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ノート:エーテル Side Persona  作者: 金欠のメセタン
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第二十二話「新たな同行者」

 肉や骨を溶かす音と森の静寂に包まれながら、ヴォイドは目の前でホーンラビットの死体を貪る一匹のスライムのステータスを『鑑定』して考え込む。



(興味本位で鑑定したスライムのステータスの概要に、異世界からの漂流者(てんせいしゃ)って記述があるんだが.....。どこぞの某なろうのスライム主人公かよ)



 と内心でツッコミを入れつつ、より詳細な情報を得ようと『万物万象理解』を発動。


 その瞬間一気にあらゆる情報が流れ込む感覚と、自身の脳の情報処理速度が跳ね上がっていくのを感じる。その中で目の前のスライムに関する情報、つまりは前世から一体どういう経緯で惑星エーテル(ここ)に来たのかを調べた。


 しかし運がいいのか悪いのか、ヴォイドの『鑑定』のスキルや『直感』がなまじ優秀なため、目の前のスライムの中身が異世界人であることが分かってしまった訳だが、当のヴォイドは「結構この世界、異世界人多いな」と的外れな事を考えていた。



(ただなぁ.....話しかけるにしても狂人の類だったら嫌だしな。ああいや、その場合は傍から見たらスライムにいきなり話しかける俺の方が圧倒的に狂人か。けど考えてる間にこっちに気付いたっぽいし.....。どうしよ、取り敢えず話しかけてみるか?)



 お互いに視線(スライムに目があるのかは分からない)が交差し、両者共に内心少なからず焦っている最中。「どうせスライムだしな。襲ってきたら殺せばいいや」という考えにいち早く辿り着いたヴォイドが、スライムへと話しかけてみる。



「初めまして、俺はヴォイド。君は中身(・・)があるね?」


「!?」



 目の前に居るスライムが、まるでヴォイドの言葉を肯定するようにして、その身をビクリとさせる。そのまま怯えるように、絶望したように、フルフルと震えながら少しずつ後ずさる。



「ん?別に危害を加えようとしてる訳じゃない。単純に気になったから、声を掛けさせて貰った」


「.....」


「あー、会話出来ないとやっぱ面倒だな。『念話』渡すよ」


「......?」



 そう言ってヴォイドは目の前のスライムに『能力譲渡』で『念話』を一方的に渡す。相手のスライムはそれに驚愕しつつも、早速こちらに対して『念話』を使ってくる。


 さすが転生者、話が早い。



『えっと.....これでいい、のか?』


「あぁ、聞こえてる。それでだ、さっきも言った通り興味本位で君の事を色々と聞きたいんだが」


『.....分かりました。何となくですけど、あなたは信用出来そうな気がする』



 と、急に妙な所だけ勘が鋭い主人公みたいなこと言い出し、俺がスライム君を傷付けない事を保証する対価として、自分のことを喋ってくれた。



 彼はその日、昼休みに昼食を買いに最寄りのコンビニへと外出した筈が、いきなり視界が暗転して、気付いたら惑星エーテル(ここ)で最下級の魔物であるスライムの一匹になっていたとか。


 それだけを聞けば、もはやその辺のなろう系主人公そのものである。


 彼が何故この世界に転生、というか流れ着いてしまったのかをヴォイドは一応知っている。知っているのだが、その理由があまりに不憫なので話を聞き終わった後にヴォイドは一つの選択肢を提示する。



「あー.....あのさ、君がその身体、つまり魔物(スライム)に転生した原因を一応俺は説明は出来るんだけどさ。割と荒唐無稽な内容だし、何なら個人的に聞くのはあんまりおすすめ出来ないんだけど、それでも知りたい?」


