第二十一話「後日談と不思議な出会い」
勇者一行が視察を終えて辺境都市ウロから去ってはや四日後。
ヴォイド達は辺境伯から「先日の件の謝罪の意を込めて宴を催す、是非参加しに来て欲しい」という折の手紙がそれぞれ届き、多少面倒に思いながらも領主の屋敷へ訪ねてみたところ、辺境伯主催の小さな宴が用意されていた。
今回はコワーナ、ナパリ、ルシア、バー爺、オスド、そしてヴォイドの何故か六人全員が招待されていた。あの場に居なかったはずのバー爺とオスドまでもが誘われたのは、バー爺は俺達のパーティーメンバーであるという事と、オスドも実は昇格試験の後にコワーナ達とパーティーを組んでいた為だ。
辺境伯のこの辺の気遣いには、こちらも感謝する他ない。
そして主催である辺境伯には面と向かって「今日この場は先日の件の謝罪ゆえ、どうか気を抜いて楽しんでほしい」と言われたので、俺達は言われるがまま出されている数々の料理に舌鼓を打ちつつ、楽師や吟遊詩人の奏でる音楽を楽しんだ。
とは言っても他の貴族はこの場には居ないし、宴も屋敷の庭での立食形式のものだったので、参加していた面々は屋敷に使えている人達なんかと軽く雑談したりしていたが。
その様子を目の端で捉えながら、ヴォイドはこの世界の上流階級が食べている料理を感心しながら黙々と食べていた。
その際に、隣に居た辺境伯からやんわりと俺がどこの出身か、どこに所属しているのかを聞かれたのだが、「ここではないどこかの遠い異国出身で、今はご存知の通り冒険者をやっています」と、かなり濁して答えた。
そしたら次は「勇者二人を相手に出来るだけの強さは一体どこで?」という辺境伯の一言から、話が膨らみあれよあれよと辺境伯の護衛っぽい人物と模擬戦させてみようという雰囲気が漂い始めたので、先程コワーナ達と話していた時に聞いた、辺境伯は数年前まで現役の王国騎士だったという情報を元に、「辺境伯ご自身で確かめてみては?」と少しだけ煽ってみた。
その結果、苦笑を零した後に「確かにその通りだ」と辺境伯が使用人に剣を持ってこさせようとした為、ヴォイドは慌てて「これは失礼、ただの冗談ですよ」と伝えて何とかその場を乗り切った。
個人的に辺境伯やその護衛の人物と戦う事自体はいい。いいのだが、戦って相手を負かしてしまった時が何となく怖い。
一瞬だけだったが、辺境伯がこちらを見つめる眼が猛禽類のソレになっていた瞬間が確かにあったから。
それにこの間もそうだったが、護衛の一人の魔術師がやたらとこちらをガン見してくるのだ。それに、今の段階ではなるべく情報や手札は外に出したくない。
その後は多少酒の入った辺境伯との会話もそれなりに弾んで、最後の方は「宛がなくなったら私を尋ねるといい」と上機嫌そうに言っていたので、見た通り単純にいい人なのだろう。
少なくとも、貴族にしては悪い人ではなさそうだった。
それと辺境伯の名前に関してだが、ぶっちゃけ面倒だったので覚えてない。しかし極論、名前を覚えなくても大体のコミュニケーションは取れるので問題はないだろう、知らんけど。
情報が色々と曖昧なのは許せサ○ケ、また今度だ。
並べられていた料理の数々が想像以上に美味しかったので、個人的にはそれどころじゃなかったのだ(主に研究目的で)。
それとあのクソ野郎(勇者)達の起こした今回の騒動はしっかりと国の上層部に報告されるそうです。
独断専行どころか越権行為もいいところなので、個人的には是非戦争の一つでも吹っかけてぶち殺しておいて欲しい。それか、暫くは謹慎処分にでもして死ぬまで閉じ込めておいて欲しいところ。
(今後、ああ言う輩とはなるべく関わりたくないねぇ。今みたいに色々後が面倒だしな。今度そういう輩に絡まれたら一回、正当防衛を盾にして相手ボコしてみるか)
と少々物騒な事を考えつつ、辺境伯主催の宴があった次の日に今後ああ言う事がなるべくないようにと、ルシアの護衛用にこの世界で「使い魔」と呼ばれる存在を自分のスキルとか諸々を使って創ってみた。
黒猫の猫又みたいな見た目をした「影猫」という、この世界では完全に新種の、どちらかといえば精霊に近い種族。
