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ノート:エーテル Side Persona  作者: 金欠のメセタン
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第十九話「誇り高き勇者と試し斬り」

 つい先程までスミス工房に居たはずのヴォイドは現在、とある建物の上から例の現場を見下ろしながら観察している。現場になっている広場の中心では、現在進行形でルシア、ナパリ、コワーナの三人が二人の見知らぬ男達と戦っている。


 ルシアは『創刀』や『縮地』などの自分にとって使えばそれだけで圧倒的有利を取られるであろう技能は使うことなく、純粋な『剣術』のみで対応している。


 だが、それでもやはり未だ未熟と言わざるを得ない。目がいい相手や力が強い相手に対しては相性が悪い。


 実際、今も少々押され気味だ。コワーナとナパリに関しては、完全に相手の男にいいように遊ばれている。



 そんな状況を冷静に観察しながら、バー爺に『念話』で連絡する。状況を聞いたバー爺は静かに怒り狂いそうになっていたが、こちらもなんとか落ち着かせることに成功。


 バー爺の近くと自分の隣に『狭間の回廊』を繋ぎ、バー爺を即座にこちらへと帰還させる。そのままバー爺には俺の居る場所で周りを観察してもらい、ルシアの救援には俺が行く事になった。


 その理由は簡単。今のバー爺だと、謝って手を滑らせて(・・・・・・)あいつらを殺しかねないからだ。



 そしてバー爺がこちらに到着してから数分、見事に凌いでいたルシアの刀が遂に弾き飛ばされる。その致命的な隙へ、男の必殺の一撃が打ち込まれようとしていた。


 相手は完全に頭に血が上っていて、とても手加減できるようには思えない。


 という訳で――――



(救援に行くなら、このタイミングだな)



 そう判断し、屋根から飛び上がって二人の真上から猛スピードで落下する。


 上からの不自然な風切り音に気付いたコウイチは上を見上げてヴォイドの姿を確認後、即座にバックステップで後ろに下がった。


 やはりそれなりには戦闘慣れしている。が、ヴォイドからすればこの程度の相手であればスキルを使う必要すらなく殺せる。


 故にヴォイドは余裕を持って、そのまま重さを感じさせないふわりとした着地でルシアとコウイチの間に降り立った。



「チッ、何者だよ?お前」


「......ルシア、大体分かるがこれはどういう状況だ?」


「えぇっと、ナンパ?を断ったら逆ギレされて、そのまま。ごめんなさい」



 目の前の男を尻目に、ルシアを魔法で軽く回復させながら話を聞く。ルシアは苦笑しながら謝ってきたが、どう見ても悪いのはあちらな為、「気にするな」と告げておく。


 それでも申し訳なさそうにしていた為、へにゃっと垂れ下がった狐耳を生やした頭を無造作にわしゃわしゃと撫でてやる。


 しかし、その状況をよしとしない者が一人。



「おい、無視してんじゃねぇ!」



 自分が無視された事にその無駄に高いプライドが傷ついたのか、男はヴォイドに斬りかかった。それをヴォイドは背後で感じ取りながら、フードの中で口を三日月のように歪めて嗤う。



(頭を冷やすだけの時間は与えてやったつもりだったが、これじゃまるで話にならんな。こいつらがどこぞの貴族の坊ちゃんかは知らんが、先に手を出したのはあっちだしな。俺がこれから行うのはただの正当防衛だ。誰がなんと言おうが、な)



 ヴォイドは左手に持つ真新しい太刀(・・・・・・)の柄を右手で握り締め、その刃を振り向きざまに抜き放つ。一瞬の閃光、金属同士がぶつかり合う擦過音(さっかおん)と共に、コウイチが遥か後方へと弾かれる。


 そんなコウイチを軽く吹き飛ばしたヴォイドのその手に握られているのは、先程までヴォイドがスミス工房で造っていた新たな武器。


 その名は―――



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


名前:斬魔刀・閻魔


種類:太刀型御霊刀


固有:斬魔/使用者選別/(次元斬)/(神話の剣)


付与:不変/重量超軽減



「概要」


 ヴォイド自らが一から想刀し、鍛造した一刀。込められた思いはただ「斬る」という一点のみ。


 故にその太刀は使用者次第で、文字通り「万物」を斬り裂く刃となる。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 白の柄巻(つかまき)と青の鮫皮(さめがわ)、刃を収める鞘は吸い込まれそうな黒塗りの中に天へと登る金の龍の装飾が施されており、木瓜形(もっこうがた)の鍔にはこれまた見事な龍が象られており、日の光を浴びて金色に輝く。


 そして抜き放たれたその刀身は美しさの中に(おぞ)ましさを孕む魅惑の白銀であり、波打つ刃文が更にその神秘性を引き上げている。


 更にヴォイドが創りだしたのは普通の太刀ではなく霊刀。故にその太刀自体に神聖な力が宿っており、対悪性特攻とでも呼ぶべき力が常に微量な剣圧と共に漏れ出ている。



 たった一撃、されど一撃。


 ヴォイドが振り向きざまに放ったその一太刀は、あまりに鋭かった。攻撃を受け流したはずのコウイチの直剣のその刃には、折れる寸前まで深く刃が食い込んだ跡があった。にも関わらず、その剣は未だ折れる事なくコウイチの手に収められている。


