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ノート:エーテル Side Persona  作者: 金欠のメセタン
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第六十五話「何事も楽しむことが大切」

 自らの状況を無事確認し終えたヴォイドは、周囲で魔人とヴォイドの戦闘を見ていた者達の中に居た老騎士ニコラウス・ジークヴァルトへと歩み寄り、この場の状況を聞く。


 その場に居る全ての敵味方の視線を釘付けにしていることを知っていながら、しかし本人はそんなことを全く気に掛けずに。



「ニコラウス卿、制圧の状況は?」


「あ、あぁ。見ての通りだ。こちらはまだ少し、時間が掛かるであろう」



 その言葉を聞いて、ヴォイドは改めて周囲を見渡す。


 そんなヴォイドの視界に入るのは積み重なる死体と瓦礫、焼けた地面と半壊した血濡れの建物。無造作に転がる、破損した武器防具の残骸。


 無慈悲にも殺された者達と、「粛清」を盾に殺しを善として扱った者達の残留した思念とでも呼ぶべきモノを、二秒ほどでヴォイドは読み取る。


 こびりつく様な血の匂いと響く絶叫。蹂躙する者達とされる者達の情景。これぞまさに、人の業であろうという景色がフラッシュバックの様にして再生される。



「なるほど、大体の状況は把握しました。であれば、ここはニコラウス卿にお任せします。こちらは無事目標を達成しましたので、俺はこのまま暫しの間、目標の護衛をしておきます」


「相分かった。安心してこの場は我ら騎士団に預けられよ」



 短いやりとりで互いに情報を交換し合い、再度自分達のやるべき事へと行動を移す。


 ニコラウスは未だ健在の敵対派閥への「粛清」を。ヴォイドは拠点にて未だ目を覚まさぬ聖女のもとへ。


 背後より再び再開される蹂躙の音など半ば無視を決め込み、ヴォイドは静かに歩を進める。まだ計画は、終了していないのだから。



...


....


.....



 ニコラウス達と別れてからしばらく、ヴォイドは聖女派の拠点ではなく教会本部のとある部屋へと訪れていた。


 殆ど半壊してはいるが、その部屋は間違いなく聖女を救出する為に突入した部屋であり、部屋の床には魔人が召喚された召喚陣の痕が残っている。


 特にこれが発見されたところで不都合なことはないし、何よりもこの世界の召喚陣などとは全くの別物であるため、そもそもこの世界の人間では理解すら出来ないのだが、念の為にヴォイドはその召喚陣の痕を跡形もなく消し飛ばした。


 事情を知っている者から見れば、その行為は再度誰かに魔人などが召喚されないように召喚陣を破壊したと映るのだろうが、ヴォイド本人からすればただ都合が悪くなる可能性を尽く潰したに過ぎない。


 実際、この教会へと訪れた時点で誰かにずっと監視されている。故に振る舞いには気を付けねばならないのだ。



(まぁここで殺してしまうと、逆に色々怪しまれたりするしな。場合によってはより混乱が激化するかもしれない)



 内心でそう思いながら、召喚陣が使えなくなった事を確認し、ヴォイドはそのまま教会を後にする。教会から離れても付いてきている視線など、まったく気付いてないフリをしながら。



 結局、道の途中でいきなり後ろから襲われることもなく、無事ヴォイドは聖女派の拠点へと戻ってきたのだが、やはり背後からは視線が一つ。所属は恐らく敵対派閥である教会派だと思われるが、どうにも様子がおかしい。


 害意などは感じないし、殺気など以ての外。気配を消す技量も非常に高い上、追跡能力もそれなりに思える。暗殺を生業としているのは一目瞭然。だが、仕掛けてくる様子がない。


 とは言え仕掛けてこないのならまあいいかと判断し、ヴォイドは拠点内で軽く休憩でも取ろうかと与えられている拠点内の部屋へと向かう。 


 拠点内には殆ど最低限の戦力のみが残されており、ヴォイドと共に聖女の奪還へと向かった若い騎士達もこの場に待機している。


 何人かは廊下ですれ違った時に軽く挨拶をしてきた為、こちらも軽く対応し、読書でもするかと考えながら部屋の前まで到着し、ドアノブに手をかけてまさに今、扉を開けようとしたその時。


 先程すれ違い、挨拶を交わした騎士がこちらに対して少し急いだ様子で戻ってきた。



「ヴォイドさん!少しお時間よろしいでしょうか?」


「ん?何かあったのか?」


「つい先程、アグネス様が目を覚ましまして。ヴォイドさんが戻ったら是非会ってお礼をしたい、と」



 今はフードを被っていたからいいものの、その顔には間違いなく嫌悪感に近いモノが浮かんでいた。根拠は特にない。ないのだが、こういう展開はある意味で「お約束」なのだ。


 悲しいことに、この後の展開がある程度予想出来てしまう。



(どうせまた、新しい面倒事を押し付けられるか、その面倒事がその場で発生する。後、個人的にああ言う人種が苦手だからなあ.....)



