第二十四話「竜帝との邂逅」
デイビットがパーティに入ってから、早くも約二週間ほどが過ぎた頃。
デイビットは徐々にではあるが、この世界に馴染み始めている。ヴォイドに対してはたまに謎の三下ムーブで接してくるが、周囲の者達から見たら“寡黙で強い男”という印象だそうだ。
そのよく分からない評価の答えは、単純にデイビットが元々人付き合いが苦手な為、所々でコミュニケーションエラーが起きているだけである。
とはいえ、俺自身も人との付き合いが苦手なので、デイビットの気持ちは痛いほど分かる。
そもそも、人間のコミュニケーションの何割かは表情や口元、目の動きで補っているらしいので、極論としては言語がなくても話せるという。とは言え今は、別にこんなことはどうでもいいのだ。
そしてデイビットの装備や戦闘方法なのだが、現在はルシアの護衛をしている使い魔の影猫又であるクロの影を操る能力というか機能を見て、「俺もアレ使いたいです」と言い出した為、同じ能力を譲渡したり、その他には頼まれていた浪漫装備も完成した為渡したのだが、模擬戦してみるとこれが中々に強い。
特に二人で考えた『魔力糸』という武器というか『能力』を使った時のポテンシャルが高い。
それ以外にも武器に関しては、某作品の○ラピカの鎖のような代物や、某“最後の物語”に出てくるスコー○の持つガンブレード、いわゆる銃剣などもあったりする。因みに『魔力糸』はヴォイドもかなり気に入っている為、現在は男二人でお揃いという状況になっている。
そしてなぜ、今こんな話をしているのかというと、俺達二人は今、絶賛戦闘中なのである。
現状をわかりやすく表現するならば、銀糸が揺らめく血潮と肉片が舞う薄暗い通路といったところか。
因みに現在地は「辺境都市ウロ」ではなく、「山脈都市モンテ」という場所に存在するとある迷宮の中だ。
山脈都市モンテは辺境都市ウロから南の方面に数日間下った場所にある、冒険者が集う都市である。
しかしなぜ、突然そんな場所に来ているのかという理由は、単純に暇になったので旅行感覚で来ただけである。
とは言っても、ルシアとデイビットの戦闘能力増加を促す為でもあるので、迷宮内での基本戦闘は二人が行う。
そして今潜っている迷宮の名前は「黄金の洞穴」と言う名前らしい。名前の由来は、数百年前に最初にこのダンジョンを踏破したグループが宝物庫から溢れるほどの財宝を手にしたからだとかなんとか。
階層は全50層で、十年に一度くらいの頻度で最下層の守護者と呼ばれる存在が居る階層まで魔物を一気に間引くらしい。
その守護者と呼ばれる存在だが、文字通りダンジョンのラスボスである。最下層の最奥に存在するボス部屋に居るとされる、迷宮の守護者。
今回潜っている「黄金の洞穴」には、既に何度か確認されている準S級の強さを誇る竜種が居ると報告がされている。
今回の目的はその守護者を倒し、このダンジョンを踏破する事だ。
ダンジョン攻略を行う理由としては、ヴォイドが未だに冒険者ランクがCだと、受けられる依頼が正直言ってつまらない物しかないからだ。
そう、言ってしまえば飽きてきたのだ。
だが、ランクを上げようと小さな依頼を受けていても時間がかかるのも事実。故に、直ぐにでも昇級出来そうな、昇格させざるを得ない様な実績を叩き出す必要がある。
その為に、「黄金の洞穴」を踏破するのだ。
しかしそれでも昇級出来ないようなら、それこそS級の強さを誇るドラゴンの一体や二体をパーティーではなく、ヴォイド単独で討伐するしかない。
「ヴォイドさん、どうしたんですか?考え事っすか?」
「あぁいや、これで冒険者ランクが上がらなかったらどうしようかと思ってな」
「それは確かにそうっすね。最悪Sランクの冒険者に喧嘩でも売りに行きます?」
「それもいいけど、とりあえずはこのダンジョンの踏破が先だな」
「そうっすね」
そう言って二人は会話を終了し、再び迷宮内を進み続ける。
既にヴォイド達のパーティーが「黄金の洞穴」の攻略を開始してから二日。ヴォイド達は二手に分かれて攻略を行っている。ヴォイドとデイビットのペアが先行組として先に進み、その後ろを1階層差でルシアとバー爺のグループが追いかけてくる形だ。