 その様子を見たルシアは知らず知らずの内に、ヴォイドが持つ斬魔刀の刃に気圧されていた。


 対してコウイチは自らの剣が使えなくなった事に気付くと舌打ちと共に剣を投げ捨て、手のひらを前へと突き出す。


 そしてそのままあろう事か、コウイチはヴォイドを相手に目を瞑って無防備に何かの『詠唱』を始めた。



(これは.....攻撃していいやつだろうか?いいやつだよな。まあけど、なんか面白いから終わるまで待っとこ 笑)



 ヴォイドは少しの間悩んでから、そのまま詠唱が終わるのを待ってみることにした。


 理由は斬魔刀の性能をもう少し確かめてみたいのと、目の前の男の間抜けっぷりをもう少し見たかったから。


 そして数秒後、無事詠唱は終わったようでコウイチは笑みと共に『召喚武装』と呼ばれる固有能力(ユニークスキル)を解き放つ。



「この俺に歯向かった事を後悔しな!『ガーンディーヴァ 』起動、『アストラ』!」



 コウイチは自らが召喚したとある英雄が持っていたとされる弓を使い、スキルで生成したであろう矢を放つ。放たれた矢には斬魔刀と同じく聖なる力を感じさせる青い炎が宿っており、ヴォイドが目の前の男が自分と同じく異世界人だと気付くのは容易かった。


 それに何より、攻撃する直前にあの男が言った言葉。


 「ガーンディーヴァ」はインド神話に登場する、アルジュナという英雄が持つ弓の名前。それに続けて飛び出してきた「アストラ」。これもまたインドの英雄達が使用したとされる、神の力を具現化した投擲武器の名称。


 何より決定打はその見た目。それはどう見ても、日本人特有の黒髪であった(片方金髪だが)。


 何故それに今まで気付かなかったのか自分でも分からなかったが、それを起点にヴォイドの思考は回りだす。



(こいつらが【勇者】か。恐らく『ガーンディーヴァ』は奴の固有能力(ユニークスキル)の『召喚武装』によって出現したもの。なら『アストラ』はガーンディーヴァの副次効果か、もしくは別枠のスキルと考えるのが妥当か。なら、ワンチャンあの矢は斬れる(・・・)な)



 斬魔刀を用いてのガーンディーヴァ本体の破壊は無理でも、魔力を宿した状態である『アストラ』は恐らく破壊可能。そう簡単に思考をまとめ、即座に斬魔刀を納刀。


 そのまま向かい来る『アストラ』を迎撃するため、斬魔の刃を解き放つ――――



『能力限定解除 試刀 “斬魔”』



 斬魔刀の刀身に魔力を流し、斬魔刀の持つ一つの能力を発動させる。


 放たれるは居合による何の変哲もないただの斬り上げ。しかしその刀身に触れた矢は、火属性の魔力諸共、その在り方を一刀の下に両断された。


 それは文字通り、「魔を斬る一太刀」。


 斬魔刀はその刀身に少しの魔力を流すだけで、その効果を発揮する。


 そして切断した後にヴォイドは理解した。あの弓を通して『アストラ』を射出する事で、スキルで生成されたであろう聖なる矢に『火属性』が付与されていた事に。


 威力はどれだけ上がるのか、威力を上げる場合は魔力を消費するだけでいいのか、矢は予めスキルで生成しておいて個数を用意してあるのか、それともその場で即座に生成出来るのかなど、湧き上がる疑問が止まらない。


 だが、目の前の男はそんな事はお構いなしに第二射を射ってくる。


 今度は三発に見せかけての四発。全てほぼ同時で撃たれているが、最後の一矢を前方の矢で上手く隠している。



(小細工だけは達者のようで。単純な技量が足りないから、小手先の技術に頼らざるを得ないってのは哀れだな。お互い能力不足な人種のはずだが、立場が違うだけでこれか)



 ヴォイドは無駄なことを考えながら、しかしその全てを流れるように斬り上げの後に十文字斬りで打ち落とす。


 そして最後の一矢は自らの左手で強引に掴み取った。


 その様子を見てとったコウイチが「馬鹿め」と笑っていたが、特に問題はない。本来は当たれば爆発する効果を持つこの矢だが、掴んだ瞬間に『鑑定』のスキルで解析は殆ど終わっているし、何より爆発するのは火属性の魔力の為、その魔力の支配権をこちらが得てしまえば問題はない。


 そのままヴォイドが左手に掴んだ『アストラ』を握り潰した。すると直後、まるでガラスが砕けたような音が響くと同時に、『アストラ』は光の粒子となって消滅した。


 コウイチはその様子を見て「はぁ!?」と素頓狂な声を上げて、その顔を歪めている。



「そこまでにしとけ、これ以上は流石に俺でも手加減が出来るか分からんからな」


「ハッ、強がんなよ。お前がどんなスキルを持ってるのか知らねぇが、俺ら二人を同時に相手してその余裕を保てるかな?」


「女の子の前だから格好付けたいのは分かるんだけどさ、俺ら【勇者】に対してその上から目線の態度なに?死にてぇの?」



 いつの間にか二人目の勇者がこっちに来ているが、ヴォイドは特に問題ないため、気にしないことにした。


 そしてどうやらこの二人は、人の忠告を素直に効かないタイプの人間らしい。



(使い潰される予定の捨て駒の勇者如きが偉い訳ねぇだろ、馬鹿かこいつら。あぁいや、馬鹿だったわ。.....でも丁度いいかもな、少し煽って俺の知らない情報喋って貰うか)



 と、フードの中で「いい事思いついた」とばかりにニヤリと顔を歪めるヴォイドは、再度その手の斬魔刀を握り直した。

 斬魔刀のステータス表記を加筆修正しました。


 内容を少し編集しました。 2022/05/17

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