほんとすんません。


 それと少し前に、遂にエルデンリング一週目を終えました。いやー、控え目に言って神ゲーでしたね、あのクオリティの高さには感動しました。ネタバレをしない為に詳細は語れませんが、特にラストシーンで褪せ人が親指を立てながら溶鉱炉に沈んでいくシーンは涙なしには見られませんでしたね(大嘘)。


 勿論攻略に使った武器は「名刀月隠」と“ちいかわ”こと「屍山血河」のニ振りです。「月隠」は読み方が「つきごもり」なのか「げついん」なのか派閥が別れる所ですね。



 とは言え長話も何なので、今回はこの辺で。ここまで読んで下さってありがとうございます。気が向きましたら評価の方、付けて頂ければ幸いです。

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