 と若干遠い目をしながら思案に耽っていると、若い騎士が申し訳なさそうに「アグネス様はお優しい方なので、是非会ってみて下さい」と言った後、部屋の位置をヴォイドに教えて立ち去っていった。


 雰囲気で「えぇ、面倒くさっ」という様な空気が出ていたのかもしれない。実際、その通りではあったし、言い訳は出来ない。



(しかしまぁ、行くしかないよなぁ.....。視線の件もあるし)



 心底ダルそうな雰囲気を隠し、聖女が居る部屋へと移動を開始するヴォイド。『ストレージ』から取り出したミスリルソードをベルトで腰に携え、魔法剣士の様な格好で噂の聖女様のもとへと向かう。


 時間は然程掛からなかった。それなりに近い位置に教えて貰った部屋があったのが幸いした。部屋の中に気配が二つあるのを確認し、ドアをノックする。



「どうぞ」



 こちらを特に警戒している様子もなく、殆どノータイムで帰って来た反応に応え、ドアを開けて部屋の中へと入る。


 部屋の中にはメイドが一人とテーブルで優雅に紅茶を飲む件の聖女、アグネス・ナービー。促されるまま、ヴォイドはアグネスの対面へと着席する。


 待機していたメイドの女性が流れるように素早く出してくれた紅茶を一口飲み、一息つく。


 対面のアグネスはこちらが落ち着くのを待ってから、その口を開いた。



「お初にお目にかかります、冒険者ヴォイド様。既にご存知かもしれませんが、私はオレアム皇国所属、【四魂の聖女】の異名を賜りました、アグネス・ナービーと申します」



 今、己の目の前に座っているこの女性が【四魂の聖女】という異名を持ち、ここ数百年の間、代替わりすることなく【聖女】という役職を成している、この世界の英傑の一人。


 確かに圧はある、強さもそれなり。だがやはり、その程度。肉体に施されている数々の「加護」などによる純粋な能力による強さはあれど、技術的な強さは感じられない。



「ご丁寧にどうも、形式上は現在獣人国アレストに雇われてる身のしがない冒険者、ヴォイドです」


「その武勇については、かねがね伺っております」



 面倒な社交辞令に近い挨拶。こちらは礼儀もクソもない一般の冒険者なので、面倒な言葉遣いはなるべく使わない。現状、相手は俺に対して大きな借りがある。これぐらいは勘弁してもらわねば、こちらとしても話す価値はない。


 とヴォイドが考えていた手前、対面に座る聖女様が突如、こちらに対して頭を下げた。



「この度は、私共の派閥争いにあなた方を巻き込んでしまったこと、深くお詫び申し上げます。そして同時に、私の命を救って頂いたこと、誠に感謝致します」


「ああいや、別に感謝される事ではないですよ。そう言う依頼(・・)でしたので」



 まるでなんとも思っていないように、あっけらかんとそう語るヴォイド。この辺は事実なため、明かしたところで特にこれといった被害はない。しかし存外、聖女様は「依頼」と言う言葉が引っ掛かった様で、ヴォイドへと問う様に告げる。



「依頼、ですか」


「えぇ。何せこちとらしがない冒険者なので、依頼内容と釣り合う報酬が貰えるのなら、基本なんでもやりますよ」


「なるほど.....」



 ヴォイドの言葉を聞いて、対面に座るアグネスは何かを思案するような仕草を取る。考えているのは依頼者の顔か、それとも依頼の内容に関してか、それとも報酬か。  


 ヴォイドは敢えて、その思考を読むことはない。対面に座す相手は腐っても、この世界の神々の加護をその一身に受けている。ならば『読心』などに対して何かしらの対策を持っていても不思議ではない。


 何よりも、ヴォイドにとってはそんな些事など、今はどうでもよかったという事もある。何故ならまさに今、目の前の聖女に対して危機が迫っていると知っているから。


 故に――――



「聖女様はどうやら、よほど人気者らしい」


「?それはどういう――――」



 その言葉は、最後まで紡がれることはない。


 何故なら聖女は自身に迫る何かに気付き、言葉を止めたから。その直後、遅れて聴こえてくる部屋の窓が割れる小さな音と、耳元で聞こえる鋼が削れ合い、片方が軽く弾き飛ばされる気配。


 聖女が音の方へと顔を向ければ、そこには振り抜かれた銀の直剣と、その刃によって弾かれたであろう一つの短剣。短剣を振り払ったのは勿論、聖女の対面に座すヴォイド。しかしてその抜剣の瞬間は、短剣を放った暗殺者も含めて誰も見えなかった。


 そして弾かれた短剣の刃先には言うまでもなく、どこか見覚えのある毒が塗られている。



「これはッ!?」


「追います。すぐに騎士を呼んで防御を固めて下さい。クロ、守ってやれ」



 ヴォイドは一方的に聖女へと告げ、護衛として自らの影から影猫又のクロをその場に残して、割れた窓から身を乗り出し、近くの屋根へとそのまま跳躍する。


 視線の先には走り去ろうとする暗殺者が一人。


 スキルを起動させながら、同時に『疾風脚』も発動させる。これから始まろうとしているのは、逃げる側が命懸けの鬼ごっこ。


 ならば開始早々、すぐに追いついてしまうのは面白くない。ヴォイドは口元を歪めて嗤い、三秒数えた。


 そしてその後、ふわりとした動きで残像すら残さず、その場から走り去るのだった。


 ここしばらくは改稿作業に没頭しておりまして、ようやく現在30話辺りまでそれとなく見直しが出来ております。


 余談ではありますが、最近ブラボのDLCを買いました。そして買ったのはいいんですが、既に本編の方は一周してしまっていたので敵が強くて苦戦気味です。それと作者は葬送の刃が好きです。

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