因みに名前は「クロ」。決して名前を考えるのが面倒だったわけではない。
実験として意思と、ある程度の思考能力がある生命を創れるのかを試したが、今現在はどうやらちゃんと機能しているようなので、今後はなるべくルシアに引っ付いてもらうことに。とは言えクロは言葉を喋ることは出来ない為、殆どこちらの一方的なコミュニケーションとなる。
そしてクロの戦闘力は理論上、この世界の「神獣」や「幻獣」と呼ばれる存在を複数相手にしてもある程度なら問題ないレベルに設定してある。
少々過保護だと思うかもしれないが、思った以上にこの世界には地球からの転生/転移者が多い為、これ位のレベルで丁度いいのかもしれない。
何なら、ヴォイドの個人的な意見としては某作品の“英○召喚”でもして、英霊を護衛に付けさせたいところなのだ。
まあしかしそれらはともかくとして、多少のトラブルはあったがいつもの日常が取り敢えずは戻った。ルシアは【勇者】という存在に対して負けたことで、以前より鍛錬に励んでいるし、徐々に自分の『仙術』を創り始めている。
しかし属性の適性は水属性しかなかった為、開発出来る技にはそれほど幅がないかもしれないが。
だが、俺が特に何かを教えた訳ではない。元々前世で誰かに何かを教える事をしていた訳でもないし、何よりあの子、いわゆる“天才”ってやつだから。
そして単純に今現在、俺自身にそこまでの余裕がない。
と言うのも、ステータスに結構な変化があった。恐らくバー爺との死合の際に大きく変化したのだろうが、なんというか特にスキル欄がヤバイ。
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名前:ヴォイド・トゥルース(Void Truth)
種族:虚人
職業:虚空夜叉/孤王羅刹/魔を導く者/闇の支配者/闇の探求者/虚の住人
固有:能力創造/根源接続
装備:魔術王の指輪/闇を纏う法衣/斬魔刀・閻魔/
魂装:怨獄刀・叫嗟
「特殊変異/統合系スキル」
・能力譲渡
・万物万象理解
・万物創造
・創造者(偽)
・魔導技師
・君臨者
・手加減
・武神建御雷神
・超演算思考
・神眼保有
・スキルマスター
・アイテムマスター
・想像召喚/喚起
・狂武蔵
・空巌流
・王たる器
etc
「継承スキル」
・創刀幻技
・存在変質
・絶対不可視
・最果ての煉獄
・三仙世界
・六道仙人
・外道法師
「顕現スキル」
・阿頼耶識(偽)
・クリフォトを宿す者
・災禍の種
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恐らくは平行世界の自分と接触したり、違う世界の自分の人生を追体験するタイミングでその人物の『技能』を習得、それと同時にスキルが増加という感じだと思われるが、不穏な空気しか感じないスキルが幾つかあったりする。
『災禍の種』など、嫌な予感しかしない。
それに『クリフォトを宿す者』が『クリフォトの樹』の事だとしたら、これもかなりヤバイ。クリフォトの樹とは確か、俺の記憶違いでなければ“邪悪の象徴”のようなモノだった気がしなくもない。
だが本音を言えば怖さ半分、嬉しさ半分と言ったところなのが少し悔しい。
少しでも自分が特別なのではないかと思えるような力を獲得したのだ、多少浮かれても文句は言われまい。しかし、新たに獲得したスキルの解析&調査をしなければいけないのもまた事実。
「面倒事がまた増えたかもしれない」と、現実逃避気味に一人空を見上げるヴォイド。
しかし、現実はそんなヴォイドを逃がしてくれるほど生易しくはない。
そう、今までの話はすべて、先日の件の後日談に過ぎない。今は辺境伯の謝罪の宴も、その後のルシアの鍛錬や俺自身のスキルの話も、昨日、一昨日の話だ。
今はいつものように冒険者ギルドで魔物討伐の依頼を二つと薬草採取の依頼を受けて、辺境都市ウロに隣接するように存在する「境界山脈」と呼ばれる場所の中腹辺りで、ルシアとバー爺が休憩している間に薬草を採取しに来たのだが。
ヴォイドの視界の先では現在、一匹のスライムがホーンラビットの死体を貪っていた。
内容を少し編集しました。 2022/05/17