班を分ける理由は、ここ最近増えているというイレギュラーの排除を行うためだ。
このダンジョンは近年、深層の方で上位種や希少種が多数目撃されていたりする。しかも二年前には一度、スタンピードを起こしているのだ。幸いにも山脈都市に常駐している衛兵や冒険者の質が高かったのもあり、その時の被害は少なかった。
しかしそれ以来、ダンジョン内で魔物が強くなっているという報告が後を絶たないでいる。
そしてそれは今現在でも同様どころか、更に被害が増すばかり。挙句には本来は深層を徘徊している上位種や希少種が上層に上がって来ているとも噂されている。
そして今潜っているヴォイド達だが、そのイレギュラーとやらにそれなりに遭遇してはいる。だが、デイビットとルシアのポテンシャルが高すぎて、まるで意に介さずメキメキと実力を伸ばしながら最下層まで進んでいた。
とは言え、ヴォイドとデイビットの二人が最下層に辿り着いたのはいいのだが、予定ではこれからバートとルシアの二人と合流してからボスに挑戦するという流れだった。
予定が過去形なのは、守護者が気になり過ぎて、ルシア達が来る前にヴォイドがデイビットと二人でボス部屋に入ってしまったから。
ヴォイドとデイビットの二人が大きく分厚い扉をくぐると、大きな広間のような部屋が目の前に広がっている。二人が完全に部屋の中に入ると扉がひとりでに閉まり、完全に閉じ込められる。
しかし未だ、守護者の姿はない。
静寂が場を包む中、既に臨戦態勢のデイビットが自身の背中に流れる冷や汗を感じ取った。それと時を同じくして、ヴォイドも自分達に向けられている、およそ殺気と言うにはあまりに膨大な圧力を感じていた。
「なる程な、これは確かにレイド用だわ」
「それを俺達二人で殺ろうとしてるんすよね.....。たまんねぇっす」
デイビットの一言を聞いて、ヴォイドはやはり「デイビットとは気が合う」と改めて思う。本来は10人以上の人数で協力して戦うはずのレイドボス相手に、俺達はたった二人で挑戦する。こんなシチュエーションで燃えないやつなど居ないだろう。
そう考えているヴォイドの後ろで、デイビットが自分の影からとある剣を二つ取り出した。その剣の名前は「干将」と「莫耶」。某作品で“とある赤い弓兵”が使っていた二振りだ。
その夫婦剣をその作品の設定をそのままに造り上げてみた。それをここで使うか、同志よ。
デイビットがその二振りの剣を取り出すと同時に、二人のいる部屋の天井付近から部屋の中央へ、ゆっくりと何かが降りてきた。
ソレは鋼の様な色と光沢を放つ硬い鱗に身を包んだ、一匹の「竜種」。【竜帝】の異名で呼ばれ、恐れられる、小型の最強種。
彼の者の名は――――“竜帝バハムート”。
その身体は、竜種としては驚く程に小さい。バハムートの身長自体は4mあるかないかだろう。それでも尻尾は身長より長く、翼も体の一回り程大きく、なにより力強い。
頭には悪魔の様な捻れた二本の角を携え、たっぷりと予備動作を取った後、部屋が揺れる程の咆哮を放つ。
その姿はまさに【竜帝】と呼ばれるにふさわしく、デイビットがもう少し弱ければ間違いなく今の咆哮で動けなくなっていただろう。それ程の迫力と強さが、「竜」という器を象って目の前に存在している。
デイビットはバハムートの咆哮を聞いて、干将と莫耶をファラ○の不死隊の様に、片方を逆手に持って構える。ヴォイドはそんなデイビットを見て珍しく、デイビットの後ろに下がる。
それはヴォイドにしては非常に珍しい、後方支援の役割をこなすため。
これから行われるのは正真正銘、紛れもないレイドバトルである。であれば、火力役が戦いやすくサポートを行う支援の役職が居た方がいいのは、自明の理である。
とは言え、その仕事量は通常に比ではない。一人二役、いや三役、もしくはそれ以上。
故に、ヴォイドは思考を回しながら自らの周囲へ魔力を用いて詠唱を紡ぐ。それと同時に、ヴォイドは決してバハムートにバレぬよう、細心の注意を払って自身の周りに『魔力糸』を展開する。
そしてバハムートは二人が構えたのを確認した後、再度その咆哮を二人に向けて放った。まるで、それが戦闘開始の合図だとでも言うように。
内容を少し編集しました。 2022/05/20