『マジですか。めっちゃ迷いますけど、一応自分のことなんで、聞いておきたいっす』


「聞いちゃう?じゃあ話すけど、あくまで話半分で聞いてな」



 という事で、さっき調べて分かった彼が「勇者召喚に巻き込まれて」この世界に来てしまった事を包み隠さず教えた。


 魔物に転生してしまったのは恐らく、時空や次元のズレが起こした偶然の産物だろうという事も(彼は運悪く魂だけが巻き込まれてしまったので、スライムに擬似転生しなかったらこの世界に来た瞬間に死んでいた)。


 そして問題の召喚された勇者達の現状を幻術(えいぞう)付きで伝えると、彼は突如として“豹変した”。



『Oh Fu■kin′Shit!!あんのクソ野郎共が、人の事巻き込んどいて許せねぇよなぁ!?』


「え、何いきなり。怖っ。......じゃなくて、俺はあいつらいずれ殺すつもりなんだけどさ、行く宛がないなら君も一緒に来るかい?」


『そいつはイイ!けどいいんですかい兄貴、自慢じゃないですけど俺ァ弱いですぜ?』


「いや、何その三下ムーブ。別にいいけど。強さに関しては俺に任せろ、教官もびっくりの速度で強くしてやるから」



 そういう訳で、同じ目的を持つ新たな相棒(バディ)が一人増えた。


 ここに来て異世界っぽい魔物の仲間。しかも最弱種のスライムである。とは言え一応中身が元は人間なので、怪しい契約などはせず、本人の意思で居たいだけ居てもらうことに(とは言えこの時点でルシアやバー爺への相談は一切せず)。


 しかし、パーティーメンバーになったからにはそれなりに強くなって貰らう必要がある。


 そんな訳で、既に『演算思考』の末に導き出されていた彼に必要であろう能力(スキル)をピックアップし、ヴォイドは指先から一滴の血液と共にそのスライムボディへと抽出した能力を与えた。


 そんな一滴の血液を浴びたスライムの体は、血液が触れた上の方からどんどんと赤黒く濁っていく。元々の透き通る様な透明感が見事に消え去り、禍々しい赤黒さへと変貌を遂げる。


 その様子を見ながら同時に、ヴォイドは自身の隣に人工生命体(ホムンクルス)と呼ばれる存在の肉体だけを『体内世界』から取り出す。これは近々行おうとしていた実験用の素体な為、この場でスキルを用いて強引にカスタマイズして仕上げることが出来る。


 彼に与えた血液には必要そうなスキルだけではなく、同時に彼に必要であろうこの世界の知識や記録も含まれている。


 そしてヴォイドが創り出した人工の空の器。その器に彼の本体の意識のみ(・・・・)を与えられたスキルによって移動させることで、本体のスライムをヴォイドの『体内世界』内で厳重に保護する。


 こうする事で彼自身、つまりは本体(スライム)への影響を考えずに、彼はほぼ自由に人型の肉体を使って過ごす事が出来る環境を手に入れた。


 とは言え、こちらも彼との相談の末に彼から提案されたことだ。



 そして宿った人型の器は、見た目は金色の様な、茶色の様な髪をした普通の好青年。身長は約180cmで体重は約70kg。ヴォイドが即座に黒龍の素材で作り上げた漆黒のレザーコートを身に纏い、その紫色の瞳を閉ざしていた瞼をゆっくりと開く。


 彼の新たな名前は「デイビット」。個人的な復讐に燃える人物がまた一人、ここに覚醒を果たす。がまた一人、ここに覚醒する。

 内容を少し編集しました。 2022/05/17


※おまけ

━━━━━━━━━━━━━━━━

名前:デイビット (David)


種族:スライム(ホムンクルス)


職業:全権代理者/深淵種/最弱種


固有:固有殺しの魔眼/暴食/憑依


装備:ブラックレザーコート



「スキル一覧」


・演算思考

・成長限界突破

・禁忌に触れし者

・異端の存在

・肉体変異

・記憶継承

・擬似憑依

・全権代理

・吸収還元

・万物融解

etc...


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