第二十三話「有意義な時間と僅かな焦り」
デイビットが自分の宿った身体に異常がないかをそれとなく確認している間、ヴォイドは隣で彼の装備について考える。
やはり彼もお年頃の男子なのだ。ならば、ロマン溢れる装備を使いたいと思うのは必然だと言えるだろう。
とは言え、こちらの考えを一方的に押し付けるのは違うだろう。なのでここは素直に本人に聞いてみることに。
「デイビット、ちょっといいか」
「はい、なんですか?」
「君は.....好きな武器種なんかはあるか?」
「あー、その話は割と長くなりますよ?」
「武器」と聞いた途端に急に目付きが鋭くなるデイビッド。これは恐らく、普通の人よりもこだわりが強いタイプだと見た。
「ふむ、続けたまえ」
「自分で言うのもなんですけど、自分は色んな武器が好きなんす。彼らはそれぞれが得手不得手の状況や環境があって、でもどんな武器も必ず、一度はどこかに必要な、欲しいと思う場面がある」
彼の言っている事は、ヴォイドも痛いというほどに分かる。特にゲームを触ったことがある者達は顕著に反応を示すだろう。
使いやすく、分かりやすい武器。癖が強く、使い方が分かりにくい武器。一般的に見てどちらが優れているのかは一目瞭然。
だが、世の中には居るのだ。誰も使わない物を極めようと、日々邁進する怪物どもが。
「だから出来れば、装備は一つに固定したくないんすよ。なるべくその時の状況や気分に合わせて、使う装備を変えたいというか何というか」
その言葉を静かに聞いていたヴォイドは、思わず感涙に咽び泣きそうになっていた。天を見上げ、涙を堪え、ぐしゃりと笑う。
そう、そうなのだ。戦う者達は誰であれ「“戦士”」なのだ。断じて役割が固定されているような「剣士」や「術士」などではない。
使えるものを全て使って「勝利」を噛み締める。それでこそ、戦いに身を置く者だ。
「嗚呼、やはり君を選んだ俺の目に狂いはなかった様だ。君とは、随分といい話が出来そうだよ。続きは俺の『体内世界』でやろうか。君に見せたい物が沢山ある」
「えっ、まさかヴォイドさんも俺と同じ?“浮気野郎”って言われて周りに中々理解されなかったので、自分マジで今泣きそうっす」
ヴォイドはゆっくりとデイビットに対して頷く。今の二人にとって、それだけの行為で言葉以上のモノが伝わってしまう。
そして二人はお互いに手を差し出し、硬い握手を交わす。
そのまま「言葉は不要」といった様子で言葉を発することなく、ヴォイドの展開した『狭間の回廊』を通って『体内世界』の武器庫へと消えてゆくのだった。
その後、ヴォイドの『体内世界』の武器庫にて色々な物品を弄り回したり、デイビットが堪えきれずヴォイドへと幾つかの武器の制作を依頼したりするのだが、それはまた別の話。
...
....
.....
※
俺の前世の名前は「姿見 裕司」。その辺に居るような、ごく普通の高校生だった。でも、今の俺の名前は「デイビット」。
この名前は、俺の唯一無二の師匠から貰った名前。
そして今の俺は前世の名前を捨てて、この世界の人間として生きる事を決めた、一匹の魔物でもある。
とある召喚の儀式に巻き込まれてこの世界に転生してしまったが、今は特にこれといって不満もない。
何故かって?
それは、この世界で心の底から尊敬出来る人物、即ち「心の師」と呼べる人物が出来たから。
そんな師匠の名前は、「ヴォイド」さんと言う。
そして多分だが、師匠も同じ転生者か転移者なのだと思う。理由はあの黒いコートに、見ただけで業物と分かる太刀、極めつけはヴォイドさんが使うその技や能力の数々。
そのどれもが、ゲームやアニメ等の二次創作から少なからず影響を受けたであろう痕跡のあるモノばかりだ。
しかもそのどれもが性能は一級品以上で、何より使う本人が滅茶苦茶に強い。ヴォイドさんから貰ったこの「身体」と「装備」を試す為に既に何度か戦ったけど、今の俺じゃ微塵も勝てる気がしなかった。
いやまぁ今の自分の強さ自体、ヴォイドさんに貰ったものだけども。それと結局武器に関しては「男心をくすぐる物」しか無かったので、結局最後まで決められなかった。
なので、師匠の武器庫?というか宝物庫に接続出来るスキルを貰って、状況によって使い分ける事にした。マジでヴォイドさんが某ドラ○もん以上に便利だったので、つい幾つか装備の製作も依頼してしまったのだが、ヴォイドさんは楽しそうに「いいね、創ってみようか」と快諾してくれた。
とまぁそんな感じで、今の俺の現状はこんな感じになっている。
今暫くは、師匠と一緒に行動しようと思う。ヴォイドさんが言うには、後二人パーティーメンバーが居るらしいので、合流する為に俺とヴォイドさんの出会った運命の場所から移動することに。
※
デイビットと共に暫しの間、非常に有意義な時間を過ごしてから、ふと依頼の途中なのを思い出し、ルシア達と合流する事にした。
現在居る地点は辺境都市ウロの近くに存在する境界山脈の中腹辺り。身も蓋もない言い方をすれば、いつもの依頼をこなす場所である。
デイビットと世間話をしながらルシア達との合流地点に行くと、既に二人とも受注していた討伐依頼を終えてヴォイドを待っていた。
「あ、マスターおかえり」
「終わってたか。悪い、遅くなった。それとお疲れさん」
と、軽くルシアの頭を撫でつつそう労い、早速二人にデイビットのことを軽く紹介する。
「これから新しくパーティーに入る事になったデイビッドだ。中々面白いやつだから、仲良くしてやってくれな」
「心得た」
「よろしく!」
「よろしく頼んます」
軽く自己紹介をしながら、街へと帰る為に山を降りていく。デイビットが美少女であるルシアを見て興奮しないか個人的に心配だったが、彼曰く「俺は“美少女”じゃなく“美女”がいいです」との事。
ぶっちゃけそんな事はどうでもいいのだが。
そんなデイビットが二人と何気なく話しているタイミングで、何故か急にデイビットから『念話』が飛んで来た。
『ヴォイドさん、ちょっといいですか』
『なんだ?コミュ障でも再発したか?』
『いや、それは否定はしませんけど、それよりこの人達何者ですか?強すぎません?それかもしかしてこのレベルがこの世界の標準なんすか?』
『バー爺とルシアの事か?安心しろ、そこのクソジジイはそんなのでも一応仲間だから。ルシアに関しては、俺とバー爺の弟子だな。形式上は今のところ俺の奴隷』
そんな風に答えるヴォイドだが、内心「二人と話しながら『念話』で俺とも話をするとは、器用なやつだな」と思っていたり。
しかしバー爺に対しては驚くなという方が無理だろう。あの見た目でぶっちゃけ何歳か分からないし、どう考えても老練さが滲み出るほどの年月が垣間見える技量の持ち主だし、でもなんか普通の人間だし。
『俺もこの二人くらいに強くならなきゃいけないんすね.....』
『少なくとも、ルシア以上には強くなって貰う。いずれはあの勇者連中を残らず狩るつもりなんだ。一応二人分の戦闘データはあれど、甘く見ればこっちが足元を掬われかねない』
『了解っす。明日から色々と訓練お願いします、兄貴』
『だからその三下ムーブは何なんだよ.....』
とは言ったものの、デイビットは言う事を言ってそのまま一方的に『念話』を切ってしまった。その後は改めて二人に、デイビットが新しくパーティーメンバーになるからと伝えると、二人とも快諾してくれた。
しかしそれを行った当人であるヴォイドの内心はというと――――
(おかしい、どんどんうちのパーティにむさ苦しい男が増えている。これはよろしくない、よろしくないぞ)
デイビットと出会い、パーティーを組んで割と本気で意識し始める、ヴォイドのパーティーの男女比率。流石に周りからそういう趣味だとは思われたくはない為、近い内に「女性をパーティーに入れよう」と、割と本気で決意するヴォイドであった。
内容を少し編集しました。 2022/05/20




